第58話 美玖と咲

●涼風美玖(side)


「二人とも大丈夫かな……」

「きっと大丈夫よ……」


 今頃香奈と如月はきっと香奈のご両親と話している頃だろうか?

 私は今、私の家で咲と一緒に居た。


 テストも終わったし、別にする事もないけど何となく私と咲は落ち着かない事もあり、二人で過ごしていた。


「香奈ちゃんのご両親はどっちも香奈ちゃんの事が大好きだからね……」

「そうね……」


 大好きだから如月の噂を聞いたらきっと心配する。

 それは間違いなけど、だからと言って有無を言わさず否定するって事もないだろうし、きっと大丈夫だと私は思っている。


 なんて考えていたら、グループチャットに香奈と如月から連絡が来た。


『美玖ねぇ!咲ねぇ!お母さんとお父さんに星斗先輩の事を認めて貰えた!!二人とも色々とありがとう!!!詳しい事はまた後日話すね!!!とりあえず二人にはうまく行ったって伝えたかったから連絡したよ!!!』

『ありがとうな。二人のアドバイスも助かったよ』


 と、それだけ来ていた。

 私たちは別に大したアドバイスなんて出来ていなかったし、きっと二人の気持ちがきちんと伝わったんでしょう。

 私はそんな事を思いつつ、二人が上手くいって安心していた。


「そっか……上手く行ったんだね……良かった」


 同じタイミングでスマホを見ていた咲はそう呟いた。


「そうね……」


 私と咲はおめでとう。そう返事をしてスマホを置いた。


「なんだか不思議な気分ね……」

「不思議?」

「だって少し前までは香奈が恋人を作るなんて考えてもいなかったもの……今考えてみると不思議だなって思ったのよ」

「それは確かにそうかもね……」


 香奈は良くも悪くも凄く素直で、思った事をはっきりと伝えられる子。

 そんな香奈の事を羨ましく思う事も少なくはない。

 私も最近は如月のおかげで、マシにはなったけどそれでもだ。


 私は香奈に如月の事が好きだったら……そう話されたときから、それについて考えない日は無かった。

 そしてそれを意識すればするほど、更に自分の気持ちがはっきりしていくのが感じられていた。

 香奈と如月が仲良くしている姿を見て、羨ましい……そう思ってしまっていた。

 

「これから香奈ちゃんと如月君は……」


 私がそんな事を考えていると、咲がそんな事を小さな声で呟いたので、私は思わず咲の方を見た。


「あ……な、なんでもないよ!」


 咲は顔を赤くして恥ずかしそうにそう言う。

 咲が言う、これからの意味と言えば、香奈が如月の家に泊まる事だろう。

 そして恋人同士がお泊り……それも如月の家で二人っきり。

 香奈や如月が私たちにその事を話した時は、余りにも衝撃的過ぎて言葉が出なかったくらいだ。

 二人の反応を見たら、いくら私がそう言った事に詳しくないとはいえ、お泊りで何をするかって言うのも何となく分かっちゃったしね……

 実際そのせいで、この一週間はそれについて触れる事さえ出来なかったくらい……いや、私としてもそれについては考えない様にしていたって言うのが本音ね……考えるとまともに話せなくなっちゃうのよ……

 きっと咲も一緒で、その話題についてはあの時から出す事は無かった。


 でもこのままでいいんだろうか?

 如月と普通に話せるようには戻ったけど、いつまでもこの関係を続けていて良いのだろうか?香奈はどんどん先に進んで行っているのに……


 今がチャンスなんじゃないだろうか?香奈が如月とまた一歩進んだ日。それもあってか、私もちょっと勇気が出る。

 それに今だったら咲と二人っきりで、話の流れ的にも話しやすい。

 今日を逃したら今後もずっと、先に進めない気がする。ずるずると引きずったまま時間だけが過ぎて行きそうな気がする。


 勿論如月がどう思っているのかなんて事は分からないけど、少なくとも私たちが進まないといけない事は間違いない。


 そう思った私は自然と口が開いていた。


「ねぇ咲……咲って如月の事をどう思ってる?」

「え、え?ど、ど、どういう意味!?」


 咲の反応はあからさまだ。

 どうも思っていなかったらそこまで真っ赤な顔をして、動揺する事はないだろう。

 まぁ何となく分かっていたから、驚きはないけどね。


「そのままの意味よ……」

「……や、やっぱり美玖ちゃんも分かってたの?」


 咲は顔を真っ赤にしながら恥ずかしそうにそう言う。


「まぁ、ずっと一緒に居たから気づくわよ……」

「そ、それじゃあ……その、美玖ちゃんはどうなの?」


 私はどうか……その答えはもうはっきりとしている。


「前にカラオケで香奈に言われた事は覚えてるわよね?」

「そ、それは当然……」

「その時から私はずっと考えたんだけど、私は多分……いや違うわね。私は如月の事が好き。香奈にもバレていたけどそれに間違いはないわ」

「や、やっぱりそうなんだね……」


 咲は下を向いてそう呟いた。

 私は気にせずそのまま続ける。


「香奈が幸せそうに如月と話している姿を見て、羨ましい……そう思ったのよ。そして私もいずれは誰かと。そう考えた時、如月が良いな……そう思ったのよ。香奈みたいに如月とってね。だから私は少しずつ如月に伝えて行こうと思ってるの。勿論その前に香奈にはきちんと話すけれどもね」


 香奈はきっと何も言わないで行動しても良いって言うんだろうけど、そこら辺はちゃんとしておかないといけない。


「そ、そうなんだね……」


 咲はいまだに俯いている。


「咲はどうなの?」


 別に咲に私と同じようにしろ。そんな事を強要する気はない。

 でも咲が私と同じく如月の事を好きなんだとしたら、きっと咲は動けないと思う。咲の性格的にもね。

 だから今日がそのきっかけになれば良いなと思っている……なんて思っているけど、咲と一緒なら私ももっと勇気が出るって言うのも事実だけれどもね……

 

「わ、私は……私も……き、如月君の事が好き。私の事を助けてくれて、理解してくれて凄く嬉しかった。凄くカッコよかった。私も香奈ちゃんが羨ましい……そう思ってた。私も如月君意外なんて考えられないかな……」


 咲は顔を真っ赤にしながら涙目でそう言った。


「やっぱりそうよね……それで咲はこれからどうするの?」

「わ、私は……私も頑張りたい。美玖ちゃんと一緒に……」


 咲は恥ずかしそうにしつつも、私の目を見てはっきりとそう言った。

 心の準備は出来て居なかったんだろうけど、きっと咲も勇気をだして私に言ったんだろう。本気な事は伝わって来る。


「如月がどう思っているのかは分からないけど、それなら一緒に頑張るしかないわね……」

「そ、そうだね……」


 まさか私達三人に好きな人が出来て、それが全員同じ人になるなんてね……少し前までの私だったら想像すら出来ない話だったわよね。

 

 お互いに打ち明けられた事で気持ち的には私も咲も楽にはなった。

 しかし、小さな一歩だけど進んだ事もあり、この先の不安も増えた。

 もし、如月が私たちの事を好きじゃなかったら……もし如月が一夫一妻派だったら……一番悲しいのはどっちか一人だけしか駄目だったら。


 勿論如月次第な所もあるけど、全てが上手くいけばいいな……


 そんな不安を感じつつも私たちは今日、お互いの想いを語った。


 最初は恥ずかしそうにしていた咲も、最後の方には頑張ろうって気になったみたいで、恥ずかしい気持ちよりも、頑張ろうって気持ちの方が大きく見えた。

 そんな所からも今日咲と本音を話し合って良かったな……心からそう思った。

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