第4話 金賀一、まさかの餃子大食い競争に参戦!?
さて、金賀一の守銭奴探偵事件簿の続きだね!今度は将棋の街・天童から、餃子の街・宇都宮へ飛ぶのか。どんな金銭絡みの事件が彼を待ち受けているのか、楽しみだね!
「おい、金賀一!またお前、こんなローカルなイベントにまで顔を出すようになったのか!?」
宇都宮餃子祭りでにぎわう会場の一角で、金賀一は真剣な表情で餃子を頬張っていた。彼の隣には、もちろん呆れた顔の鮫島刑事が立っている。辺りには香ばしい餃子の匂いが立ち込め、熱気にあふれている。
「ひでぇな、鮫島さん。俺はね、日本のB級グルメ文化を愛する男なんですよ。特に、そこに金が絡んでいればね!」
金賀一は、いつものくたびれたトレンチコートのポケットから、割り箸を取り出して器用に餃子を掴む。今回の依頼は、この餃子祭りで起きた、まさかの餃子中毒事件に関するものだ。被害者は、宇都宮餃子協会の会長を務める、地元で有名な餃子職人、高田幸三。彼は餃子大食い競争の最中に倒れ、病院に運ばれたのだ。
「今回は、依頼主が…宇都宮餃子協会の理事でしてね。なんでも、会長が倒れたことで祭りの評判が落ちて、餃子の売り上げにも影響が出かねないってんで、俺様に内密に解決してほしいとさ!」
鮫島はまたしてもため息をついた。金賀一は今回も無償のふりをして、将来の餃子業界からの顧問料や、あるいは祭りでの莫大な屋台収入でも見込んでいるのだろう。彼の金への執着心は、もはや国境もジャンルも超えている。
今回の事件は、高田会長が食べた餃子に、微量の毒物が混入されていたというもの。しかし、大食い競争で提供された餃子は、すべて同じ釜で焼かれ、 同じ皿に盛られていたため、他の参加者には何の影響も出ていない。さらに、容疑者全員が、その時間帯に完璧なアリバイを主張しているのだという。
完璧なアリバイ、そして餃子の裏側
事件現場となった大食い競争のステージは、観客でごった返しており、非常に多くの人の目があった。毒物はごく微量だったことから、犯行はごく短時間で、かつ巧妙に行われたと推測される。金賀一はまず、高田会長が食べた餃子の残骸と、彼が使っていたタレ皿を注意深く調べた。
「なるほど。これほど多くの人々の目がある中で、特定の餃子にだけ毒を仕込むとは…相当な手練れか、あるいはよほどの魔術師か」
容疑者は3人。
* 田中一郎: 高田会長の弟子で、次期会長候補。事件発生時刻には、ステージ上で高田会長の隣で大食い競争に参加しており、複数の観客が彼の姿を目撃している。完璧なアリバイがあるかに見えた。
* 佐藤花子: 餃子専門店の女将。事件発生時刻には、自分の店の屋台で客に餃子を提供しており、大勢の客や従業員が彼女の姿を確認している。こちらも鉄壁のアリバイ。
* 山田太郎: 餃子評論家。事件発生時刻には、会場内の特設ステージで餃子に関する講演を行っており、多くの聴衆が彼の姿を目撃している。これもまた完璧なアリバイに見えた。
金賀一は、それぞれのアリバイの証拠を丹念に調べ上げた。ステージの監視カメラ映像、屋台の防犯カメラ、そして講演会の参加者証言。どれもが強固で、隙がない。
「全員が完璧なアリバイだと?ふむ、これは面白い…」
金賀一は腕を組み、ニヤリと笑った。彼の脳裏には、すでに一筋の光が見え始めていた。
「鮫島さん、この大食い競争のルール、何か違和感を感じませんか?」
鮫島は首を傾げた。ルールは単純で、制限時間内にどれだけ多くの餃子を食べられるかを競うものだ。
「そして、この毒物が混入された餃子…もし、それが特定の個人を狙ったものではなく、もっと別の意味を持っていたとしたら…」
金賀一は、誰もが見落としがちな、この餃子大食い競争の「仕組み」そのものに目を向けた。完璧に見えるアリバイにも、必ず綻びは存在する。それが、金賀一がこれまで多くの難事件を解決してきた秘訣だった。そして、その先には、彼の大好きな「金」が待っているのだから。
アリバイ崩壊、そして餃子に隠された真実
金賀一は、それぞれの容疑者のアリバイを再度確認するため、大食い競争のルール、餃子の調理過程、そして会場全体の人の動きを徹底的に調べた。
まず、田中一郎のアリバイ。ステージ上にいたのは事実だ。しかし、金賀一は彼の「食べ方」と、彼が使っていた「タレ皿」に注目した。そして、タレ皿の底に、ごく微細な特殊な粒子が付着しているのを発見した。
次に、佐藤花子のアリバイ。屋台にいたのは確かだ。しかし、金賀一は彼女の屋台の「場所」と、客への「餃子の渡し方」に注目した。そして、屋台のカウンターに、一瞬だけ不自然な動きがあったことに気づいた。
最後に、山田太郎のアリバイ。講演会にいたのは確かだ。しかし、金賀一は彼が講演中に頻繁に「水を飲んでいた」という証言に引っかかった。そして、彼の講演台の下に、小さな冷却装置が隠されているのを発見した。
数日後、金賀一は鮫島と容疑者たちを宇都宮餃子協会の会議室に集めた。
「皆さん、完璧なアリバイをお持ちだと主張されましたが、残念ながら、そのアリバイは、焼きたての餃子のように、熱く、そして脆いものでした」
金賀一はまず、田中一郎に向かって言った。「田中さん、あなたはステージ上で会長の隣にいましたね。しかし、あなたは毒物を液体状にしてタレ皿の底に仕込み、餃子を食べる際に巧妙にそれを付着させた。タレ皿の底の粒子がその証拠です」
一郎の顔色が変わる。
次に、佐藤花子。「佐藤さん、あなたは自分の屋台で餃子を提供していましたね。しかし、あなたは特殊な装置を使い、客に気づかれずに特定の餃子にだけ、ごく微量の毒物を吹き付けた。屋台のカウンターの一瞬の動きが、その証拠です」
花子は冷や汗をかき始めた。
そして、最後に山田太郎。「山田さん、あなたは講演会をしていましたね。しかし、あなたは講演中に冷却装置で毒物を気化させ、会場内の空調に乗せて高田会長の元へと送り込んだ。水を飲んで喉を潤していたのも、毒物の刺激を誤魔化すためでしたね」
金賀一は、田中一郎が会長の座を狙っていたこと、佐藤花子が協会の運営方針に不満を抱いていたこと、そして山田太郎が、会長が自分の評論に耳を傾けないことに恨みを持っていたことを指摘した。それぞれが、独自の動機と、巧妙な方法でアリバイを偽装していたのだ。
「真犯人は、あなた方全員です!」
金賀一は、三人全員を指差した。三人は顔色を真っ青にし、その場に崩れ落ちた。餃子に隠された、それぞれの欲望と、複雑な共謀犯だったのだ。
「まさか、餃子に毒を仕込むのに、こんな複雑な手口を…そして共謀まで…」鮫島が驚愕する。
「ええ、巧妙な手口でしたね。ですが、守銭奴探偵のこの俺の目をごまかすことなどできやしませんよ。だって、この事件の解決で、宇都宮餃子協会から巨額の顧問契約と、一生分の餃子が転がり込んでくるんですからね!」
金賀一は、宇都宮餃子協会の名誉を守ったとして、理事から莫大な報酬と、全国の餃子店舗で使える「餃子食べ放題券」を勝ち取った。そして、彼の顔には、最高に幸せそうな、金と餃子にまみれた笑顔が浮かんでいた。
金賀一のアリバイを巡る事件は、こうして見事に解決した。さて、次の事件は、いくらの報酬が金賀一を待っているのだろうか?
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