第17話 生徒会長『久保田 誠輝』
ミヤが持ってきたのは、まだ新しめのファイルだ。表紙には体育祭競技別記録と書かれている。
ペラペラとめくって読んでみると、五年前からの記録があるようだ。去年の記録を見ていく中で、借り物競争と大きく書いてあるページを開いた。
「借り物競争、一年太原大智、一位。お題は、塗りつぶされてる?」
なぜか他の人のお題は残っているのに、太原大智のお題の部分だけが黒くマッキーで塗りつぶされていた。
「なんで…」
「私思ったんだけどさ~。そもそも誰も知らないっておかしくない?。普通お題を読み上げて審判のオッケーでゴールだよね~。しかも塗りつぶすなんて限られた人しかしないよね。例えば、お題を知られたくなかった本人とか…」
カメのその話しは、核心をついていると思う。誰が塗りつぶしたのかが問題なんじゃない。なんで塗りつぶしたのかが今は知りたい。
どうするべきか。というかお題を知っているのは、当時の生徒会と本人のみ。当時の生徒会?。そういえばこの学園の生徒会長って、元生徒会の中から選抜されるんじゃなかったか?。あの人なら知っているかもしれない…。
「カメ、生徒会長の所行くよ!」
私はカメの手を引いて走った。
最初はびっくりしたカメも、私の意図をわかってくれたのか急いでくれた。ミヤは、ファイルをかたずけてから追いついてきた。
私たちは、生徒会室のドアを開けた。中には生徒会長しかいなかった。
「おや、放課後のこの時間にお客さんなんて珍しい…。藤堂瑠美くん」
この学園の生徒会長三年『久保田誠輝』。私は、この人が少し不思議な人だと思う。いつもニコニコとしている笑顔も喋り方も、全てが何かを隠している気がする。学園で一番モテると言われているこの人だからこそ、それでもトップに立っている。
「去年の借り物競争のお題って覚えたりしませんか?」
「ん~。覚えているよ。どの学年の誰がどの種目に参加していたか、そして順位もゴールまでのタイムに至るまで全て覚えている」
不思議というより怖い。全てを記憶しているなんて、普通の人なら冗談と思えるが、この人が言うと冗談に思えない。でも好都合。
「去年の一年生太原大智のお題ってなんでしたか?」
「それは言えない…」
笑顔が消え真っ正面からのその言葉に、耳を疑った。背筋が凍るような冷たさを感じた。
「な、何でですか?」
「彼との約束なんだ。僕のお題は、誰にも知られたくないってね。だから僕の口からは言えないよ」
私は、「そうですか…」と言って生徒会室を出た。でもやっぱり生徒会長としてではなく、久保田誠輝先輩は、何かを隠している。もっと調べる必要がある。
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