たたかう聖女さま

桜花オルガ

第1話 私は聖女らしい

「本当にっ……ほんとぉ~~~にゴメンナサイ!!」



 私の名前は綾部マリア(あべまりあ)。黒髪ロング黒目、身長162cmの16歳。生粋の日本人の女の子だ。


 そんな私の前でいま一人?の女性が、見事な土下座を披露している。


 綺麗な金髪で、歳は20代半ばほどだろうか。


 吸い込まれるような碧色の瞳が美しく、身に纏った羽衣のような物がふよふよと浮いているのが印象的。



 そして土下座をしている女性の横で、困ったような雰囲気で立ち尽くす一人?の男性。


 声で男性だとは分かるのだが、なぜかその姿はぼんやりとしているような、ブレて見えるような感じで、ハッキリとした見た目が分からない。


 この女性が必死に謝っているのは、どうやらこの男性に対しての緊張や、怒られたくないといった感情が強いからに見える。


 周りに建物等は一切ない、やや眩しい白い空間。


 この二人の存在が何なのかある程度察しつつ、私は小さな溜息を吐いてから声をかけた。



「あの、私忙しいので詳しく端的に説明をお願いします」



 余計なことは良いからさっさと要点をまとめて話せ!という事だ。


 その女性が言うには、私の目の前にいる男性と女性はそれぞれ神様。男性の方は女性の上司のようなものらしい。


 この女性、女神の名前はカリナリーベル。


 科学的な発展は地球よりだいぶ劣るが、【魔法】が存在するソウラリアと呼ばれる、こちらとは別次元にある星を担当している女神なんだってさ。


 で、ソウラリアにあるグライド大陸という場所では、常に三人の聖女が生まれるらしいのだが、この女神カリナリーベルが盛大なヤラカシをしてしまい、聖女として生まれるはずだった私の魂を地球に送っちゃった……らしい。


 聖女には特別なチカラがいくつかあり、その内の一つが【豊穣】。これは枯れた大地でも即座に豊かな土壌へと変貌させるチカラ。


 グライド大陸は何百年もの間、その時代に存在する三人の聖女がこの【豊穣】のチカラで人々の飢えを凌いできたとのこと。


 なるほど……つまりこれは異世界転生……いや、私は死んだわけじゃないから異世界転移か。



「私にそのソウラリアという世界へ行って、グライド大陸で【豊穣】のチカラを行使しろってことで良いですか?」


「それがそのぉ……マリアちゃんは【豊穣】のチカラ……使えないんだよね……」


「え?」


 女神カリナリーベルが大きく息を吸い込む。


 あ、こいつ長文喋り倒す気だな……



「……【豊穣】のチカラって聖女だけがもつ【聖魔力】っていう特別な魔力を使うのね。でね、マリアちゃんが地球で暮らしている中で、魔力を体外に発することが出来ない地球という環境に、マリアちゃんの中の聖魔力がハッスルしちゃって……『発する』だけに……あ、うん今のは本当にごめんなさいすみませんでした!それでね、その鬱憤晴らしかのようにマリアちゃんの他の部分に、体内にある聖魔力を全部注ぎ込んじゃったんだよね。それは多分自分でも分かるよね?」



 確かに分かる。


 自分自身でも地球での私は【超規格外の存在】だと理解している。


 ただこの説明だけだと疑問が残る。



「自分が地球人としてはおかしい事には、子供の頃から気が付いていましたよ。でもカリナリー……長いからカリナって呼ばせてもらいますね。カリナの言う通りなら、【豊穣】のチカラを使えない私がグライド大陸って所に行く必要あるんですか?」



 私達のやりとりに、空気のように立ち尽くしている男性の神様もやれやれといった雰囲気。


 まぁ正直、この突拍子もない状況に対して私は特に驚くでもなく、さっさと日常に戻してくれないかなぁと思うばかりだ。なにせ私はとても忙しい。


 でもカリナの眼には強い光が灯っている……どうやらまだ話は続くようだ。



「いえ!マリアちゃんには【豊穣】のチカラが無くても、地球で得た知識があるよね!知恵と知識と魔法が交わった時、数百年間ほぼ停滞していたと言っていいグライド大陸、ひいてはソウラリアに大きな発展が望めると思うの!私は一応ソウラリアを担当している女神だけど、神が気軽にポンポン手を貸す訳にはいかないんだよね……あ、もうこの星ダメだわって思ったらすぐに破壊するんだけどね!あはは」


「……マリアさん、今回の話は完全にカリナリーベルに非がある事であり、弁明のしようがない。ですがどの時代でも三人の聖女が存在していたグライド大陸は、今も混乱の最中にある。本当に申し訳ないのだが、今後の人生はあちらの世界で暮らしてくれないだろうか?もちろん地球の神には私から伝えておこう……めちゃくちゃ怒ると思うけど……」



 ようやく口を開いた男性の神様は、物凄く疲れたような声色だ。


 うーん。地球より発展していない星に、私が手を入れられるのはちょっと楽しそう。


 魔法がどこまで便利なものなのか分からないけど、地球で暮らしている中では絶対に触れることの出来ない、知識や経験が得られるのは確実だろう。


 ほんの数秒の思案の後、私は答えを口から紡ぎ出す。



「お話は理解しました。未知の世界は大変興味深いですね。今回のお話……お断りさせていただきます」



「「えええええええええええ!?」」



真っ白な空間の中で、二人の神様の声が鳴り響くのであった。

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