②:きみを待ってた。
その日の放課後は、
職員室に寄ったり
トイレ掃除の当番をしたり
写真部の部室に顔を出したり
私はわりと忙しかった。
明日から夏休みということもあって、
学校は午前中だけだったけど、結局1時間ほど残ってからようやく帰る支度に入った。
何ていう名前かわからない種類のセミの鳴き声がつんざく教室を出て、
お腹を空かせながら生徒玄関に続く階段を下りる。
危ないとは知っていながらも、スマホ片手にようやくたどり着いた酷暑の生徒玄関。
慣れた足取りで自分のロッカーにたどり着くと、その時不意に聞き覚えのある男子生徒に声をかけられた。
「あ、ねぇ竹原さん!」
「…?」
生徒玄関には、遠くの方から部活に励んでいる運動部の歓声やホイッスルの音が聞こえる。
その音に交じって聞こえた男子生徒の声。
気のせい?と思いつつ左を見ると、そこにはわりと近い距離で「北瀬くん」がニコニコと笑顔を浮かべながら立っていた。
「!?わ…っ」
まさかすぐそこにいたなんて思わなくて、私は短い悲鳴と共に思わずたじろぐ。
思いも寄らない人物の登場に、私は完全に「?」だらけ。
私と同じ高校二年生で、同じクラス。
元々特に仲が良いわけではないが、今月の席替えでたまたま隣同士になったせいか、最近やたらと私に構ってくるクラス皆の人気者。
北瀬くんは人見知りな私と違って、誰に対してもコミュニケーション能力が群を抜いている。
誰に話しかけるにしても、基本的に分け隔てが無い。
校内の不良グループにも同じように接するからか、私に対しても普通に接してきてくれる凄く良い人。
…なんだ、北瀬くんだったのか。
私が驚いたのを見ると、北瀬くんがそんな私に少し申し訳なさそうに言った。
「あ、ご、ごめん。驚かすつもりはなかったんだけど」
「い、いえ、私こそ…ビックリしてしまってごめんなさい」
「いや、竹原さんが悪いわけじゃ…」
「で、あの…な、なにか…?」
私がそう問いかけると、一方の北瀬くんは意味深に私から目を逸らす。
そんな北瀬くんの様子に未だ疑問を浮かべたままで待っていると、やがて意を決したように北瀬くんが言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます