穴二つ、あるいは両得

 家飲み用の物資調達のために立ち寄ったスーパー、普段は閑散としている休憩スペースに七夕の笹が設置されており、後輩はエコバッグを提げたまま「叶えたい願いとかはないんですけど、すげえ嫌いなやつがいて、そいつの願いだけは絶対叶ってほしくないしそもそもあいつが幸せになるのが俺は全然許せないんで、結果としてあいつが不幸だと俺が幸せっぽい感じになれるんですよね、多分」と冷房の風に揺れる短冊を眺めているので、すると俺が後輩の幸せを願えばそれは誰かの不幸を望むのと同義ってことになるんだろうか、と『ご自由にどうぞ』の文言と共に短冊の束が置かれたテーブルの前で、俺はサインペンを手にしたまま考え込んでしまう。

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