第52章 決戦!終焉

  【読者の皆さまへ】

 お読みいただき、誠にありがとうございます。


 いよいよ完結が近づいています。

 文字数が多くなりますので、ゆっくり楽しんでいただきたく、更新スケジュールが以下に変更になります。


 ・第52章「8月8日」※本章

 ・第53章「8月9日」

 ・エピローグ「8月10日」


 ・この小説はカクヨム様の規約を遵守しておりますが、設定や世界観の関係上「一般向け」の内容ではありません。ご承知おきください。


 ・[残酷描写][暴力描写]があります。


 ・短編シリーズ始めました(2025年8月16日より)

https://kakuyomu.jp/works/16818792438682840548



 ・近況ノートに、主要キャラクターイラストや相関図を用意しています。イメージ補助にお役立てください。


 ※最新の相関図(近況ノート)※「キャラごとのキャッチフレーズ」付き!

 https://kakuyomu.jp/users/kyotobond007/news/16818792437582060358



[新作予告!]

https://kakuyomu.jp/users/kyotobond007/news/16818792437949246598

 是非、ご一読&感想をください!




 ※コンセプトアート総合目次

 https://kakuyomu.jp/users/kyotobond007/news/16818792437366460945


 ※アニメ化妄想キャスト(あくまで妄想です。キャラクターイメージの補助としてご活用ください)

 https://kakuyomu.jp/users/kyotobond007/news/16818792437646295056



 ・感想、考察、質問、意見は常に募集中です。ネガティブなものでも大歓迎です。


 以上、よろしくお願い致します。






【本編】

 地下研究所――音波兵器制御室は静かだった。

 激しい銃撃戦は終わり、静寂が場を支配していた。

 床には多くの戦意を失い、もしくは倒された兵士たちが伏せていた。

 恐怖の余韻で動けなくなっている科学者たちも床に座り込んでいた。

  

 そして無機質なアナウンスが流れる。

[繰り返します。音波兵器……生成中断……システム……ダウンします]。


 そして、真緒は静かに天美の元へ向かう。

 周囲の変化を敏感に感じ取り、天美に声をかけた。

「叔母さま……今度こそ……本当に……終わりですわ……」


 ひなたが真緒の下へ、駆け寄ってくる。

 京子もサブマシンガンを持ったまま、駆けつけてきた。

 真緒がヘッドフォンを外しているのを見て、二人も外した。

 

 遠くでのぞみとのぞみの声がした。

「トランペットも抑えたで!」

「もう大丈夫だ!」

 少し遠くに見えるのぞみと亮の床には、砕けたトランペットが佇んでいた。

 ヘッドフォンも外していた。

 そして、ひなたの下へ走ってくる。


 天美は拳銃を持つ手を下す。

 そして、呆然とした表情でつぶやきを漏らした。

「バカな……こんな……子供たちに……私の……」

 そして、動きは完全に止まった。

 天美は力なく立ち尽くす。


 恭二と柑奈の視線が天美達に向いた。

 サブマシンガンを天美たちに突き付ける。

「ファウンデーション首領!天美妙子こと麻倉妙子!観念しろ!」

「志牟螺達郎……ウィリアム・ステイサム……数々の容疑で……拘束します」


 ひなたは力強い視線を送った。

「こっちの勝ちよ……理事長先生……志牟螺先生……ウィリアム先生……」

 その横には"D"が無垢な笑顔を浮かべていた。



 一同が天美達の前にやってくる。

 真緒は落ち着いた表情で話す。

「叔母さま……もう……」

 

 天美は乱暴にヘッドフォンを外して、床に叩きつけた。

 そして、大声を上げながら、端末を操作しているウィリアムのヘッドフォンをひったくるように外した。

「ウィリアム!どうなってる!速くせんか!」

「ボス……ダメです……クローンの演奏ヲ、止メラレテハ、何モデキマセーン」

 天美の怒りが最高潮に達した。

「役立たずがーっ!」

 志牟螺が身体をさすりながら、ゆっくりとヘッドフォンを外し、天美に視線を向けた。

「ボス……ここは……」

「うるさい!うるさい!黙れーっ!」

 真緒が鋭い声を上げる。

「叔母さま!見苦しいですわ!もうやめてください!」

 天美の動きが止まった。

「……真緒……」


 ひなたの共感力が、不思議な感覚を生んだ。

「麻倉さん……そうまでして……」


 一同の視線には真緒と天美が視線を合わせているのが見えた。


 恭二と柑奈はその間に、志牟螺とウィリアムを後ろ手に縛り上げ、床に伏せさせる。

「捕まえたぞ」

「あとは天美ね……京子お姉ちゃん!狙いを外さないで!」

「わかってる!柑奈!」

 京子の銃口は天美に向いていた。

 だが、今は緊張しながらも穏やかな顔をしていた。


 ひなたの共感力がまた心を揺り動かす。

(京子……やっと……家族の絆を……取り戻したのね……)


 亮がひなたに問いかける。

「京子ちゃん……顔つきが違うな。凄いぜ」

「……そうだね……」


 のぞみは息を飲んでいた。

「真緒……どないすんねや?」


 真緒は天美に問いかけた。

「罪を……償ってください。私には……麻倉家としての責任があります。」

 天美が訝し気な視線を真緒に向けた。

「ふっ……結局はお前も……父と同じか……」


 真緒は首を横に振る。

「……叔母さまは……私の家族だからです。」

 天美の目が見開く。

「……なに……?」


 真緒の目が力強さを帯びた。

「叔母さまが何者であろうと……私には……優しい叔母さまです。あなたは……私に知る喜びを与えてくれた……だから……」

 

 天美が遠い目して、ため息を漏らした。

「……何を今更……もう……帰るところなど……ない」


 すると、研究所内が騒がしくなってきた。

 大きな足音が遠くから響いてきた。


 途端に恭二と柑奈のスマホが音を立てる。


 ――ブルルルル……。

 

「通信が回復したぞ!」

「やったね!」

 そして、二人はすぐに応じた。

「こちらUK恭二!土師恭二だ!天美妙子……こと、麻倉妙子を確保した!」

「本部?こちらはAK柑奈!志牟螺とウィリアムも確保しました!」


 通信の奥からくぐもった声が聞こえる。

 老齢の男の声だ。

「わかった。今そちらに向かっている。詳しくは後で聞く。」

 通信が切れた。


 真緒と天美の対峙は続いていた。

 京子は天美に照準を合わせている。

 一同は息を飲んだ。


 ひなたは内心で思う。

(どうするの……?)


 そこに大人数の特殊部隊たちがなだれ込んできた。

 サブマシンガンと軍服。ヘルメットにナイトビジョンゴーグルも装備していた。


 そして、その兵士たちの真ん中から、一人の長身の男が現れた。

 少し金髪が混じっている老齢の男性だった。

NPSO国家保安機構現場司令官。ローレンス足利だ!徳川総裁の命により……麻倉妙子!貴様を拘束する!」

 ひなたたちを横目に特殊部隊たちが、天美へ殺到する。


 ――バタバタバタ……。


 真緒は戸惑いの声を上げる。

 天美に近づこうとする特殊部隊たちに振り返る。

 そして、必死に両手を広げて制止する。

「待ってください!まだ……」


 すると、天美が素早く真緒を羽交い絞めにしたのだ。そして、持っていた拳銃を振り上げる。

「近づくな!撃つぞ!」


 一同の動きが固まる。

 まさに一触即発だ。


 真緒のこめかみに銃口が当たる。

 彼女は困惑の声をあげた。

「えっ……叔母さま……」


 京子は天美に照準を合わせたまま動けなかった。

 だが、恭二は黙って京子の肩に手を置いた。

「いいんだ。無理はしなくていい。どうせ奴はもう終わりだ」

 柑奈もうなづいて言う。

「そうね。後は任せましょう」

「……うん」

 京子はサブマシンガンの銃口をゆっくりと下に下した。

 三人の顔は穏やかだった。


 ひなたたちが叫ぶ。

「麻倉さん!理事長先生!」

 天美は真緒を羽交い絞めにしながら、真緒のこめかみに銃口を突き付け続ける。

「……やめてください……罪を……優しくて……賢い……私の……叔母さま……」


 特殊部隊たちがサブマシンガンを一斉に構える。

 空気が緊迫する。


 ひなたの共感力が、またざわめく。

(理事長先生……)

 だが、ひなたは敏感に感じ取った。


「ふ……」

 天美の拳銃を持つ手が動き、悲し気な表情とつぶやきを漏らした。

「……真緒……ありがとう……だが……もう……私には……何もない……」


 天美の光景が、一瞬で、ひなたの視界と聴覚を支配した。

 彼女は絶叫した。

「まさか……やめてーっ!」


 ――バーン!


 一同は目を閉じた。


 ――ドサッ!


 そして、ゆっくりと目を開ける。


 すると、そこには自らのこめかみを撃ちぬいた天美が血を流して倒れていた。

 床に血が流れ続ける。

 真緒の顔が悲し気に変わる。

「叔母さまーっ!」

 真緒は天美の身体に突っ伏して、泣き崩れた。


 ひなたの共感力がざわついた。

 咄嗟にポケットからメディカルキットを取り出す。

「これを……」

 残り1本のペン型アドレナリン注射……それを使おうと、天美に駆け寄ろうとした。


 ――だが……ひなたの肩に、ローレンスが手を置いた。


 ひなたは振り返る。

「そんな……」

 ローレンスは目を閉じ、首を横に振った。

「……」

 ひなたの目にも涙が溢れた。


 ――ヒック……ヒック……ヒック……。 

 

 ひなたはうなだれ、ペン型注射が手から床に滑り落ちた。


 ――パタッ……。


 ローレンスはその様子を見てつぶやいた。

「本当に……終わって……しまったのか……。」


 沈黙と静寂が地下研究所を包んだ。

 真緒の泣きじゃくる声。

 床に横たわる天美。


 それを取り囲んだ一同。


 ひなたは悲し気な顔でつぶやいた。

(理事長先生も……優れていても……ただの人間だった……私と同じように……)


 あかつき学園の地下研究所の事件はこれで終わった。

 今はただ、その災禍が消えた事をひなたたちは悲しみと共に噛みしめていた。

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