第32話 香奈のカミングアウト

●涼風美玖(side)


「もう大丈夫かしら二人とも?」

「うん……」

「私も大丈夫だよ」


 あれから暫くして、二人は泣き止み話せるくらいになっていた。


「とにかく私は本当に乗り越えたから、もうこの事を心配する必要はないわよ。別に男嫌いが治った訳じゃないけどね」


 男嫌いが治った訳じゃないのは間違いない。私は今でも基本的には男とは仲良くしたいとは思わないし、関わりたいとも思わない。その辺は治るとしてもまだ時間が必要になって来ると思う。

 ただ昔みたいな恐怖心はほとんど無くなったと思う。学校でも男子と触れる事はないけど、男子達を見ても怖いとかそんな想いはほぼほぼない。

 必要な会話をする時だって、前よりも楽になったしね。

 

「それにしても如月君とそんな事があったんだね……全然分からなかったよ」

「それはそうね。私が二人に言ってなかったから知らないのも当然よ」

「やっぱりあの時ってそうだったんだね……私も何となくだけど星斗先輩が私たちの事を助けようと頑張っているんだろうなって思ってたんだよね」

「そうなの?」

「うん。そうなんだ。でもなるほど……これで色々と繋がった気がするよ」

「つながったって何が?香奈ちゃん」

「美玖ねぇが星斗先輩の事をなんか他の男子とは違った対応をするって言うか、認めたような反応をしていた理由かな?星斗先輩に何かあったの?って聞いても教えてくれなかったんだよね。今思えば、俺の口からじゃなくて美玖ねぇの口から聞けって言う意味だったのかもねってさ」

「まぁ、如月がそう言ったのであればそういった意図もあったのかも知れないわね……私も如月には近いうちに二人にも打ち明けるって宣言してあったからね」

「そうなんだね。それなら美玖ねぇに関しては納得行ったよ。でも咲ねぇはどうして星斗先輩は大丈夫だと思うの?」

「私は……本当に何となくとしか言えないかもね。しいて言うのであれば、香奈ちゃんが如月君の事を本当に慕っているって事が伝わって来ていたし、少ししか話した事はないけど下心が全く感じられなかったって言う事かな?」


 そう言えば咲は如月とは一、二回話してって言ってたわね。

 たったそれだけしか話していない咲だとあまり参考にはならなけど、確かにそれはそうだと思う。

 はっきり言って今まで出会って来た男子で、私や咲、そして香奈に対して下心を感じさせない人なんて、それこそそれぞれの両親だけと言ってもいいくらいだ。

 翼でさえ時々咲の胸を見て来るような事もあったのにね。

 まぁ、中学生の頃にそれを指摘してからは一回もないんだけど。


「そうね。確かに如月からは全く下心を感じた事はないって言うのは私も同じ意見かな?」

「そうだよね……実は私もそうなの……」


 私たちがそんな事を言っていると、いきなり香奈が落ち込みだした。


「ど、どうして落ち込んでるの香奈ちゃん?」

「だって、男の子って好きな相手には多少なりとも下心を持つって聞いてたから、それを感じた事が無いって言う事は、星斗先輩って私の事を異性として見てくれてないんじゃないかって……」

「そ、そんな事、ないんじゃないかな……」

「そうよ……大体それならこれからそう見て貰えるように頑張ればいいだけじゃない」


 咲も私もどういえば良いのか分からずそんな事を言った。

 大体私に恋バナなんて出来る訳がないものね……


 とそんな事を思っていると、香奈から衝撃的な発言が聞こえて来た。


「も、もう告白しちゃったの……」

「「……」」


 流石に今度は私も咲も驚きの余り声が出なかった。

 いつの間に!!??金曜日は二人とも普通だったし……それなら昨日?

 一体何があったっていうの!?

 私はかなり困惑しつつも聞いてみた。


「ほ、ほんとうなの???」

「うん……昨日勢い余って言っちゃったの」

「ど、ど、どういう事??香奈ちゃん??」

「昨日は私も咲も用事があったけど、香奈は如月と一緒に居たって言う事?」

「うん。実はね……」


 そう言って香奈は昨日の事を話し出した。


 どうやら香奈の如月への想いは私たちが思っているよりも遥かに大きかったみたいね……本当にびっくりだ。


「それで返事はテスト明けって事なのね。それに香奈は如月に影響されて勉強に集中してたって事なのね?」


 私がそう言うと香奈は小さく頷いた。


「それで今日は様子が変だったんだね……」

「香奈は今どう思っているの?」


 私がそう質問してみると、さっきまでちょっと恥ずかしそうにしていた香奈は真っ直ぐこちらを見て言った。


「そうだね。一応私はそれについては前向きで考えてるよ。だってもし振られても諦める気ないもん!後悔なんてしてない!!」


 正直私としても何を言ってあげようか凄く迷っていたけど、その顔を見てちょっと安心した。

 なんだ、この様子なら大丈夫そうねと。


「そう、それならいいわよ。香奈が如月の事を好きなのであれば、私は応援するわ」

「そうだね。私も応援するね」

「うん!ありがとう!」


 私たちがそう言うと香奈は可愛く笑ってそう言った。

 

 正直香奈が前に相談してくれたように、この事を翼が知ったら間違いなく面倒くさい事になるのは間違いない。

 皆でそれについては話し合おうって事で話は終わっているけど、それについては今話す事ではなさそうかな?その事は二人の結果がどうなってからでも大丈夫よね。

 

「それじゃあ、勉強を再開しましょうか」

「うん!星斗先輩に褒めて貰いたいし私も頑張るよ!!」

「そうだね。頑張ろうね」


 そうして私たちは再び勉強に戻ったけど、私はちょっと思っていた。


 香奈と如月が付き合う事になるかも知れないのよね……香奈の事は大好きだし、如月も凄く良い奴だ。そんな二人が付き合うのは嬉しい事よね。

 でも今までは全く考えていなかったけど、香奈に恋人……そう思うとちょっと考えてしまう。

 私も誰かとそんな関係になる日が来るのかな……と。勿論男性に苦手意識を持っている今はあり得ないけど、相手がもし如月だったらどうなんだろう……一瞬私はそんな事を想像してしまった結果、ちょっとだけ心が温かくなって体温が上がるのを感じていた。


 そんな私は頭をぶんぶんと振って、考えるのを辞めた。


 そんな訳……ないわよね?


 私は一瞬ちょっと自分の気持ちに戸惑ってはいたけど、勉強に再び集中した。

 如月どうこうの前に、私は如月にテストで一度も勝ってないんだから、今は勉強に集中しないと。

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