第20章 残酷な真実と図書館
【読者の皆さまへ】
お読みいただき、誠にありがとうございます。
・この小説はカクヨム様の規約を遵守しておりますが、設定や世界観の関係上「一般向け」の内容ではありません。ご承知おきください。
・[残酷描写][暴力描写]があります。
・短編シリーズ始めました(2025年8月16日より)
https://kakuyomu.jp/works/16818792438682840548
・近況ノートに、主要キャラクターイラストや相関図を用意しています。イメージ補助にお役立てください。
※最新の相関図(近況ノート)※「キャラごとのキャッチフレーズ」付き!
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※コンセプトアート
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※コンセプトアート総合目次
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・感想、考察、質問、意見は常に募集中です。ネガティブなものでも大歓迎です。
以上、よろしくお願い致します。
【本編】
私立あかつき学園の図書館。
放課後を迎え、部活も終わった学園。
生徒たちもまばらで、陽は西に傾いていた。
埃の静寂が書架を包む。
ひなた、京子、亮の三人の足は、図書館の扉の前に立っていた。
ひなたが二人に告げる。
「準備はいい?」
「……だい……じょ……ぶ……」
「何があるか分からねえ……慎重にな……」
三人がここにいるのは、麻倉真緒に佑梨(D)の謎を相談するためだ。
ひなたの共感力が、裏庭の佑梨……いやDの怯えを呼び戻す。
「D…それに……ファウンデーション? 警察も……信じられない……私たちで……だからここに……」
すると、京子が入り口に立てかけられた看板に視線をやる。
「……清掃中?……ウィザードクリーニングサービス?」
亮が疑問を呈した。
「ちょっと早すぎねえか?」
ひなたの共感力がざわついた。
(こんな時間に……?もしかして……何かあるの……?それにウィザードクリーニングサービス……?)
ひなたが決意を表明する。
「きっと……何かある。行こうか……」
京子と亮はうなづき、静かに扉を開けた。
――スッ……。
「やけに、静かだな……」
「誰も……いな……い?」
「図書館の主みたいだから……どこかに……」
三人は周囲を見回す。
ひなたが声を上げる。
「んっ!?何が聞こえるわ!」
目の床が軋む中、奥から声が漏れる。
――「……麻……ファ……ご協……を……」
「よく聞こえないわね……麻倉さん以外に……誰かいる?」
ひなたが囁く。亮がそれに応える。
「何話してるんだ?」
「……隠れて……聞いて……みよう……」
京子の言葉は震えていた。
三人は慎重に歩を進める。
ゆっくり、ただゆっくりと……。
「ここなら、隠れられるわ」
「話も聞こえるな!ナイス!ひなた!」
「耳を……すませば……ね」
三人は本棚の影に身を寄せる。書架の隙間から4人の姿が見えていた。
「あれは、麻倉さんね……噂通りの人ね……」
白く細い身体に黒縁メガネ。
黒髪の長髪に白のカチューシャを身につけていた。
制服の着こなしも無難そのものだ。
「あれは……陸上部の……延藤さんね……有名人だね」
「県大会で優勝したんだってな、10000mで34:20:02だってさ。バケモンだよ。」
「へえ……すごいね」
延藤のぞみは二年生。陸上部のエース女子だ。
明るい色のサイドポニーテールが揺れる。
そして、ひなたはもう一人の姿を見て驚愕した。
「柚希さん?なぜ……?」
亮が訝しげに尋ねる。
「知ってるのか?」
「転校生よ……私のクラスの……」
京子も不思議そうな顔を浮かべた。
「あと……一人は?」
それは、見慣れない男だった。
黒い清掃員姿をしていた。
黒髪のソフトリーゼントにサングラス。
この場所で一番違和感を醸し出していた。
亮が言う。
「少し背が高いな……俺より少し……」
ひなたが少しむくれて言う。
「大差ないように思うけど?」
「いや……サッカーの世界じゃ少しの身長差もプレイに……」
「どうせ、チンチクリンよ!私は!」
亮がしゃがみこみ、ひなたに顔を近づける。
「そんなこと言ってねえだろ!」
京子が冷静につぶやく。
「聞こえる……よ……?」
「そうだった……」
「危ねえ……」
ひなたと亮は慌てて口を押さえた。
亮が四人を覗き込みながら言う。
「気づいてねえみたいだな……良かった」
ひなたは少し目を凝らす。
「……「ウィザードクリーニングサービス:土橋恭二」確か……校内で一度見た人……ただの清掃員じゃないの?」
京子もひなたにうなづく。
「……ウィザードクリーニングサービス……土橋恭二」
京子の目が一瞬だけ、細く鋭くなった。
だが、何も言わず、再び静かに息を呑んだ。
亮がひなたに感嘆の表情を向ける。
「ひなた?よく見えるな?」
ひなたの表情がまたむくれる。
「……亮が明智さんや香菜子ちゃんを見るときくらい、真剣にね。」
「まだ言うのかよ!あれは……」
京子が再びつぶやいた。
「声……」
ひなたと亮が口を押さえた。
「ごめん……」
図書館のテーブルでは四人が向かい合っていた。
柑奈がニヤリと笑う。
「学園のネットワーク、侵入成功よ。間違いない……ここはファウンデーションの本拠地よ」
土橋が頷いた。
「ありがとう、柑奈。潜入お疲れ」
「まあ、ちょろいわ!学園の端末を抑えるのは簡単!
「お前の入職は、NPSOのサーバーをハッキングしたことだったな……それと、ゲームのアカウントは?」
「ちゃんと調査用よ。身分隠蔽はバッチリ。」
ひなたの心臓が跳ねる。
「柚希さん……何者なの?それにあの男は……。」
京子も信じられないと言った表情を浮かべる。
「……学園……本拠地……?」
亮も同じ気持ちだった。
「マジか……」
土橋が真緒に視線を向け、おもむろに話し始める。
「麻倉さん、NPSOへの協力感謝する。しかし……」
そこにのぞみの言葉が割り込んだ。
「昨夜のメッセ……病気の事かと思うてここにきたら驚きやわ……」
そして驚きの視線を真緒に投げ、言葉を続ける。
「けど……真緒?ホンマにええんかいな? 大事な叔母さんなんやろ?」
真緒は少し視線を落としたが、すぐに土橋に向き直った。
「私は……叔母さまに贖罪してほしいだけ。数々の過ちを……」
「確かに、麻倉妙子は世界の諜報機関がマークしている。罪状も数え切れん。」
柑奈が言葉をつなぐ。
「外務省の国際危険人物リストにも、トップクラスで記載されてるのよ。」
土橋の首が少し天井を向いたが、すぐに真緒に向き直る。
「それを我らNPSOは……長年……追っている」
ひなたが息を飲んだ。
「麻倉さんの叔母さんが…ファウンデーションの首領!?」
亮と京子も同じく息を飲んだ。
「妙子って…誰だよ!」
ひなたの心に疑念が走る。
(麻倉さん……延藤さん……柚希さん……それにあの男……一体……)
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