13)再生魔法の使い方

「よし、ヤツの攻略法が見えてきたぞ。」


「ほんと?アイリスは何すればいい?」


俺達は再び光の膜手前まで戻って来ていた。

やはり、あいつもまた元の場所まで戻っているようだ。


「あぁ、ここからはちょっとアイリスに無理をさせてしまうかもしれない。」


今まで超鑑定を行うにあたって、アイリスやサル達を光の膜に入れなかったのは、別に庇っていたとかそんなんじゃない。

単純に、超鑑定は俺がしないと直接情報を見ることができないからだ。


超鑑定ができ、情報が揃い、攻略の可能性がいくつか出てきた以上、俺が直接戦闘に加わる必要もない。


それに、アイリスは不死だし攻撃無効だ、HPもないし。

俺が食らった、ただの斬撃なら問題ないと思う。


「平気だよ。なんとなくだけど、大丈夫だと思う。」


アイリスは2回目の斬撃をしっかり見てたんだろう。


「そうか、まぁやばそうだったら収納するからな。まずやる事は一つ、あいつに再生魔法をかけるんだ。」


「え、再生魔法?」


俺は自分の考えた仮説に基づき、アイリスにしてもらいたいことを言う。


「理由は今から説明する。まず、さっきの超鑑定の結果だ。」



名前:なし

種族:狂戦士ベルセルク

魔法:なし

スキル:心眼 斬撃拡張 縮地 範囲感知 狂化

耐性:なし

状態:精神汚染


<LV.>214

<HP>2021/2021

<MP>50/50

<力>1017

<耐久>831

<敏捷>1597

<魔法効率>38

<魔法防御>68



狂戦士ベルセルク、、、厨二心をくすぐられる名前だ。

同時に見た目に合ってない名前だとも思った。


それよりも着目すべきは、異常なレベルとステータス、そしてスキルだろう。

スキルは、もう一度目で見ないと、内容の超鑑定はできなそうだった。


ステータスだけ見ても、今の俺じゃ勝てない。


だからこその作戦だ。


「超鑑定した結果から、あいつの状態が精神汚染になってることがわかったんだ。そして、俺の出血状態は再生魔法で治った。」


「、、だから、あいつも再生魔法で治せる?」


「可能性があるってだけだけどな。まぁ今ある選択肢の中じゃ、労力や想定される結果から見て1番効率的だと思う。」


アイリスは対象とわりと離れていても再生魔法を俺に使うことができるようだった。


「わかった、やってみる。」


アイリスが、すぐに光の膜に向かおうとする。

慌てて声をかけた。


「アイリス、俺の作戦を疑ったりしないのか?アイリスが無事な保証もないんだぞ?」


アイリスが振り返る。


「リンが信じていることならアイリスも信じるよ。それに、今のアイリスにとってはリンが全てだから。」


笑顔でそう言った。


本当にどのタイミングでそこまで信用されたんだよ。

いくら考えてもわからない。


「ふっ、ありがとう。」


これが終わったら、アイリスをこんな危険に晒すようなことはしないようにしよう。

あれ、なんか死亡フラグっぽい、怖くなってきた。


「アイリス、気をつけてな!」


「大丈夫だよ!」


見るとアイリスはすでに光の膜の中に入ってしまっていた。



ドンッ



本日何回目かの、あの音が聞こえる。


初めて膜の外から見てみたが、すでに狂戦士ベルセルクなるものは、アイリスの左側へと剣を振りきって残心していた。


外から見ても何も見えないのか。



「、、はっ!」


違う、アイリスだ。

斬られたのか?

収納するか?


アイリスとベルセルクの動きを慎重に観察する。


すると、アイリスが先に動いた。

普通に振り返り、光の膜を通ってこちら側に戻ってきたのだ。


「リン!大丈夫だったよ!再生魔法もできた!」


まじか。


すげぇアイリス!!


俺は胴上げしたい衝動を必死に抑え、拳を握り、言葉を絞りだす。


「そ、そうか、よくやった。」


褒めるの下手なやつか!


落ち着け、深呼吸だ。


ふー、すぅー。


よし、大丈夫だ。


「怪我はないのか?斬られてたように見えたけど。」


アイリスに傷はない。


「うん、すり抜けた。」


すり抜けた?

物理無効ってなんなんだ、普通に触れるけど。

まぁ、無事ならいいか。


「ベルセルクの様子はどうだ?」


光の膜の向こうを見ると狂戦士ベルセルクは、元の場所に戻らず、光の膜のすぐそばで仁王立ちしたままになっている。


近くでよく見ると、持っている剣は片刃になっており、反っている。

おそらく刀に近く、刃紋からも日本刀のように思える。


「戦士のベルセルクが、日本刀持ってる、、、?」


和洋折衷ってことか。


予想外だが、期待を斜め上に裏切ってくる可能性がでてきた。


さらによく見ると、ベルセルクの服は、ボロッボロになってはいるが、どこか日本の袴と見えなくもないかんじだった。

これはもしかするともしかするんじゃないか?


しばらくベルセルクを無言で見つめる。



「うぅ、、ぐっ」


「「おぉっ!」」


喋った、、、ベルセルク喋れるのか?


「おい!俺の言葉がわかるか?」


夢中になりすぎて、素で喋りかけてしまっていた。


「う、、、某は、、、」


「「某!」」


アイリスと顔を見合わせる。


アイリスがわかってるのかは知らないが、これはもうほとんど確定と言ってもいいだろう。


狂戦士ベルセルクはおそらく、侍だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る