シンメトリア戦記
羽原 輪
神皇誕生 編
第1話 〝神〟の誕生
ルーベスト大陸の南東には〝魔の島〟と呼ばれる大きな島が存在した。
その様な名で呼ばれる
大陸南東部に存在する強力な
紛争を度々起こしながら‶魔の島〟とも互いに交易を行なう関係だったのだが、ある時、この二国は突如として互いに手を結んだ。と、言ってもこれは、ある事柄に対してのみである。それは‶魔の島〟に対する関税だった。
突然、二国は島の者達に高い関税を要求して来たのだ。しかも島では手に入れ難い輸入品に関して一方的に値上げを始めて真綿で首を絞め上げる様にじょじょに要求を増して行ったのだ。そして、ついにヴィセリア帝国は彼らの統治に下る様に通告して来た。要するに植民地支配を受け入れという事である。
島では種族、部族ごとに独立して来た者達の代表者が一同に集まり、連日、連夜に渡り会議を開いた。一方的に搾取されかねない状況に
島の者達が幾ら個々に大陸の者達よりも優れているといっても多勢に無勢、統率された軍や軍船を持たない島はあっという間に周囲を包囲されてしまった。
事、ここに至って〝知〟を司る魔導士達は一つの決断に至った。
『長年の研究成果を実現すべし』と―——
魔の島の中央には一つの
幅も高さもそれなりの広さの場所には多くの書物と共に様々な機械が存在していた。その機械群とも言うべき存在は所々で様々な光彩を放ちながら明滅を繰り返して稼働していた。
ソレは丸い形をした機械で中心には丸窓が付いていた。台座の上に置かれたその装置には様々な機械から様々なコードやチューブが伸びて何かを供給していた。
「では皆の者、最後の仕上げに取り掛かるぞ。もう後戻りは出来ぬ」
その場に
「このままヴィセリア帝国の者共が上陸すれば数十年に及ぶ我らの研究が無に帰してしまう。今、この時を逃せば目覚めさせる機会は二度と来ぬ。いや、来たとしても外部の者達に利用されれば我らの理想は
「怖れるな。様々な分野における基礎的学習や魔術知識は既に睡眠学習で刷り込み済みだ。後は自らの体験として学んで行くのみだ」
誰かがゴクリと唾を飲み込む音が響いた。そして中でもリーダーと思われる人物が皆に更なる決意を
「皆、心を決めよ。不安を捨てよ。我らは全ての研究を‶神〟に注ぎ込んだ。後は目覚めて頂くだけだったのだ。今日がその時だった。只、それだけの事よ」
誰もが押し黙った。そして皆が頷く。全員の決意を確認したリーダーが
〝我ら無から有を生み出さんとする者達。我らの声を聞き届け給え。我らの祈りを聞き届け給え。今より
この宣言とも言える様な言葉を終えると周囲を取り囲んでいた全員が両腕を前に突き出して台座の上にある大きな球体に紫色の光を注ぎ始めた。魔力照射と言われる物で魔導士達の魔力を球に注ぎ込んだのだ。様々な場所が急激にドクン、ドクンと大きくまるで心臓が鼓動を刻むが如く揺れ動き始めた。
「
その場にいる全員が息を飲んで見つめる中を
「ま・・・まさか、失敗なのか?」
「いや、そんなはずはないッ!我らの数十年にも及ぶ研究の成果、コレ以外の方法なし。と、結論づけた集大成なのだぞッ!」
その時、一人が思わず球体の中心にある丸窓に向かって駆け寄った。そして中を覗き込む。溶液に満たされた内部には体を丸めた状態の一人の青年が
「!ッ」
声にならない声を上げると彼は一歩、二歩、と後ずさって尻もちをついた。
それが合図だった訳ではあるまいが、
片膝を付いた全裸の長い黒髪の青年が浅く短く呼吸を整えながらゆっくりと
周囲で見守っていた誰もが言葉を発しなかった。成功を信じながらも目の前の出来事を未だに信じ切れない面持ちで見つめていた。彼らは青年にどの様に声を掛けて良いのか判らなかったのである。ゆっくりと深い
「ここは・・・何処だ?お前達は・・・誰だ?」
やがてリーダーの男が一歩、二歩と青年に近づくと彼の前に両膝を付いた。そして涙を流しながら彼の問いに答えた。
「我ら全員、貴方の
そう言うと感動を噛みしめる様に歯を食いしばり
一人は手入れのされた庭園でお茶を飲んでいた手をふと止めた。一人は様々な者達との謁見を終えて玉座で休憩している時にそれを感じた。一人は何処かの地下で儀式をしている最中に炎の中にそれを感じ取り笑みを浮かべた。
人の手に生まれし〝神〟の誕生により新たな時代が始まったのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます