第6話 交代椅子の故障。
今回は、向こうの内界の交代椅子が故障した時の事を綴ろうと思う。交代椅子が何かは、「もう1つの内界。」を読んでほしい。
交代椅子が定期的に故障するという話は聞いていたが、その日は3人の存在がわかって数日でやってきた。ある時突然、
ここからは俺の推測になるが、彼らが『椅子の故障』と呼んでいる現象は疲れた和(+俺)の事を強制的に休ませる目的で起こる強制交代ではないか。そしてその和の疲れを向こうの内界が受信するには、和の感情をキャッチ出来る桜良の存在が必要不可欠なのではないだろうか。向こうの内界のメンバーが表に出ている限り、俺と和は内界で意識を失う。つまり、強制的に俺たち2人の精神を休ませる事が出来る。それこそが、この椅子の故障が起こる理由なのではないかと俺は考えている。
さて、話を戻そう。桜良が表に出されてしまった時は、半日ほどで交代が出来たが、暫くは予期せぬ交代が何度も起こった。故障は完全には治ってはいなかったらしい。桜良が内界に戻れたのは、桜良の表での活動の限界時間がきてしまっただけなのかもしれない。
そしてそう日が経たないうちにまた強制交代が起きた。今度表に出されたのは、のあだった。のあは殆ど表に出て来なかった人格だ。しかも俺に比べて異性人格故の身体違和が強く出る。そんなのあは、2日間表に出続けた。桜良が出た時はたまたま仕事の時間を避けられたが、のあの時はそうもいかずのあが代わりに通所をしてくれたらしい。のあは和が普段やっている3Dに興味があったようで、事業所では参考書を見ながら3Dモデリングに取り組んだようだ。また、家に帰ってもこれといった趣味もないことから、お気に入りのぬいぐるみであるさくのモデリングをひたすらやっていたらしい。和の作業の様子から殆どの操作方法を学んでいたらしいのあは、1日で素体をモデリングするところまで漕ぎつけたそうだ。そこで2日目は事業所でも参考書の課題ではなく、さくのモデリングの続きを行ったそうだ。2日目の夜に無事交代が出来たが、その翌日も3Dについて教わりたい事があるという事で、のあが通所をした。それ以降、のあも通所メンバーに入って和が通所するのが難しい日は俺かのあが通所している。
のあが2日間出続けたのを機に椅子の故障は治ったようだ。あれ以降、誰かが出ずっぱりになるような事態には陥っていない。だが、統計通りならばまた8月には故障が起こる可能性がある。こればかりは祈る事しかできないが、交代不能という状況にはもうならない事を祈るばかりだ。
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