第14話 涼風美玖の変化(上)
●涼風美玖(side)
「ありがとう香奈、付き合ってもらっちゃって」
「ううん。私も今日は暇だったし全然大丈夫だよ!!」
私は昨日母親に頼まれて、いろいろと買い物に来ていた。
香奈は今朝たまたま出会って、手伝ってくれると立候補してくれたので一緒に来ていた。正直かなり多そうだったしかなり助かっている。
本当だったら男で力のある翼に頼もうとしていたんだけど、先日の咲との件で私は翼に対して怒ったばかりだし、ちょっと頼みづらさもあったのよね……
とそんな時。
「あれ?どうしたのかなあれ?」
「そうね……困っていそうだし聞いてみましょうか」
「うん」
私たちの視界には辺りをキョロキョロそしていて、困っていそうな小学生低学年ほどの少女が居た。
「ねぇねぇ。何か困ってるのかな?」
香奈がそう話しかけると、女の子は嬉しそうに反応をした。
「あ!綺麗なお姉ちゃん達だ!!えっとね……ついて来てほしいの」
「えっと、どこにかな?」
香奈がそう聞いてみるも、女の子はくびを傾げるだけで答えない。
「美玖ねぇ……どうしようか?」
「そうね。心配だしついて行ってみましょうか……」
「うん。それが良いかもね」
そうして私たちは女の子について行った。
◇
「これはどこに向かっているのかな?」
「分からないわ。でもちょっと雰囲気は悪いわね」
この辺りは一通りも極端に少なく、雰囲気も悪い。
路地に差し掛かったあたりからちょっとした違和感は感じつつも、この女の子が困っているのであれば助けたいと思いついて行っていた。
とそんな時。
「おい!香奈!!!」
後ろから香奈を呼ぶ声が聞こえて来た。
私たちは三人同時で振り向いたけど、そこには如月星斗が居た。
「え!!??星斗先輩!!??どうしてここに?」
「如月……」
なぜ彼がここに?
「いや、ちょっとさっき子供と細道に入って行くを見て気になったからさ……ここって人気もすくないし」
「心配してきてくれたんですか!?」
「まぁ、そう言う事だな」
「ホントかしら……」
この辺は何もないし、この道に入る前に見たと言っているが、そうなってくると如月は何でこんな場所にいたのだろうか?
香奈は嬉しそうにしているけど、私はそんな発言にちょっとだけ違和感を覚えた。
「ホントだって。それより二人はそんな小さなこと何でこんな場所に?」
「えっとね?良く分からないけど、この子が困っているみたいだったら一緒についてきたんですよ」
香奈は如月にそう言った後女の子に言う。
「そういえば、行きたい場所にはもうつくの?」
「うん!!!」
「もう一回聞くけど、そこには何があるのかな?」
「んー言えない!!」
「どうして言えないのかな?」
「教えちゃ駄目って言われたの!!!」
それを聞いた私と香奈は目を見合わせた。
もっと詳しくこの子に聞いておくべきだった。
この発言からだれかの指示でこの子が動いている事はまる分かりだ。
それより一体この子に何があったんだろうか?
「どうしても言えないの?」
「うん!」
香奈がもう一度聞くが答えは同じ。
「それじゃあ……」
そう言って香奈は先ほど買ったお菓子を取り出した。
「これをあげるからお姉ちゃん達に教えて欲しいな?」
「え?いいの?」
「うん!教えてくれたら、これもあげちゃうよ!」
お菓子で買収を成功したみたいね。
「分かった!なんかね?大きな男の人たちに、可愛いお姉さんを連れてくればお菓子をあげるっていわれたの!!!」
ん?それは一体どういう事!?
明らかに穏やかではないのは間違いない。
この子が嘘を言っているとも思えないし、て言う事はこの子は利用されていたって事かしら!?
明らかに事件の香りに、私も香奈も緊張感が走った。
「もっと詳しくおしえてくれる?」
「んー、それ以上は何も言われてないよ?」
「それじゃあ目的地はどこかな?」
「えっとね。この一本道を進んで行けばもうすぐだよ!!!」
目的地はもう少し、この先で何が待っているかは分からないが、間違いなくろくでもない事でしょうね……この後はどうすればいいのか?私は急な事で頭の整理が追いついていなかった。
そして10秒間くらい無言が続き、今度は如月が言った。
「ちょっと良いか?状況は良く分かってないけどさ……この女の子はもう返した方が良いんじゃないか?」
「そ、そうだね……」
「そうね……」
確かにそれは間違いない。
どんなことがあるのかは分からないが、少なくともこの子を巻き込むのは論外ね。
「そ、それじゃあお姉ちゃん達と一緒に帰ろっか」
「うん!!!」
◇
「ねぇ、香奈?如月はなんの用があるんだと思う?」
「なんだろうね?でも大丈夫だと思うよ」
私は如月と別れて直ぐ、香奈にそう聞いた。
香奈は何故か如月の事を凄く信頼しているみたいだったが、私からしたら大丈夫とは何が大丈夫なのか分からないし、明らかにおかしな点ばかりだ。
如月が目的地ぎりぎりで現れた事にも違和感を感じるし、彼が私たちをあの場から早く返したそうにしているのも違和感だった。
もしかしたら本当に心配をしてくれて、って事もあり得るけど、やっぱり信用はしきれない。
それにあそこの先にこの子を利用しようとした男が居るのはほぼ間違いないし、その先で悪い事でも企んでいるのかもしれないわね……
そう思うととある可能性も考えられる。
もしかしたら如月もそいつらの仲間で、香奈にバレたくなかったっていう可能性。香奈に近づいた理由にも訳があるのかも?
香奈は最近如月と仲良くなったけど、今回ばかりは香奈の見る目がなかったのかも……そうあって欲しくないのは当たり前だけど、私は最悪の可能性まで考えた時、いてもたってもいられなくなった。
「香奈!」
「え、は、はい?」
「この子の事は香奈に任せても大丈夫よね?」
「えっと、私一人でも問題はないと思うけど……どうかしたの?」
「私もちょっと用事を思い出したからよろしくお願いね」
「え?お買い物は……」
確かにそれも大切だけど、今はそれよりもあっちの方が重要だ。お母さんには適当に誤魔化せば大丈夫でしょう。急ぎの買い物って訳でもないしね。
それよりも如月がもし仮に悪い奴なのであれば、香奈と仲良くさせる訳には行かない。私は彼の事を何も知らないし、この目で確かめておかないと。
「それは大丈夫よ。とにかくお願いね」
「まぁ、そう言う事なら分かったよ」
「ごめんね……」
そうして私は来た方向を逆走した。
◇
これは一体……
私が女の子が向かおうとしていた場所に来ると、如月が男性二人を気絶させてスマホをいじっていた。
あの男性二人がただ寝ているだけの訳もないだろうし、恐らく如月がやったのだろうと想像できる。
「如月……」
「み……涼風?」
私を見た如月は凄く驚いていた。
「これは?あんたがやったの?」
「そうだ」
「そう……」
私は急いで自分が持っている情報から整理した。
この男性二人はマスクをして顔を隠している事や、先ほどの少女の事、こんな場所に女性を連れて来いと指示していた事、それらからまともな奴らじゃないって事は容易に想像できる。
もしかしたらこの二人は……そう思うと凄く嫌悪感が押し寄せて来た。
でも如月がこの二人を倒したのであれば、如月は仲間ではなかったという事よね?
「それで、何があったのかしら?」
「もっと問い詰められると思ったが、意外と冷静なんだな?」
「私は何かおかしいと思って戻って来たのよ。理由位は聞くに決まってるわよ」
私としてもそのつもりで来てはいたけど、今は何があったのかを聞くのが優先ね。それに本当に善意のみで私たちを返してくれていたのであれば、責める訳にもいかないもの……
「そうか……こいつらは性犯罪者だ」
「は?それって……いや、でもそう考えると……」
私は余りにも衝撃的な発言に、大きな声で反応していた。
正直今さっきもそうなのかも……そう感じてはいたけど、はっきりそう聞くと酷く気持ち悪い。
もしそれが本当なのだとしたら、本当に最悪だ……
「そ、それって証拠はあるの?」
私は動揺しつつもそう聞いてみた。
「証拠か……あるにはあるけど見ない方が良い。まぁ、こっちの方は大丈夫かな」
如月はそう言って先ほど録音したらしい音声を再生した。
◇
「ほんと……なのね」
如月が嘘をついている可能性がない訳ではないけど、録音の日付は今さっきのもの。すなわち編集とかでもないって事だし、嘘ではないのでしょうね。
「あぁ」
「如月は分かっていてここにきたの?私たちが狙われるって事も……」
「半分半分かな……まぁ、こうなったからにはある程度は説明するか」
――そう言って如月は話し出した。
「そう……」
如月から来た内容は酷い物だった。
あり得ない。どうしてそんな非道な事が出来るのか?
男は本当にろくでもない奴らばかりだ!!!
その時の私は男への、嫌悪感そして恐怖感で頭がぐちゃぐちゃだった。
それから直ぐに警察が駆けつけて来た。
◇
――警察とのやり取りを終えて、私は如月と帰っていた。
先ほどまではかなり頭がぐしゃぐしゃだったけど、警察と話している間に私は、少し冷静になれていた。
「ねぇ……」
「どうした?」
「今までの被害者や、子供たちはどうなるのかしら……」
こんな事を聞いたって、如月に分かる訳もないって事は分かっている。
しかしそれでも被害者たちの事を思うと、聞かずにはいられなかった。
「さぁな……分からないけど、少なくとも子供たちは何も知らないで生きて行くんじゃないか?犯人たちも子供の顔なんて覚えていないだろうし、子供たちからしたらそっちの方が良いと思うけどな」
「そうね……子供達はその方が良いわね……でも被害者たちは……」
子供たちはそれが良いと思うけど、被害者たちはずっと心に傷を負う事になったんだ。あの糞男達は本当に許せない!!
「少しずつでも立ち直れればいいなとしか言いようがないな」
「そうよね……でもやっぱり男なんて!!!」
如月は間違った事なんて一度も言っていないのに、私の中ではやっぱり納得がいかない。
私は我慢できずにそう怒鳴ってしまった。如月に向けるには完全に不当な怒りだ。
男なんて最低だ。下心ばかりの猿。
でもそんな男が怖い……強がっていてもその事実は私の中からは消えない。
男は屑だ……私はずっとそう思っているけど、勿論全員ではないって事くらいは理解している……理解しているつもりだけど、どうしても男が嫌いだ。
そんな考えでループしてしまう。
私が男を嫌いに……そして怖くなったのはあの日、あの糞教師に襲われそうになった時だ。
信頼してた教師に裏切られた……襲われて無理矢理犯されそうになったあの日。
中学一年生だった私は本当に怖かった。
声をだしたくても恐怖から声が出なかった。
たまたま通りかかった保険の先生が助けてくれたからよかったものの、あのままだと私は……そう考えると今でも震えが止まらない。そして怒りが止まらない。
そして私は、元々男性との関りが億劫だったこともあり、それまで関わりにあった家族と幼馴染である翼以外は、それ以降全くかかわりを持たなくなり、それは今でも続いていた。
私の中で男は嫌悪そして畏怖の対象となってしまっていた。
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