顔合わせ


 オーストラリア某所。登山道具が所狭しと壁にかけられたロッジの中、

暖炉がパチパチと音を立てて部屋を温めている。

白髪の老年男性を中心として、6名がその場に集まっている。

いずれも、色とりどりのウェアを来た登山家たちだ。


「皆、集まってくれてありがとう。僕はケヴィン・キ ングストンだ。

イニシャルをとってK2と呼んでくれると嬉しい。もちろん、

イニシャルに恥じないよう、K2は単独で登頂している。今回、

パーティのリーダーを務めることとなった。よろしく頼むよ。

今回のパーティはここに集まった6名だ。

初対面の者も多いだろう。まずは自己紹介をしてくれ」


「月見桜です。20歳です。日本人で登山家ですよろしくお願いします!」

「花奈太郎、17歳! 性別は男日本人のおとこの娘です! なんか色々できます」

「次は私だね!私、金糸雀氷翠。今回は第一次登山隊の

メンバーだった友人を探しにきました〜。よろしくね〜!!」


 目つきは鋭いが、容姿端麗と言っていい女性。セミロングの黒髪に利発的な表情。


「穂高梓です。日本生まれ。医者をしてます。今回はパーティの医療スタッフ

として参加させてもらいます。職業登山家ってわけじゃないから、皆さんのように

先鋭登山の実績があるわけじゃないけど、それなりに山は登ってるつもり」


 ケヴィンが肩に手を当てながら補足する。


「彼女は僕が個人的に声をかけたんだ。信頼していい。

そこいらの自称・登山家よりよっぽど登れるよ。国境なき医師団で

紛争地帯を走り回りながら働く傍ら、休日にはいろんな山をやってる。

技術も知識も十分だ。 信頼していい」


「自称登山家、ねぇ…そもそも、登山家ですらない人が」

「気にすんな、私だって許可したのを後悔している」

「草」

「まあなんとかなるでしょ!」

「なるわけないんよなぁ…」


若く、軽薄そうな表情の男。見るものが見れば、

身にまとっている衣服や装備がいずれも高価なメーカーのものであることが分かる。


「コージーだ。出身はオーストラリア。よろしく」

「彼は今回の登山隊のスポンサーとなってくれた、オスコー財団の御曹司だ」

「御曹司だなんて言い方、やめてくれよ。俺はいわゆる金持ちの

ボンボンとは違う。自らの足で、自然に抗う一流のアルピニストだ。

今回の登山だって、親父がカネを出さなかったとしても俺は登っていたさ。

いいか、俺は、俺の力で登るんだ。オスコー家の力で登るんじゃない」

「......だそうだ。よろしく頼むよ」


「行けそう?」

「無理そう」

「ダメそう」

「コージー、期待されてないみたいですよ? キーパーさん」

「まあ御曹司だから…」

「お荷物が2人…っと」

「荷物呼ばわりやめて!?」

「「「あははははは!」」」

「お前ら…」


「さて、概要を説明しよう。御存知の通り、この科学の時代においても、

かの南極大陸は謎のヴェー ルに包まれた土地だ。そこについ先日、

驚くべき山脈 が発見された。誰が呼び始めたか知らないが、“狂気山脈”。

最高峰の推定標高は1万300mにもなるという。

エヴェレストを1,000m以上も超える、世界最高峰さ」

「ゴクリ…」

「先日、大規模な登山隊が組まれた。名だたる登山家たちが参加していた。

しかし、彼らは失敗した。帰還者0だ。そのあまりに大きな失敗を前に、

各国は尻ごんでいる。だが、僕たちは登山家だ。

今までにない大きな山が姿を表した。臆している場合じゃない。

何が起こるかわからない、危険な挑戦になる。だが、夢がある。そうだろう?」

「ワクワク(っ ॑꒳ ॑c)」

「「………」」

「ごめんなさい」

「南極上陸の許可や、そこからの移動手段などはオスコー財団が手配してくれた。

狂気山脈周辺は気候条件が厳しく、安全上の観点から航空機が飛ばせない。だから、南極上陸後、南極調査隊の犬ぞりを借りて山脈の麓、おおよそ 4,000 m地点まで

移動する。そこから、標高差 6,000 mの登山だ。目標は、山脈最高峰ただひとつ。航空写真から割り出された地形図を元に、最も登頂確率の高いルートを

割り出した。第一次登山隊が通ったのと、恐らくほぼ 同じルートだ。

何か質問は?」

「特にありません、、、自称登山家が2名いる事以外は(小声)」

「私もありません」

「質問もないようだし、作戦を立てよう。主に装備に関してだ」


「探索者の装備を2種類から選んでもらいます。どちらを選んでも、

探索中に行う判定に必要な装備は準備されているものとします。

以下、それぞれの装備の概要です」


【A】Caravan(極地法)

長期の登山に耐えうる十分な装備を運んでいくスタイル。

装備の恩恵と精神的な安心感を得ることができるが、動きは鈍くなる。

デポすることでBへ切り替え可能。

●ボーナス:医学、応急手当、精神分析 +10%

医学、応急手当での回復量×2

●食糧: 30 日分


【B】Light & Fast(アルパイン・スタイル)

なるべく装備を軽量化するスタイル。素早く行動ができ、

体力消耗を抑えることができるが、装備による様々な恩恵を得ることが難しくなる。

●ボーナス:登山行動で消費する耐久力 -1

登攀、ナビゲート、跳躍、回避 +5%

●食糧: 14 日分


「……A一択では?」

「Aの方が良さそう」

「逆張りのBで」

「これ装備どっちかで統一なので多数決でAで大丈夫ですか?」

「「大丈夫です」」


「自分はAで行きたいと思います。何が起こるかわからない

未踏の地なので安易に装備を軽量化するのは危険かと」

「私も金糸雀さんと同じ意見です」

「そうか、わかった。装備はAで行こう」




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次回は南極上陸です!

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