願ったのは不幸。叶えるのは神でした。

春木維兎 -haruki-yuito-

プロローグ

 家の離れの中。

 ここに私を連れてきたのは義母と父、兄だ。

 家族だなんて思いたくないけどしょうがない。

 戸籍上はこうなんだ。


 顔を上げる。

 目の前の扉には、錆びついた鎖が何重にも巻かれていた。

「……」

 もう…死ぬのだろうか。

 死ぬなら…1つだけ…1つだけ願いを叶えて。

「あの人たちが…不幸になりますように」

 静かな部屋の中。1人で呟く。

「承った。」

 後ろから…低く、優しい声が聞こえた。

 白い髪に赤い瞳。天使の輪に白い羽を生やした男。


 私の——守り神らしい。


 私は…この神と戸籍上の家族に復讐する。

 母を—殺したアイツらを許さない。

 母の最後の顔が、今も瞼の裏に焼きついている。

 絶対…不幸にする。

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