第5話 魔剣を作ろう
俺は吸血鬼の少女が戻ってくる前に、必死になってレベルアップを目指している。
目指しているのだが……魔物が近づいてこないのだけれど!?
ゴブリンとかスライム君は部屋に入ってきても、俺を警戒するように離れていくのだ。
いったいどうして!?
《仲間が食べられて危険を察知したんじゃね?》
《さっきの吸血鬼の匂いで弱い魔物が寄らなくなったとか》
《美少女吸血鬼の
《匂いフェチがおるな……》
配信ドローンからコメントが読み上げられる。
さっきの美少女吸血鬼のせいかは知らないが、この部屋が避けられている可能性はあるのか。
このまま待っていても魔物は来てくれないかもしれない。
俺はまともに動けない。なら魔物をおびき寄せることを考えるべきだ。
そうなると俺のスキルで使えそうなモノがある。
レアアイテム生成だ。これで魔物をおびき寄せるアイテムを作れるのでは。
《お、とうとうスキルの効果のお披露目か!》
《ミミック限定のスキルっぽいから初発見のスキルだもんな。はよはよ》
《宝箱から出るアイテムって凄まじい高性能な武器とかあるもんな。それを作れるならチートじゃね?》
コメントも盛り上がってるのでさっそくやろう。
レアアイテム生成の使い方は、さながら手足を動かすようにわかる。
俺の体内にある素材を消費して、アイテムを生み出せるようだ。
今の俺の体内にあるのは鉄剣、そしてゴブリンとスライムの死体だ。
また魔物の体内には魔石が宿っているので、これを使えば……魔剣を作れそうだな。
《魔剣!? 魔剣ってダンジョンの宝箱から超低確率で獲れるアイテムだぞ!? 最低でも一本で百万円以上確定だぞ!?》
《いや流石に無理だろ!》
魔剣はかなり貴重なアイテムで魔力も宿る。
これならゴブリンやスライムも欲しがって、俺に近づいてくれるかもしれない。
そういうわけでスキルを発動して、体内にある素材から魔剣を作ってみる。
使用する魔石はスライムにしておこう。
ゴゴゴゴゴと俺の体内から異音が鳴り響いた後、俺の体内に魔剣が生成された。
パカッとフタを開いて魔剣が配信で見えるようにする。
さっそくステータスウインドウで魔剣の性能を確認してみる。
水の魔剣LV1・・・水の魔力を宿した魔剣。持ち手の魔力を消費することで、低級の水魔法を放てる。
おっ。ちゃんと魔剣が作れてるじゃん。
《はあああああ!? いやマジで!? 魔剣を作った!?!?!?》
《魔剣ってお前! ダンジョン配信者たちが血眼になって探すやつだぞ!? スライムと剣を食うだけで簡単に作れるってヤバすぎるだろ!?》
《ミミックニキ! 匿ってやるから俺に剣を作ってくれ!!》
ふふふ。コメントが大盛り上がりで素晴らしい!
よし配信名を【魔剣作成できちゃいました!】転生ミミックのダンジョン配信! に変えておこう!
《本当にバズの気配を逃さねえなこの箱!》
《すまん。その魔剣ってそんなに凄いか? あまり魔剣に詳しくないんだが、低級の水魔法が使えても微妙じゃね? 貴重ってのは知ってるけど》
《魔剣は強さじゃないんや。どんな奴でも魔力があれば魔法が使えることなんよ。確かに魔法使いがこの魔剣を持っても無用の長物や。でも魔法が使えない剣士が、火属性相手にこの魔剣を持っていたら?》
《あー、魔剣ってだけで便利なのか。そりゃ貴重だし高い値段になるわな》
《ん? じゃあそれを量産できるミミックニキはヤバイのでは?》
《文句なしにヤバいぞ》
《反則レベル。動けないミミックでギリギリ許されるレベルのチートスキル》
マジでヤバイよな。レアアイテム生成のスキル。
今の俺はミミックなので魔剣を持てないから、ゴブリンとかをおびき寄せる以外に使い道はないのだが。
《ゴブリンに魔剣とかもったいなさすぎるだろ! 俺にくれよ!》
《猫に小判! 豚に真珠! ゴブリンに魔剣!》
《新たなダンジョンことわざが生まれちまったな……》
さてそんなことをしていると、またゴブリンは部屋の入口にやってきた。
奴は部屋を見て不快そうな顔をしたのだが、俺の方を見ると。
「ゴブゥ!!!!」
ヒャッハー! と言わんばかりの顔でこちらに走って来た!
ゴブリンは俺の中にある魔剣を掴もうとしたので、パクッと丸のみしてマズく頂きました。
《ゴブリン君、天国から地獄に落とされてそう》
《あんまりにもヒャッハーすぎる顔で走ってて草ァ!》
《守りたくない、あの笑顔》
すると身体がブルブルと震えて、レベルアップした感覚だ。
さっそくステータスを確認すると。
===================
《ミミック》
LV5(1UP)
攻撃:31
防御:410
敏捷:3
魔力:306(5UP)
スキル
レアアイテム生成LV2(1UP)、捕食LV2、擬態LV1、
収納LV1、精神耐性LV1
進化先
・ブロンズミミック
身体が銅になって硬くなったミミック
進化条件:LV5
・トゥーンミミック
魔法が得意なおもちゃ箱のミミック
進化条件:LV8かつスライムを三体食べる
===================
おお! レアアイテム生成もレベルが上がってる!
あと今回は魔力以外のステータスは変わってないな。
《レベルが上がるまでになにをしたかで、上がる数値が変わるんじゃね? 魔物の仕組みは分からんから推測だけど》
《あり得そうだな。今回は魔剣を作ったから魔力だけ上がった感じか》
《もはやこの配信、魔物に対する最新鋭の研究みたいなもんじゃん》
《おい! 世界でも有名な魔物研究者がこの配信をSNSで呟いたぞ! さらにバズりが加速してる!》
マジで!? 俺の時代が来たのか!?
もっと拡散頼むー! もっとバズれー!
次はゴブリンの魔剣を作るか!? そうすればさらにバズれるかも!
《アカン! ミミックニキの承認欲求が世界にバレてまう!》
《うーん、これは日本の恥》
《いやあんた吸血鬼に狙われてるの分かってる!?》
吸血鬼から逃げる。さらにバズる。
どっちもやるに決まってるだろうが!!!!!!
《二兎を追う者は一兎をも得ずって言葉知ってる???》
《追われてるのはミミックニキの方なんだよなあ》
《ミミックになって呪われたことで、承認欲求が異常に高まったって設定にしようぜ》
すると今度はスライムが部屋の前にやってきた。
スライムは魔剣を見ると、なんか怒ったように棘を出して俺に迫って来る。
どうやら仲間の仇とでも思ったのだろう。
さっそく丸のみして美味しく頂きました。
《スライムも魔剣で釣れるのかよ!》
《もうこれミミックニキの方が悪者だろ》
《善良なスライム君がクソ箱に食われてしまった……》
よーし!
トゥーンミミックになるために、もっといっぱいゴブリンやスライムをおびき寄せて食べるぞ!!!!
そうして俺はパクパク食べ続けて、レベル8へと到達した。
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