第19話 洗浄、そして新たな夜明け
登別温泉の地下で発見された最後の「金塊」――それは、物理的な金塊だけでなく、不正の証拠が詰まったデータサーバーだった。金賀一が鮫島に連絡を入れた直後、警察の精鋭部隊が旅館に突入し、潜伏していた裏社会の残党と政治家は次々と逮捕された。金賀一は、警察の捜査に協力し、回収されたサーバーのデータをハッカーに解析させた。
「金賀一さん、このデータはすごい。署長たちがこれまで行ってきた全ての資金洗浄の手口が、詳細に記録されています。まさか、こんな場所で最後の拠点を構えていたとは…」
ハッカーの言葉に、金賀一は静かに頷いた。金への執着から始まった彼の行動は、最終的にこの街に蔓延る巨悪の根源を暴くまでに至った。署長の不正、蒲郡との共謀、そして師である橘慎一郎の死の真相。全ての点が線となり、金賀一の目の前で、この街の闇の全貌が明らかになったのだ。
金賀一の「投資」
数週間後、街は大きく変わっていた。不正に関わった者たちは逮捕され、警察組織は浄化されつつあった。金賀一が手に入れたスイス銀行の資金は、彼の新たな「投資」の原資となった。彼は、その資金の一部を使い、師・橘慎一郎が目指したような、真に正義を追求する探偵事務所を設立した。そこでは、彼がリクルートしたハッカーや元刑事たちが、それぞれの専門知識を活かし、市民の困り事を解決するために活動していた。
事務所の壁には、かつて金賀一が手に入れた「金塊」が飾られていた。それは、もはや単なる財産ではなく、彼の人生を変え、彼を「守銭奴探偵」から「街の守護者」へと成長させた証だった。そして、その金塊の隣には、黒岩竜二と橘慎一郎の写真が飾られていた。彼らの遺志が、今、金賀一の中で確かに生きていることを示していた。
金賀一は、今日も依頼人の話に耳を傾けていた。彼の表情は、以前のような金への欲望だけではなく、依頼人の抱える問題に対する真摯な眼差しを宿していた。
「報酬はきっちり頂きますよ。ですが、俺の仕事は、金を稼ぐだけじゃありませんから」
街の再生、そして金賀一の未来
金賀一の活動は、この街に新たな希望をもたらした。不正に染まっていた政治家や企業が排除され、市民の信頼が少しずつ回復していった。金賀一の探偵事務所は、単なる事件解決の場ではなく、街の不正を監視し、市民を守るための最後の砦となっていた。
金賀一は、確かに「守銭奴」としての本質を完全に捨て去ったわけではなかった。しかし、彼の金への執着は、もはや私利私欲のためだけのものではない。それは、正義を貫き、街をより良い場所にするための、強力な原動力へと変化していたのだ。黒岩が彼に託した最後の「投資」は、金賀一自身の心と、この街の未来を洗浄し、新たな夜明けをもたらしたのである。
金賀一の戦いは、形を変えながらも続いていくだろう。彼は、この街に残る小さな闇の芽を見逃さず、常に光を当てていく。彼の未来は、金銭的な成功だけでなく、彼が守り続ける街の平和と、そこで暮らす人々の笑顔によって、より輝かしいものとなるに違いない。
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