邪智暴虐の悪役令嬢、断頭台にかけられ囚われの姫君へと転生する

ぼんげ

悪役令嬢、チョンパされる

 皆様ごきげんよう。


 わたくしの名前はカミュ―リア。貴方たちの世界風の呼び方をするのであれば、いわゆる「悪役令嬢」というやつですわ。


 さて、そんなわたくしでございますが、今はどういう状況かといいますと……。


「邪智暴虐の悪女、カミュ―リア! さあ、お前の罪を数えろ!」


 ただいま絶賛、イケメン公爵・セシル様に断罪されているところでございますわ! とほほ……。


 いつの世も、断罪されるのは悪役令嬢の定め。そこはわたくしも重々存じ上げているつもりなのですが、それでも一つだけ、いささか腑に落ちないことがございますの。


「ええっと、セシル様・・・・・・? つかぬことを申し上げるのですが、悪役令嬢の断罪って普通、地位降格とか領域追放とかその辺りなのでは……?」


「なんだお前? この期に及んで命乞いか?」


 そう、これは命乞いなんですの! それものね。


「もちろんでございましょう。……どうしてわたくし、断頭台にかけられているんですの!?」


 そう。何を隠そう、わたくしカミュ―リアは今、絶賛オン・ザ・ギロチンなうなのですわ! これでは悪役令嬢というより、マリー・アントワネットじゃない!? どうしてわたくしがこんな目に……。


「お前・・・・・・それ、本気で言っているのか・・・・・・?」


 わたくしがもっともな疑問を投げかけたところ、なぜだかセシル様の口調がまるで可哀そうな子を諭すようなものに変わりましたわ。まったく失礼しちゃいますわね。


「とりあえず・・・・・・自分がいったい何をしたのか、順番に言ってみろ・・・・・・?」


「ええと・・・・・・セシル様に色目を使う女が失明するよう呪いをかけて……それでも性懲りもなくセシル様に近づこうとするフェリシアとかいう女の紅茶に下剤を混ぜ……暴漢をけしかけて純潔を奪わせ……一族郎党全員呪い殺して……恥ずかしくて二度と公衆の面前に出て来れない身体にしてやるため、社交パーティ中に電気刺激を与えて嬌声を上げさせようとしたところ、わたくしの魔力が強すぎてうっかり黒焦げの感電死体にさせちゃったくらい……だったかしら?」 


 あっ、そういえば、セシル様に無礼な口を利いた王様の頭を爆発させたのも、セシル様の苦手なミニトマトを料理に出したコックを串刺しにしたのも、セシル様の陰口を叩いた愚民共の家を一つ残さず焼き払ったのもわたくしだったかしら……?


「えっと……最後の方は初耳なんだが……あれ全部お前の仕業だったのか・・・・・・。これだけの罪状が降格だ追放だ程度で済ませられると思うか……?」


 あら、心の声が読まれてしまいましたわ。流石はわたくしとセシル様の中。以心伝心ってやつですわね。・・・・・・ものすごくドン引きされているような気がしないでもありませんが。


「でも、愛するセシル様のためならどんなことでもするっていうのが、悪役令嬢としての正しい姿なのではなくて!? わたくしは己の使命をまっとうしただけですわ!」


 うっかりヒロイン役だったっぽいフェリシアを殺しちゃったような気もするけれど、それはそれ、これはこれ。この世は常に弱肉強食。殺される方が悪いのですわ。


「物には限度というものがあるだろう!? お前のは通りこしてなんだよ!」


 あら? 恋する乙女の可愛いいたずらを捕まえて、だなんて失礼しちゃう。


「お前、顔と身体だけはいいから、フェリシアを正妻として迎え入れたあとの遊び相手としてキープするために、少しくらいの罪なら揉み消してやろうと思っていたのに……」


 額を抱えて俯いてしまうセシル様。その口からは、聞き捨てならないセリフが零れましたわね。


 まあ、わたくしとは遊びだったのね!? この人も大概クズですわ! 


 ・・・・・・でもそんなところも素敵ですわね。わたくし、クズな殿方も嫌いではありませんわよ(ただしイケメンに限りますわ)。


「そんなわけだから、そろそろ死んでくれないか。カミュ―リア」


 嫌―! セシル様―! そんな雑にわたくしのことを処刑しないでー!


 しかし、無慈悲にも落下してくるギロチンの刃。・・・・・・ああ、ごきげんよう、My胴体。


 わたくしはただ、悪役令嬢として己の役目をまっとうしただけですのに……。こんな酷い目に遭わされるだなんて……。


 ・・・・・・もう悪役令嬢なんてこりごりですわ!

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