第八章:増幅する欲望

金貨の壺と黄金のガチョウのおかげで、

優雅にのんびりとした時を過ごしていたジャックでしたが、

どうしても頭から離れない事がありました。


それは雲の上で見た、美しいハープの姿。


「あのハープ…壺やガチョウより、もっとすごい宝なんじゃないか?」


ただそこにあるだけで、何か神聖な力を感じさせる、

存在感のある美しいハープ。


「もしかして、全ての願い事が叶うとか?

 どんな望みも思いのままとか?」


ジャックの胸の中で、想像が渦を巻き始め、卑しい笑みが浮かびました。




金貨や金の卵だけではもう満足できない――


彼の心は、次なる“奇跡”を求めて、膨らんでいく欲望に突き動かされていきました。


「最後の宝も手に入れれば、俺の人生はきっと完璧だ!」



彼は再び、天へと伸びる巨大な蔓をよじ登り始めました。

その足取りは今までよりもずっと素早く、

ジャックの顔には、以前よりも増した欲深さと焦りが滲んでいました。



その頃、雲の世界では――

空の番人・アルディンが、空の三宝を守る大樹のそばに立ち尽くしていました。

すでに二つの宝が盗まれた今、残るはただひとつ。


しかし、このハープこそが、

最も扱いを誤ってはならぬ“鍵”であることを、アルディンは知っていました。


「……これは、“奏でる場所”によって、恵みにも呪いにもなる存在……

 このハープが地上で奏でられたら…もう人は救われない…

 このハープだけは守らなくては…」



風が鳴き、大樹の枝葉がざわめきました。


遠い地上から再び伸びてくる邪悪な気配。


「邪な人間が、また来るのか……欲望のままに…何をするつもりなのだ!」

アルディンの体はふつふつとわいてくる怒りに震えていました。




続く~第九章へ~




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