第25話 ちょっとした違和感?

●七島翼(side)


「やっと終わったー」


 授業が終わった俺は、そう言った。

 中学生の頃からそうだったけど、勉強はやっぱり全然好きになれない。

 授業中は眠くなるし、英語なんかは特にやばい。

 美玖や咲はなんでそんなに勉強を頑張れるのだろうか?マジで不思議だ。

 美玖にはもっとちゃんとやれと言われるけど、誠也だって俺とおんなじようなものだし、俺が普段仲良くしているゲーム仲間の人もそんな感じなので、俺としては別に勉強に大切さは感じられない。

 

 俺はそんな事を思いつつも、美玖と咲の所に向かう。

 

「美玖、咲、久しぶりに一緒に帰ろうぜ。最近一緒に帰る機会もなかったしな」


 高校生になってからは、皆で一緒に帰る機会も減っていた。昼食は一緒に取る事もあるけどさ。

 とにかくそんな訳だから俺は二人を誘った。

 美玖は塾の回数を増やしたみたいだし、咲も委員会や家でやる事が有るとかって事が増えたみたいだし、俺は俺で誠也たちとハマってたゲームがあって直ぐ帰る事が多かったからな。


「そうね。今日は私も暇だし良いわよ」

「私も良いよ」

「香奈はこの後来るのか?」

「その予定よ」

「それじゃあちょっとだけ待つか」


 ――それから少しして、香奈が来た。


「お待たせ!美玖ねぇ、咲ねぇ!」

「香奈、やっと来たか」

「今日は義兄さんも一緒に帰るの?」

「まぁ、そうなったわ」

「そっか。それじゃあ皆で帰ろう!」



 折角久しぶりで皆で帰るって事で、俺から三人に提案して、いまはカフェに寄っていた。


「そういえば翼?もう少しで中間テストだけど、ちゃんと勉強してるのかしら?」

「まぁ、ぼちぼちかな?」

「今回は勉強会も参加しないんだし、ちゃんとしなさいよ?」

「分かってるけどな……寧ろ美玖とか咲はどうしてそんなに勉強を頑張れるんだよ?」

「私はどうせやるなら一番が良いって思ってるだけよ……一番になった事はないけどもね……」

「私は美玖ちゃんほど頭は良くないけど、将来の為かな?凄く漠然としているけどね。とりあえずやっておかないと!って感じかな。」

「二人とも凄いよねー。私なんて勉強すると頭が痛くなるもん……」

「でも香奈はやれば出来るんだし、ちゃんとすれば直ぐに慣れるわよ?」」

「そうだよね。私もそう思うよ?それに香奈ちゃんはなんだかんだ言って、テスト前にはちゃんとやる事の方が多いからね」

「そうかな?私も今回は頑張ろうと思ってるけど、ちょっと不安だな」

「香奈も俺と同じく勉強嫌いだもんなー」

「香奈はそれでもテスト前は勉強するし、赤点も取った事ないんだし翼とは違うわよ?翼は勉強が嫌で逃げ出した時もあったじゃない。結果赤点を取ってたしね」

「……でも赤点を取った回数は二桁もないじゃん」


 美玖は幼い頃から真面目でしっかり者だ。

 そんな事もあって俺や香奈、咲に対しては色々と物うるさく行ってくる事があるのだが、何故か俺には特に口うるさい事が多い気がする。

 課題を手伝ってくれたりしてくれる事もあるので、そう言った面では凄く感謝しているけど、ちょっとだけめんどくさいと思っちゃうときもあるのも事実。

 美玖は親じゃないんだし、別にそんなにうるさくする必要もないじゃんと俺は思う。ぜひとももうちょっとだけ頭を柔らかくしてほしいものだ。


 とその時、香奈のスマホがなった。


「あ!」


 香奈はぱっとスマホを手に持って嬉しそうに見始めた。


「何かあったのか香奈?誰かからの連絡か?」

「そうだけど気にしないで良いよ。ちょっと私はお手洗いに行ってくるね!」


 それだけを言い残して香奈はどこかに行った。


「なぁ、最近の香奈ってちょっと変じゃないか?」

「そう?別に普通じゃない?」

「私も別に可笑しい所はないと思うよ?」

「でも明らかにスマホをいじる事が多くなったし、誰かと連絡を取り合ってるんじゃないかって思ってな?」

「別に友達とかじゃないかしら?香奈に友達が多いって事は昔からじゃない」

「そうだよね。香奈ちゃんって特に女の子からの信頼が厚いもんね。昔から色々と相談を受けているイメージがあるよ」


 そう言われてもちょっとだけ違和感は感じるんだよな……確かに香奈は女子の友達は多いし、内容までは流石に知らないけど相談されて来ていたのも知ってる。

 んー?でも二人がそう感じていないのであれば、俺の勘違いなのかもな?

 俺としても漠然とした違和感だったし……


「ただいま!」

「お帰り香奈ちゃん」

「なんの話をしてたの?」

「いや、最近ちょっと香奈の様子が変だなって思ってな。それについて二人に聞いてただけ」

「私の?」

「だってスマホを見ては楽しそうにすることが多くなったしちょっと変だなって思ってんだよ。二人に聞いてもそんな事はないって言われたから俺の勘違いなんだろうけどさ」

「そうなの?でも別に普通だよ、それよりも義兄さんは……」


 香奈が何かを言おうとしていたが、俺はとあるものを見て遮ってしまった。というか言葉が漏れていた。


「うわー……ああいう奴らって本当に迷惑だよな」


 俺がそう言うと三人も俺が見ている方向を見た。

 そこに居たのは、数人の男の人が横に並んで幅を取って歩いていた。

 服は着崩してピアスなども多く明らかに不良って感じの奴らで、実際にすれ違う人たちの方が一方的によけていて、彼らはそれが当たり前のように歩いている。


 本当に迷惑な奴らだなと思いつつも俺は言う。


「不良ってああだから嫌いなんだよな……人の迷惑なんて考えない奴らばっかりだしな」

「あの人たちは見た感じそうかも知れないけど、全員がそうって訳じゃないと思うよ?見た目だけじゃ判断は出来ないからね」


 俺の言葉に香奈はそう言うが、あれを見たらそう思うのも普通だろう。

 ていうかうちの学校にもそんな奴が居るし、なんだったらクラスも一緒だ。

 中学生の頃からずっと噂のある奴だし、本当にあんな奴が複数人居なくて良かった。 


「いやないない。見た目と性格は直結するって。ああいった見た目をしている時点で、信用できる要素はほぼ皆無でしょ?それにしてもうちの学校には不良って言える人が一人しかいないし、本当に良かったよな。あんなのがいっぱいいる学校なんてマジで最悪だしな」


 俺がそう言うと、香奈が下を向いて黙ったと思ったら今度は美玖と咲が言った。 


「まぁ、その話はやめましょう。見た目だけで判断出来ないのは間違いないし、別に学校でもトラブルを起こして訳じゃないじゃない。噂のみを信じた仮定で話しても意味ないわよ」

「それもそうだよね。それよりも翼君ってどうしてそんなに不良が嫌いなの?」


 嫌いな理由……それは別に特別な理由がある訳じゃない。

 でも何となく嫌いだ。絶対に仲良くは慣れないし、何より香奈や美玖、咲とも絶対に関わって欲しくない。

 美玖は大丈夫だろうけど、香奈や咲は悪い影響を受けちゃうかも知れないもんな。そんな理由から三人には不良には近づくなって言い続けて来ていた。

 特に俺達と同じクラスに居るアイツは特にやばい。

 噂が噂だし、三人とは絶対に近づけたくない。

 同じクラスって知った時には、絶対に近づくなって皆には言い聞かせたくらいにはな。

 女をとっかえひっかえしているような噂があるんだし、見た目が良い三人も狙われるかと思って心配だったんだよな……

 ていうか、中学生の頃は学校に来なかったと聞いていたけど、どうして高校ではずっと登校してるんだ?授業も普通に受けているし、今更真面目ぶってでもいるんだろうか?今でこそ慣れてきている人も居るが、最初の日なんて皆本当に迷惑そうだったし周りの事もちゃんと考えて欲しいと思ってたしな……あいつが居るだけで空気が悪いって気が付いてないのだろうか?

 まぁ、どうせまた問題でも起こして学校に来なくなるのが落ちだろうけどな。


「だって普通に迷惑じゃないか?俺たちのクラスにもそんな奴が居るけど、アイツが居るだけでクラスの雰囲気も悪くなってたしな。本当に迷惑じゃん?」


 俺がそう言うと香奈は言う。


「で、でも、私が皆の教室に行ってもそんな雰囲気は感じられないけど……」

「そりゃ最近はそいつは昼になるとどっかに言ってるからだよ。確かに慣れてきている人も居るけど、絶対に直ぐ問題でも起こすだろうしな……香奈も知ってるだろ?何回も話したんだし」

「聞いたけど……でも高校生になってからは変わったって聞いたよ?」


 確かにそんな噂はちょくちょく流れている。

 学校には来ているし、先生の態度もちょっと変わったと聞かない事もない。

 慣れて来た人が居るのもそれが原因の一つだろう。

 

「だとしてもだろ。結局不良は不良なんだし、皆も絶対に近づかない様にしろよ?アイツは女好きって噂も多いんだしさ?」

「でも分かんないじゃん……噂だけで判断するのは良くないと思うよ!」


 俺がそう言うと、香奈はちょっと怒ったようにそう言って来た。

 どうして香奈が怒るんだよ?


「ど、どうしたんだよ急に……俺は間違った事は言ってないだろ?」

「でも!!」

 

 香奈が再び何かを言おうとした時、美玖が言った。


「二人とも落ちつきなさい。翼は噂を鵜吞みにしてそう言う事を言うのはやめなさい?実際に被害にあった訳でも見た訳でもないんでしょ?それに香奈は多分最近見た漫画に感情移入したのよ」

「漫画?」

「あ、あれだよね?えっと……私がおすすめした漫画なんだけど、その主人公の子が見た目だけで勘違いされやすい子で、その子の事を可愛そうって香奈ちゃんが言ってたもんね」


 漫画か……確かに香奈はそう言った物語に感情移入をしやすい性格だ。

 そう言う事だったら理解は出来なくはないのかもしれないな?

 でもだからと言ってアイツに感情移入だけはしないで欲しいが……


「まぁ、そう言う事だったら良いけどさ……」

「私、帰るね……」


 香奈はそう言ってその場を立って去って行って、二人は「後はこっちでどうにかする」と言ってその後をついて行った。


「全く……やぱり香奈ってまだまだ子供っぽいよな」


 漫画に感情移入して怒るなんて、中3のする事とは思えない。

 この前の咲との約束の件もそうだけど、自分とは関係のない事なのに怒るってちょっと理解できない。

 しかも今回は漫画の事でだしな……もっと冷静に考えられるようになって欲しいよな。 

 

「まぁ、香奈の事は二人に任せておけばいいか」


 俺的には香奈がスマホを良くいじるのを見て、男子の友達でも出来たのか!?そうちょっと心配もしたけど、美玖や咲がその違和感を感じていないのであれば、多分俺の勘違いだろう。

 大体美玖は俺以外の男子が嫌いだし、美玖の可愛がっている香奈にそう言った人がいれば絶対に見過ごすわけがないしな。

 

 それが分かったし、今は何も問題はない。

 香奈の事だし、明日には何もなかったように元気になるだろうしな。

 

「それはそうと、早くあのゲームしたいんだよな……」


 最近発売された狩猟ゲームで、誠也たちは先日から始めている。

 俺はお金がないのでまだ買えないから、途中参加になるけど本当に楽しみだ。

 今週の土日におばあちゃんとおじいちゃんの家行けば、お金を貰えるだろうからな。

 ていうか香奈が行かないって言ったのも予想外だったよな……おじいちゃんとおばあちゃん大好きな香奈だったら行くと思ったけど……まぁ、テストが近いからって理由だったし、そのせいか?まぁ、今回は別に香奈が居ても居なくても俺としてはどっちでも変わんないからいいんだけどな。

 今回は頑張ってみるって言ってたし。


「兎にも角にも早くゲームしたいわ……」


 買ったら絶対に皆に追いつくぞ!!

 俺はそんな事を思いながらカフェを後にした。

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