転生ミミックのダンジョン配信 ~世界唯一の魔物系配信者としてバズった俺、進化を繰り返して最強になる~

純クロン@『努力家な転生第六王子』発売中

一章

第1話 転生したらミミックに


「くそぉ……誰も配信を見に来てくれない。御堂筋みどうすじダンジョンのわりと深いところに潜ってるのに」


 俺はたから 勇斗ゆうと、大学生一年生だ。

 そんな俺は洞窟の中でスマホを開き、生配信ページを確認していた。


 だが【視聴者数0】の文字にため息をついてしまう。

 ダンジョン。それは三十年以上前に世界各地で発生した、魔物などが出現する不思議な地下洞窟だ。 


 ダンジョンでは魔物や貴重な鉱物が出るため、多くの者たちがダンジョンへと潜っていった。

 そして最近ではダンジョン配信で、顕示欲と金銭を稼ぐのが主流となっている。


 だが配信者が増えすぎたので、知名度がない配信は他に埋もれる。

 つまり誰にも見てもらえなくなっていた。


 誰も見てくれない➡ポイントがつかず注目されない➡つまらなさそうと誰も見てくれない➡・・・というデフレスパイラルだ。


 なにか打ちあがる起点が欲しい……! 起点さえあれば、絶対に逃さずに人気になってみせるのに……!


 俺の後ろには球体型ドローンが浮いている。

 こいつは自動配信機能にコメント読み上げもついている。さらに思ってることを言葉にして配信してくれて、それなりに値段も張るものだ。


 まあコメント読み上げ機能が活かされたことないけどな!

 そう思った瞬間だった。足元に魔法陣が浮かび上がる。


「転移トラップ!? マズイ、変な場所に飛ばされたら……!?」






◇◇◇






 俺は目覚めると石造りの部屋にいた。

 転移トラップで飛ばされて気絶していたのだろう。


 起き上がろうと腕を動かす。だが動かなかった。

 というか自分の腕が見えないのだが、いったいどこにいった?


 いや腕だけじゃない。足も見つからないし、身体が石のように動かないのだ。

 あと視線も普段より低い。しゃがんだくらいの感じだ。


「ア、ア……」


 声もロクに出ない!? 本当にいったいどうなってるんだ?

 混乱していると部屋に置いてあった鏡が目に入る。


 ――そこに映っていたのは宝箱だった。


 ……は? いや鏡に映るのって俺の姿だよな?

 じゃあいまの俺って宝箱になってるってこと!?


 あ、これは夢か。そうだそうだ、夢に決まってる。

 よし夢よ覚めろ……!


 そう思って目をつぶっていると、俺はなにかに蹴飛ばされたような痛みが走った!?

 なんだなんだ!? 思わず目を開くと、

 

「ゴブゥ!」


 ゴブリンが俺を見て不機嫌そうに怒っている!?

 なんか自分の頭がパカッと開かれる感覚がするんだけど!?


 鏡を見ると宝箱のフタが開かれて地面に転がっている。

 ついでにフタには牙がついていた。これ普通の宝箱じゃなくて宝箱系魔物のミミックだな。


 ……もしかしてゴブリンが宝箱のフタを開いて、なにもなかったから怒ってるって感じか?


「ゴブゥ! ペッ!」


 あ、俺にツバ吐きやがった!

 てめぇ! 俺が手も足も出ないからって!


 そうしてゴブリンは不機嫌そうに去っていった。

 お、おのれ……! 普段ならゴブリンなんて足蹴にしてやるのに!

 

 たぶん蹴られた場所がすごく痛いので、夢でもなさそうというのが辛い。

 ど、どうしてこうなった? なんで俺はミミックなんかに!?


 もしかして転移された座標にミミックがいて、奇跡的に重なったとか?

 いや俺がミミックになった理由よりも、ひとまずどうするかを考えるべきだ。


 と言っても身体は石のように動かないし、誰かが通りがかったら助けを求めるしかないか……。





◇◇◇





 二日くらい経ったけど誰も来ないんだが? 

 いや正確に言うとゴブリンがやってきては、俺を蹴飛ばして帰っていくだけだ。


 なんかすごく不安になってきた。

 ミミックはダンジョンにおいて罠に近い。つまり魔物なのだ。


 でもいちおうは魔物。たぶん食事は必要だ。

 このままでは助けも求められず、人知れず餓死してしまうのでは?


 どうすればいいんだ!?

 そもそもミミックってなにが出来るんだよ!?

 

 そう思った瞬間、俺の目の前に空中ウインドウが出現した。


===================

『ミミック』

LV1

攻撃:20

防御:400

敏捷:1

魔力:300


スキル

レアアイテム生成LV1、捕食LV1、擬態LV1、

収納LV1


===================


 こ、これステータスじゃん。

 スマホのアプリを使うとステータスを表示できるのだが、どうやら魔物にもその力があるらしい。


 しかし本当にミミックになってしまったのか!?

 捕食とか擬態とか収納はイメージがつくが、アイテム生成ってどう発動すればいいんだろう。


 レアアイテム生成・・・体内にある素材を使ってアイテムを作成できる。レベルが上がれば伝説級や神話級のアイテムも生成可能。


 ミミックは宝箱に入ったアイテムで油断させて、そのまま騙された奴をパックンする魔物だ。

 いつもどうやってお宝を用意していたのかと思ったが、スキルで作ってたのか。


 獲物を食べて、その獲物でまたアイテムを作っておびき寄せると。

 なんか生きるための知恵を感じるな。まあそれよりも問題がある。


 ――敏捷1ってロクに動けないじゃん。

 そりゃ身体が石のように動かないわけだ。そしてこのままだと動けないから、一生この部屋から出ることも叶わない。


 いや落ち着け。ステータスはレベルが上がれば変化する。

 つまりレベルさえ上げれば敏捷も増えて、機動力を得られるかもしれない。


 レベルを上げるにはいくつか方法があるが、一番手っ取り速いのは魔物を倒すことだ。

 そう思ったらゴブリンがのこのことやってきた。


 つまりこいつを食べることができれば、移動できるようになるのでは?

 よしゴブリンを捕食しよう。気持ち悪いので食べたくないが、背に腹は代えられない。


 いや今の俺は背も腹もない。代えることすら出来ないから余計に必要なのだ。


 だがゴブリンは俺にアイテムが入ってないと、即座に蹴飛ばしてしまうんだよな。

 よしアイテム生成を使ってみるか。


 スキルは手足を動かすように扱える不思議な力だ。

 そしてなんとなくだが、今の俺なら剣を作れそうな気がする。


 たぶんだが俺が宿る前のミミックが、鉄でも食べていたのだろう。

 試しにやってみたら、俺の身体の中に剣が出現したのが分かる。


 そしてゴブリンは俺の目の前にやってきて、パカッと俺の身体を開く。


「ゴブブッ!」


 ゴブリンは俺の中にあった剣を見て、目を細めて下卑た顔で笑う。

 この剣はくれてやろう。だがタダというわけにはいかない。


 ――お代はお前の命で頂くぞ!

 俺は(たぶん)アゴを動かして、ゴブリンを頭から食らいついた。


 そしてそのままゴックンと丸のみした。

 想像したら気持ち悪いから噛まずにな。


【レベルが1から2に上昇しました。捕食レベルが1から2に上昇しました】


 すると脳内に声が響いた。

 試しにステータスを確認してみると。


===================

『ミミック』

LV2(1UP)

攻撃:31(1UP)

防御:403(3UP)

敏捷:(1UP)

魔力:300


スキル

レアアイテム生成LV1、捕食LV2(1UP)、擬態LV1、

収納LV1


===================


 敏捷が2に上がっている!

 試しに動けるか試してみると、ピョンと小さく跳ねることができた!

 やった! 俺は機動力を手に入れたぞ!

 

《草。ミミックが喋ってるじゃん》

 

 すると俺の上の方から電子音声の読み上げが聞こえて来た。


 いやおかしいだろ。なんで電子音声が聞こえてくるんだよ。

 気になって思わず見上げた。するとそこにいたのは。


《あ、コメントしてOKな感じだったのか》

《ずっとブツブツ独り言してるから、コメントしづらかったもんな》


 俺の球体型ドローンだった。

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