史上最悪の勇者が往く(仮)
あらかも@IRIAM配信者
サルゴ・リラチンパンジー歴 1419年 ソノヘンノ国編
第1話 3回分の走馬灯
◇
深く果てしない微睡みへと誘われるがまま、これまで歩んできた人生の中で育んだ数々の思い出が、映写機のフィルムのように鮮明に映し出され、それはまるで長い夢を駆け抜けていく走馬灯のようだ。
命の終わりに見る夢か、幻か、精一杯生きて充実した人生を送れたのだから、なにも後悔はない……って、まだ終わらないのかよ?
こう言うのってさ、一瞬の出来事として処理されるのが定番だけど、俺の走馬灯、ちょっと長くねえか!?
映画で言ったらベン◯ハーとか、◯ボート、タイタニ◯ク等の長編映画みたいに、VHSだったら前後編、通しだったらスクリーンにトイレ休憩が映されるタイプじゃないか!
とりあえずこういう時に便利な早送り、または倍速再生を……って、出来るの!?
いいね、今時の走馬灯、俺のニーズに応えてくれるなんて最高だな!
駆け抜ける走馬灯を更に早送りにして、映像と音声もよくわからないまま終われば、ようやく長い眠りからのお目覚めか。
窓から朝日が差し込んでくるのと同じく、このまま二度寝をしたい気持ちを抑えてゆっくりと眼を開けば……って、眩しい!
眩しすぎるだろ!
謝罪会見のフラッシュかよ!?
それなら以前やったからもういいって!
異世界に飛ばされた時の定番なのはわかるけど、女神の後光の調整ミスってねえか?
謝罪会見じゃなければ、刑事ドラマで追い詰められてライトアップされた犯人役みたいだな!
まあいい、こんな感じのテンプレ的な展開も久々であるが、なによりもまたお前と会うとはね?
金髪碧眼、北欧系アメリカ人の女神様は、相変わらずご機嫌のご様子で、後光以上に眩しい笑顔で俺を歓迎してくれたのだ。
「ハーイ、キャプテン。また会ったわね」
「ようジェニファー。お前、また女神になったのかよ?」
「そうよ、地上の面倒事に巻き込まれたくないからね」
基本的に地上の面倒事には巻き込まれない代わりに、耕作可能な土地、気候の条件から無理ゲーにも程がある絶望的な食料自給率と、なによりも娯楽が無さすぎる天界で女神をやっているジェニファーこと、『ジェニファー=ズザンネ・サマーフィールド』と俺は、とても長い付き合いなんだ。
それこそ話せば長くなる上に面倒くさいので割愛して、話の続きと行こうか。
「そりゃあそうだ。で、今回の世界は?」
「あなたは勇者になって、魔王が支配するこの世界を救ってくれればいいわ」
「おいおい、今回やけにライトな王道ストーリーだね? それから俺が勇者だって?……なにかの冗談か?」
「そうね、キャプテンが勇者? 私も自分で何言ってるのか、訳がわからないわ?」
「「HAHAHA!」」
俺の聞き間違いじゃなければいいけれど、本当に勇者をやるの?
俺が勇者をやったら、ただの山賊、マフィアでギャングスターを目指せばいいのか、あるいはよくいる南米のゲリラと変わらないぜ?
「ゲームの勇者もマフィアと変わらないし、少数で立ち回るゲリラ戦を主体としているでしょ?」
「確かにその通りだ。ところで武器は? よくある定番の剣なんて、夜戦だったらともかく、平原だったらリーチが短すぎてなんの役にも立たねえぞ?」
「キャプテン、あなたの言うことはわかるけど、キッズたちの夢を壊さないで欲しいわ? もちろんキャプテンの使いたい武器を用意してあるわよ。AKM(ロシア製アサルトライフル)、マカロフ(ロシア製自動拳銃)、RPG(ロシア製携帯型対戦車擲弾投射機)、ジャパニーズソード、あとはお好みね」
ああ、話のわかる奴で助かったよ。
ところでさ、キッズたちの夢を壊さないでと言いながら、紛争地帯の定番装備一覧で全てが吹っ飛ぶだろ?————。
◇
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