第44話 遊ぶ約束
●七島翼(side)
「あーーー!!!マジでなんなんだよ!」
あいつら本当に言ってるのかよ!?
とくに香奈だ!!!香奈は本気で言ってるのか!!??
あいつの事が好きって……
俺があれだけ近づくなって言ってたのに、無視しやがったのか!!!
大体なんで最近クラスメイト達も、アイツの事を認め始めてるんだよ???
誠也もなんとも思ってないって言ってたし、どうなってるんだよ???
掃除はちゃんとしているし、ゴミ捨てもちゃんとして。学校にも来てるしテストでも一位、授業もちゃんと受けている……そういうところを見て認識が変わっているとか言っている人が多いけど、俺は納得できない。
確かにそうなのかも知れないけど、アイツの噂を考慮したらそんなものじゃ普通、挽回なんて出来なって思うのが普通じゃないのかよ???裏があるとは思わないのかよ???
どうせ全部演技だろうし、いずれ本性を現すに決まっている!!!どうしてクラスメイト達はそれが分からないんだよ???
本当に意味が分からない!!香奈があいつの事が好き!!??ふざけるなよ!!
顔だけなら最強なんて言っている女子が多いのも知ってるし、正直あいつの顔が良いのは認めるけど、だからこそアイツには近づいてほしくなかった。
不良が嫌いなのも嘘ではないけど、正直それに関しては別にどうだっていいんだよ。
不良なんかより女好き、この噂がとにかく嫌だった。だからこそアイツの事を必要以上に悪く言っておいたのに!!!
三人は大丈夫だろうとも思いつつも、イケメンってだけで惚れちゃう人もいっぱいいるだろう、なんて考えた事もあった。だから近づけたくなかったのに!!!
俺だってアイツがイケメンじゃなければ、あそこまでアイツの印象を下げようと頑張る事もなかったって言うのに……
今までも努力が無駄だったって事か???
大体香奈は今までイケメンに告白されていても断っていたのに、どうしてあいつに惚れるんだよ!?理解できない!!どうして急に考えが変わったんだよ!?
ていうか、美玖や咲もなんであいつの事を確かめてみろとかアホみたいなことを言うんだ??確かめなくたって屑なのは分かり切っている事だろうが?
結局人はそう簡単には変われないんだし、アイツはただの不良で今後も人に迷惑をかけ続けて生きるような奴って決まってるだろう!!!
美玖も咲もアイツと仲良くしないって言いきらなかったし、あほだろ?
いくら助けられたからと言っても、何か裏があるとか思わないのかよ……いや、まだあの二人はそこまでな感じはしたから良いけどさ……
何度も言うが問題は香奈だ!!香奈があいつの事が好き、その事実だけでムカつく。いや、それに関しては多分相手がアイツじゃなくても同じか……香奈が男を好きになるってだけでいらいらする……付き合っているとは言ってなかったから、そこまでの関係ではないんだろうけどそれでもだ!!!
今まで兄として可愛がって来てやっていたのに、アイツと関わるななんて簡単ないう事も聞けないとかマジであり得ない!!!
「ッチ!本当に気分が悪い」
本当にムカつくから、暫くは香奈の事は無視しよう。
それに香奈の事をいずれは彼女にしたいとは思っていたけど、三人の中だと優先順位は圧倒的に低い。
大体義理でも妹って事もあって、仮に付き合ったとしても親の説得も難しかっただろうからな……そう考えると他の男に惚れているような奴じゃなくて、他の二人に目を向ける方がよっぽどましだ!!!
香奈はせいぜい本性を現したアイツにひどい目にあわされて後悔してればいい!!俺は何度も忠告したんだし、絶対助けないからな!!
「はぁ!もうイライラするわ!!!」
俺はイライラを落ち着かせるためにもゲームを起動した。
◇
●如月星斗(side)
――それから金曜日の夜になっていた。
あれから七島関連でひと悶着でもあるかなとか思っていたのに、意外にも何も起きなかった。
俺は相変わらず七島から睨まれ続けてはいるけど、ただそれだけ。他の変化は全くない。
香奈と七島はあれから家でも会話をしてないらしく、お互いに無視しあっていて顔すら合わせないらしい。
美玖と咲はやんわりと七島に話しているらしいけど効果は無し。
ていうか俺の話をしようとすると機嫌が悪くなるから、下手に刺激も出来ないとの事だった。
俺たちの状況を他の人に話したら、七島の事なんて無視すれば良いじゃん?そんな風に思う人も居るかもしれないけど、やっぱりそうも行かないんだよな……別にそれは美玖や咲の幼馴染だからって理由ではない。
一番重要な理由が、香奈の義兄って事だけどそれが問題だ。
香奈の両親は香奈の事も七島の事も大切にしていたはずだし、香奈も両親が悲しむ姿を見たいはずがない。
香奈からしたら義父とはいえ、幼稚園児の頃から可愛がってもらっていたはずだし、血のつながりなんて関係なく義父の事も好きなはずだし……それに血縁関係がなくたって二人はちゃんと親子だ。
話を聞いてる感じだと、そろそろ親たちが香奈と七島の事に気付いていてもおかしくない頃だし、心配はさせるはず。
ただの喧嘩程度で済めばそれで良いけど、一番最悪なパターンはこれ以上余計にこじれたせいで両親の離婚の選択をしてしまう可能性。
考えすぎかもしれないけどこのパターンが一番最悪だ。余程の事が起こらない限りないとは思うし、再婚してからは多分既に10年近くのはずだからかなり薄い可能性ではあると思うけど、絶対にないとは言い切れないのが凄く不安要素。
何となくでしか聞いたことはないけど、前世でもそれぞれの連れ子の仲が険悪過ぎて、再婚したのに離婚したって話は別に聞かない話じゃなかったもんな……
こんな状況は俺も生きていて初めての経験だし、ゲームでの知識なんてまるで役に立たないし、正直どうするのが正解なんてことは分からない。
まぁ、美玖も咲、それから香奈に関してはそこまで考えてはいないと思うけどさ……
とにかくそんな感じで本当に停滞してる状況だ。
いつ状況が変わるか分からないけど、少なくともここ二、三日は俺が睨まれている以外の事は平和そのものだったけど、これからもこの感じでいて欲しい。
次第に香奈の方も母親に言ったりとか、アクションがあるだろうしそれまで俺は待っていよう。
現状俺主導で出来る事は全然思いつかないしな……
とそんな事を考えていると、香奈からグループチャットの方に連絡が来た。
『皆!!!起きてる???』
『どうした?』
『起きてるけど、どうかしたの香奈ちゃん?』
『私も起きてるわよ』
『今電話できそう?』
突然どうしたんだろうか、そう思いながら返信した。
『俺は出来るけど』
『私も時間はあるからいいわよ』
『私も大丈夫だよ』
『分かった!それじゃあ電話しよ!!』
そうして俺たちはグループ電話に切り替えた。
『それでどうしたのよ?大丈夫?』
『何かあったの?』
『問題でも起きたか?』
俺たちが考える事は一緒で、香奈に何か問題でも起こったかを心配していた。
状況が状況だし当然だよな。
『違う違う!問題なんかじゃなくて、ただ明後日皆で遊ぼって言いたくて!!!』
『香奈ちゃん、皆っていうのはここの皆?』
『どうしたのよ急に?』
『皆は皆だよ!!!最近三人には色々と心配をかけてたし、空気もちょっと重かったから!!!駄目かな?』
まぁ、それはそうかもしれない。
俺もいろんな事を考えちゃっていたし、美玖も咲も心配そうにしていたもんな。
『別に駄目ではないけど……』
『わ、私も大丈夫だよ』
『美玖ねぇ、咲ねぇ!!ほんとに!?予定とかは無かった?』
『私は特になかったから、勉強したり読書をして時間を潰そうと思ってたわ』
『私も暇だよ』
『それなら大丈夫だね!!!星斗先輩はどうですか!!??』
楽しそうだし気晴らしにもなると思うから、皆が良いのであればいいんだけど……
『良いけどさ、遊ぶって言ったって何をするんだ?』
『それはそうね』
『んー、正直今思いつきで言ってみたから、考えて無いんだよねー。皆はやりたい事とかない?』
やりたいことと言われても、この四人でと考えるんだとしたら、全く思いつかない。ていうか、香奈以外とは、遊んだこともないし。
『俺はどうかな……ぱっと思いつくことはないかなって感じかな』
『私も同じね。ぱっとは思いつかないわ』
『私もかな?あ!でも皆でカラオケとかは行ってみたいかな……』
意外にも咲の口から提案が出て来た。
『カラオケかー。良いね!!それ採用!!』
『良いの?』
『私はおっけー!!!楽しそうじゃん!二人は?』
『私は問題ないわよ』
カラオケか、一応前世で知っていた曲は無かったけど、この世界に来てからは歌をかなり聞いているし、覚えた曲も多い。なんだったら前世とは同じのはなくても、似たような曲はあったりもしたからな。
皆が歌う曲を知っているかどうかは分からないけど、まぁ、問題はなさそうかな。歌もうわい訳ではないけど、別に下手でもないと思うし。多分な……
ていうか咲の歌を生で聞けるのは嬉しいしな。
『俺も問題ないかな』
『それじゃあカラオケは決定として、その後はボウリングはどう!?今やりたいなって思ったんだけど!』
『そう言えば暫く行ってなかったわね』
『そう言えばそうだね。私は良いよ』
『勿論私も大丈夫よ』
ボウリングか……実は前世も含めてやった事が一度もないんだよな。
『ボウリングか……』
『星斗先輩はあんまり好きじゃないですか?』
『いや、そうじゃなくて、やった事なかったなって思ってさ』
『それじゃあやりましょうよ!楽しいですよ!』
『そうね。私たちも別に頻繁に行っていた訳じゃないし、一緒に楽しめばいいのよ。上手さとかは気にしてるのならば、その必要はないわよ?』
『そうだよ。もし分からなかったら私たちが教えれば良いしね』
別に上手さを気にしている訳でもないし、なんだったら凄く行きたいと思っているが、二人は気を遣ってそう言ってくれた。
まぁ、折角だし教えて貰おうかな。
『それじゃあ、行ってみようかな。やってみたい気持ちもあるからな』
『やったー!!!それじゃあ日曜日はちょっと早めに集合して、カラオケに行ってからボウリングに行きましょう!!』
『早めにっていつよ?』
『えっと、12時くらいですかね?』
『全然早くないじゃない……』
確かにちゃんと昼だもんな……
『午後で考えると早いから良いの!』
『まぁ、良いわよ。それじゃあ12時なのね?』
『うん!皆も良い?』
『俺は大丈夫』
『私も大丈夫だよ。でも一つだけ確認だけど、お昼ご飯は食べておいた方が良いの?それとも皆で食べに行く?』
『んー、そうだね。皆で食べに行くのも楽しそうで良いけど、今回は一応お昼ご飯は食べてから集合にしようかな。カラオケに行ってボウリングに行くと結構時間もかかりそうだからね。翌日は学校だし、遅くに帰る訳にもいかないもんね……それに暗くなったら危ないもんね』
まぁ、最近は咲の事だったりもあったばかりだから、暗くなる前には解散するのが理想だよな。咲の両親だって今は早く帰ってこないと、心配するだろうし。
一応俺が皆を家まで送り届けるつもりではいるけど、それは間違いない。
『分かった。それじゃあそうするね』
『私も分かったよ!』
『それじゃあそんな感じだと思っておくよ』
『うん!!!』
そんな感じで俺たちは四人で明後日遊ぶことになった。
◇
――電話を終えた俺はちょっと考えていた。
「四人で遊ぶのか……」
転生した当初は考えもしてなかったし、凄く色々と変わったなと思うけど、めちゃくちゃ楽しみだ。
香奈と二人で遊ぶことはあったけど、何回か俺も含めた皆で遊びたいって言ってたこともあったもんな。
今回もその気持ちもあったんだろう。勿論最近の事があったからってのも事実だろうけどさ。
とにかく最近は俺も考える事が多かったし、明後日は俺も楽しもう。
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