その名は、第三王子コナナン。

❄️冬は つとめて

第1話 婚約破棄事件。

それは王城の舞踏会で起こった。


秋の収穫祭を祝っての模様しものであり、未成年でも今宵は夜遅くまで夜会に出ることが許されていた。


「ベルモット、お前がそう言う女だとは思わなかったぞ。」

自分を差し置いて異母妹をエスコートする婚約者と異母妹に、どう言う事かと訪ねた時であった。白銀の髪を括り腰まで流した令息が、金髪の令嬢に声をあげた。


「ジンベルト様? 」



「お前は、異母妹いもうとであるキャンティをずっと虐げていたそうではないか。」

ベルモットの婚約者であるジンベルトの隣には、異母姉妹のキャンティが陣取っていた。赤毛の髪パッツン前髪と、顔の脇の髪を耳のあたりで切って後ろ髪はポニーテールにしている。ポニーテールに飾られた蝶の髪飾りが光る。


「ごめんなさ~い、異母姉さま。私、辛すぎてジンベルトさまに相談してしまったの。」

「それでもキャンティは、お前を庇っていたぞ。」

目を潤ませてジンベルトに縋り付くキャンティ。それをジンベルトは優しく抱きとめた。


「そんなキャンティの健気さに私は心をうたれた。彼女を守りたいと思った。」

ジンベルトは立ち尽くすベルモットに手を差し出した。


「私はベルモットとの婚約破棄し、異母妹のキャンティと新たに婚約すると此処に宣言する!! 」

「ジンベルトさま!! 」

皆の前でベルモットとの婚約破棄宣言をし、新たに異母妹であるキャンティとの婚約を宣言した。


「ジンベルト様、わたくしは虐めなどしていませんわ!! 」

「黙れ、ベルモット!! どうせお前とは政略結婚、ならば異母妹のキャンティと婚約をしても家としては差し障りはあるまい!! 」

ベルモットは強くキャンティの肩を抱いた。


「ごめんなさい異母姉さま、私ジンベルトさまを愛してしまったの。」

「私も結ばれるのなら、愛する者と結ばれたい。」

二人は強く手を握りしめ見つめ合った。


「異母姉さま、どうか私とジンベルトさまの仲を許してください。」

「ベルモットが頷いてくれれば、総て丸く収まるのだ。愛する私達の邪魔はしないでくれ。」

キャンティは涙を浮かべながらベルモットに懇願した。


「そうね、同じ政略結婚なら愛し合って者同士が婚姻した方がいいに決まっている。」

「二人は愛し合っているのでしょう。」

「あま、ベルモット様は愛し合う二人の邪魔をなさっているの。」

周りの貴族達は、ヒソヒソと好き勝手に陰口を叩く。


「キャンティ様を虐げていらしたようですわ。」

「まあ、酷い。ジンベルト様も慈しみから愛にお変わりになったのね。」

「ベルモット嬢は、プライドばかり高い令嬢だからな。」

「俺だって、悪女は御免被る。」

やってもいない事を囁かれ、ベルモットは強く唇を噛んだ。気を抜けば、涙が出そうな処をグッと堪える。


「異母姉さまお願い、私とジンベルトさまを祝福して。」

「頼む、ベルモット。私はキャンティを愛しているのだ。」

泣き崩れるキャンティを抱きしめながらジンベルトも、ベルモットに懇願する。舞台のようなシーンに、周りの者も感化される。


「お可哀想な、キャンティ様とジンベルト様。」

「二人は愛し合っておられるのに。」

「なんて酷い女なんだ。」

「悪女ですわ。」

応援しょうと周りの者達が、キャンティとジンベルトの味方についた。

 

『愛し合う二人を邪魔する悪女に、鉄槌を。』と。


この場に、ベルモットの味方は誰もいなくなった。


いつの間にかベルモットは、舞踏会会場で悪女に仕立てあげられていた。今反論しても、何を言っても彼女は悪者にされる。言われもない事柄にベルモットは俯いて耐えるだけだった。


「でも、それって浮気だよね。」


その声が、会場内に響き渡るまでは。


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