第2話 女の子同士

退屈な日々は変わっていく。

訪れたその毎日は新しいものだった。

「はるか、おはよう」

「うん、おはよう」

挨拶を交わし、朝花と昇降口で話す。

「はるか、今日放課後会おう。一緒に絵を描いてみない?」

「いいの? 私なんかにできるかなぁ」

「大丈夫だよ、始めはみんなそうさ」

「う〜〜ん、わかった。じゃあ、また放課後」

「うん、ありがとう」

二つに別れて、それぞれの教室に入っていく。

私も自分の教室へ入ろうとすると、背後から声をかけられた。

クラスメイトの女の子だ。

「はるか、あなた好きな男の子居たの?」

「え?」

「ほら、さっき誰かと仲良く話してたじゃん。あれは誰なの?」

「えっと……。朝花っていう女の子だけど……………………」

「そっか、友達?」

「えっ、えっと……その……」

「まさか女の子同士で、てことはないよね?」

わざと嫌味ったらしく、その女の子は笑う。

はるかの胸にちくりと痛みが刺さった気がして。 でもそれに気づかれないように笑って返した。

「ううん、ただの友達だよ」

「……ふぅ〜〜ん」

女子が眉をひそめる。

はるかはそのまま通り過ぎて席に座る。

女の子同士で付き合うのって……変……?

はるかの微かな疑問は続きながら、授業は過ぎていき休み時間になる。

教室から出た時、朝花がはるかを呼んだ。

「浮かない顔だけれど……何かあった?」

少し気にかけてくれた朝花。

はるかは誰も居ない屋上に行って、そこで二人っきりで話すことにした。

「クラスの女の子がね……私と朝花のことに関してちょっと言ってきてさ……。その……やっぱり、変なのかな? 私、女の子が好きになったけどさ………………。やっぱり変な子なのかな?」

苦笑いを浮かべながらはるかはたどたどしく話す。

朝花はそんな彼女を励ますように、ぎゅっと抱きしめた。

「えっ!? ちょっ、朝花!?」

びっくりするはるかに、そっと優しく語りかけるように。

朝花は言ってくれた。

「変じゃない……。女の子同士だとか関係ないよ。男の子を好きになれって法律があるわけでもないし、はるかははるかの好きなように恋をしていい。変じゃない、ボク達は男女の恋人同士と同じさ」

「そうかな……?」

「そうさ。安心しなよ。好きだって思いは、本物なんでしょ?」

「…………うん」

「なら、それでいいさ」

はるかの胸に刺さっていた、あの痛みが和らいだ。

ただ朝花の言葉に、救われた気持ちがした。

はるかは頷いて、抱きしめ返す。

「ありがとう、朝花」

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