顔合わせ
オーストラリア某所。登山道具が所狭しと壁にかけられたロッジの中、
暖炉がパチパチと音を立てて部屋を温めている。
白髪の老年男性を中心として、6名がその場に集まっている。
いずれも、色とりどりのウェアを来た登山家たちだ。
「皆、集まってくれてありがとう。僕はケヴィン・キ ングストンだ。
イニシャルをとってK2と呼んでくれると嬉しい。もちろん、
イニシャルに恥じないよう、K2は単独で登頂している。今回、
パーティのリーダーを務めることとなった。よろしく頼むよ。
今回のパーティはここに集まった6名だ。
初対面の者も多いだろう。まずは自己紹介をしてくれ」
「月見桜です。20歳です。日本人で登山家ですよろしくお願いします!」
「花奈太郎、17歳! 性別は男日本人のおとこの娘です! なんか色々できます」
「次は私だね!私、金糸雀氷翠。今回は第一次登山隊の
メンバーだった友人を探しにきました〜。よろしくね〜!!」
目つきは鋭いが、容姿端麗と言っていい女性。セミロングの黒髪に利発的な表情。
「穂高梓です。日本生まれ。医者をしてます。今回はパーティの医療スタッフ
として参加させてもらいます。職業登山家ってわけじゃないから、皆さんのように
先鋭登山の実績があるわけじゃないけど、それなりに山は登ってるつもり」
ケヴィンが肩に手を当てながら補足する。
「彼女は僕が個人的に声をかけたんだ。信頼していい。
そこいらの自称・登山家よりよっぽど登れるよ。国境なき医師団で
紛争地帯を走り回りながら働く傍ら、休日にはいろんな山をやってる。
技術も知識も十分だ。 信頼していい」
◇
「自称登山家、ねぇ…そもそも、登山家ですらない人が」
「気にすんな、私だって許可したのを後悔している」
「草」
「まあなんとかなるでしょ!」
「なるわけないんよなぁ…」
◆
若く、軽薄そうな表情の男。見るものが見れば、
身にまとっている衣服や装備がいずれも高価なメーカーのものであることが分かる。
「コージーだ。出身はオーストラリア。よろしく」
「彼は今回の登山隊のスポンサーとなってくれた、オスコー財団の御曹司だ」
「御曹司だなんて言い方、やめてくれよ。俺はいわゆる金持ちの
ボンボンとは違う。自らの足で、自然に抗う一流のアルピニストだ。
今回の登山だって、親父がカネを出さなかったとしても俺は登っていたさ。
いいか、俺は、俺の力で登るんだ。オスコー家の力で登るんじゃない」
「......だそうだ。よろしく頼むよ」
◇
「行けそう?」
「無理そう」
「ダメそう」
「コージー、期待されてないみたいですよ? キーパーさん」
「まあ御曹司だから…」
「お荷物が2人…っと」
「荷物呼ばわりやめて!?」
「「「あははははは!」」」
「お前ら…」
◆
「さて、概要を説明しよう。御存知の通り、この科学の時代においても、
かの南極大陸は謎のヴェー ルに包まれた土地だ。そこについ先日、
驚くべき山脈 が発見された。誰が呼び始めたか知らないが、“狂気山脈”。
最高峰の推定標高は1万300mにもなるという。
エヴェレストを1,000m以上も超える、世界最高峰さ」
「ゴクリ…」
「先日、大規模な登山隊が組まれた。名だたる登山家たちが参加していた。
しかし、彼らは失敗した。帰還者0だ。そのあまりに大きな失敗を前に、
各国は尻ごんでいる。だが、僕たちは登山家だ。
今までにない大きな山が姿を表した。臆している場合じゃない。
何が起こるかわからない、危険な挑戦になる。だが、夢がある。そうだろう?」
「ワクワク(っ ॑꒳ ॑c)」
「「………」」
「ごめんなさい」
「南極上陸の許可や、そこからの移動手段などはオスコー財団が手配してくれた。
狂気山脈周辺は気候条件が厳しく、安全上の観点から航空機が飛ばせない。だから、南極上陸後、南極調査隊の犬ぞりを借りて山脈の麓、おおよそ 4,000 m地点まで
移動する。そこから、標高差 6,000 mの登山だ。目標は、山脈最高峰ただひとつ。航空写真から割り出された地形図を元に、最も登頂確率の高いルートを
割り出した。第一次登山隊が通ったのと、恐らくほぼ 同じルートだ。
何か質問は?」
「特にありません、、、自称登山家が2名いる事以外は(小声)」
「私もありません」
「質問もないようだし、作戦を立てよう。主に装備に関してだ」
◇
「探索者の装備を2種類から選んでもらいます。どちらを選んでも、
探索中に行う判定に必要な装備は準備されているものとします。
以下、それぞれの装備の概要です」
【A】Caravan(極地法)
長期の登山に耐えうる十分な装備を運んでいくスタイル。
装備の恩恵と精神的な安心感を得ることができるが、動きは鈍くなる。
デポすることでBへ切り替え可能。
●ボーナス:医学、応急手当、精神分析 +10%
医学、応急手当での回復量×2
●食糧: 30 日分
【B】Light & Fast(アルパイン・スタイル)
なるべく装備を軽量化するスタイル。素早く行動ができ、
体力消耗を抑えることができるが、装備による様々な恩恵を得ることが難しくなる。
●ボーナス:登山行動で消費する耐久力 -1
登攀、ナビゲート、跳躍、回避 +5%
●食糧: 14 日分
「……A一択では?」
「Aの方が良さそう」
「逆張りのBで」
「これ装備どっちかで統一なので多数決でAで大丈夫ですか?」
「「大丈夫です」」
◆
「自分はAで行きたいと思います。何が起こるかわからない
未踏の地なので安易に装備を軽量化するのは危険かと」
「私も金糸雀さんと同じ意見です」
「そうか、わかった。装備はAで行こう」
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ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
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次回は南極上陸です!
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