第16話:ライブ参戦、ロックな私リップ
「今日は、絶対推しバンドに最高の声援を届ける!
……べ、別に、あんたらのためちゃうからな!」
鏡の前で、響はぶっきらぼうにつぶやいた。
中学三年生。
今日は、大好きなロックバンドのライブの日だ。
響は、ロックが大好きな女の子。
普段はクールを装っているけど、
ライブのことになると、
誰よりも熱い情熱を秘めている。
でも、素直に気持ちを出すのは苦手で、
いつもツンツンしてしまう。
今日は、最高に盛り上がって、
推しバンドに最高の声援を届けたい!
そう思っていた。
そんな響の秘密のアイテムは、
黒のパッケージに入ったリップクリーム。
塗ると、唇が保護されるだけでなく、
なんだかロックな気分が高まる気がするのだ。
「これがあれば、きっと大丈夫。」
響は、リップがくれる
「おまじない」のような力で、
やる気を高めていた。
リップを唇に塗ると、
気分はまるでロックスター。
これでライブもバッチリだ。
そう確信して、響は家を出た。
ライブハウスへ向かう電車の中、
響はヘッドホンで、推しバンドの曲を聴き、
テンションを上げていた。
ライブハウスに着いて、
チケットを渡そうとした時だった。
「あれ?チケットがない…!」
響は、カバンの中を何度も探したけれど、
チケットが見つからない。
「うそでしょ!?」
響は顔を真っ青にした。
まさかこんなハプニングが起きるなんて!
心臓がバクバクする。
こんな時、リップのおまじないなんて、
ちっとも役に立たない気がした。
「もしかして、受付で忘れてきたのかも…。」
響は、慌ててライブハウスの受付に駆け戻った。
すると、受付の人が、響の顔を見て、
「もしかして、黒崎さん?」
と声をかけてくれた。
「はい!」
「これ、さっき忘れ物で届いてたよ!」
そう言って、チケットを渡してくれたのだ。
「あ、ありがとうございます…!」
響は、ほっと胸をなでおろした。
ギリギリで間に合ったけれど、
焦って汗だくになってしまった。
リップは塗ったままだったけれど、
汗で少し崩れてしまった。
でも、リップの力で高まった熱量が、
ライブの盛り上がりに貢献した気がする。
ライブが始まると、響は夢中で声援を送った。
「うおおおおお!」
ツンツンしていた普段の響からは想像できない、
最高の盛り上がりを見せた。
ライブが終わって、家に帰ってから、響は
「べ、別に、あんな必死になったん、
ただの運動不足やし!」と、ツンデレ発言。
リップがくれたのは、
内なる情熱の解放だったと気づく。
家に帰って、お母さんに
ライブの興奮と、チケットを忘れたハプニングを話した。
お母さんは、うんうんと頷いてくれた。
「響、ライブ、楽しかったみたいね。
口元、なんだか引き締まってるけど、
ロックなリップのおかげかしら?
ううん、きっと響の情熱ね。」
お母さんの呟きが、
響の心にじんわりと温かく響いた。
リップの秘密はまだ内緒だけど、
きっとお母さんも、私の今日の頑張りを
応援してくれているんだ。
そう思ったら、なんだか心がポカポカした。
次回予告:
第17話では、プロボクサーを目指す中学三年生の翼が登場! ほんのりピンクに色づく薬用リップが、リングに咲く勝利のおまじないになる…? お楽しみに!
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