第50話 事件の場所には何かがある

 「え~!せっかく飲み物買ってきたのに~」

 カメが、ストローから紙パックのいちご牛乳でのどを潤していた。私の手には、カメのと同じ紙パックのコーヒー豆牛乳がある。私は、プラスチック製のストローを紙パックの銀色の部位に差し込み口を付けた。コーヒーにしたら甘ったるい味が口いっぱいに広がる。

 「あ、いくらだっけ」

 私は、財布とは別に持っている小銭入れを出した。

 「いいよ~。いつもご飯食べさせてもらってるし~」

 カメは、そう言いながらピンク色の紙パックを折りたたんでいた。

 そんな時、カメのお腹が「ぐ~」と鳴ったのが聞こえた。私とカメは、顔を見合わせて笑った。さっきまで私の手元を照らしていたオレンジ色の光は薄れて、かわりに月明かりが出てきていた。

 「夜ご飯、私の部屋で食べる?」

 「え~、ルミがそこまで言うなら、食べていこうかな~」

 いつものカメらしい返事がきたので、荷物をもって私の部屋に帰ることにした。

 廊下に出て階段を下りていくと、あの場所に着く。太原大智さんが亡くなった場所。通るたびに、ふとあの時を思い出してしまう。

 前までの私なら、こんな事考えてもみなかっただろう。事件にかかわるにつれて、人と関わることが増えた。それが最近楽しいと思えるだなんて、皮肉なものだろう。

 「あれ~。なんか隅で光ってるよ?」

 私たちが階段の踊り場に差し掛かった時、カメが隅の方に何かを見つけた。近づいてよく見てみると、黄色のおはじきが一つだけ転がっていた。

 「おはじきがどうしてこんなところに…」

 「日本文化同好会の子たちが落としたのかな~」

 もう何年以上も目にしていなかったおはじきをこんなところで見つけたこともそうだが、そんな同好会があるのも驚きだ。

 私は、いつからあるものかはわからないが、もしかしたら大智さんの件に何か関係しているかもしれないので、一応ティッシュに綺麗に包み持っていくことにした。念のためとの思っての回収だが、少しだけ怖くもあった。 

 私たちは、おはじきのことはそれ以上気にすることもなく、私の部屋に帰った。鍵を開けると、カメが自分の部屋のように入っていった。私は、少し郵便物が来ていたようなので、取りに向かった。

 郵便物は、チラシが数枚と茶封筒が二つ来ていた。一つは、お父さんから。もう一つは、林太郎さんから。

 私は、お父さんからの方が気になったので、部屋に帰るまでの道で中を覗いてみることにした。茶封筒の紐づけをほどき、中から紙の束をつかみだしてみた。

 【太原大智 死亡 身体損傷有 頭部に転倒直前にできたと思われる出血有】

 紙の一番上のその文字で、背筋が凍るという言葉を実感した。

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