第3話 私の憶測

放課後、この教室に誰か他クラスの人が侵入した形跡がないかを調べることになった。

 「調べるって言ってもどうすんだ?」

 タカにそんなことを聞かれて私は、自分の考えを自信満々に言った。

 「この学園って教室にベランダがあるけど生徒は出れないでしょ?。しかも移動教室の時には、施錠をしているからドアから入ることはできない。ていうことは、ベランダから入ってくるしかないってこと」

 私がそう言うと、「なるほどっ」と言ってタカが普通にベランダに窓から出た。

 埃や砂が積もっていて、歩けば足跡がついてしまうベランダだが、タカの見る限り何もなくただの汚れたらベランダらしい。私たちの中から、一つの希望が消えた。

 頭を悩ませている私たちだが、時刻も遅くなり学生寮に戻らないといけなくなってしまった。

 男子のタカとエイは、男子寮に戻った。女子の私とカメも、男子寮と少し離れた女子寮に戻った。私は、自分の部屋に戻り、カメはいつもなら、「ルミの部屋に行っていい?」と訊いてくるのだけど、疲れたのか部屋に帰ってしまった。

 私たちの住むここは、寮と言っても食事が出たりするわけでもなく、実家からの仕送りと学園からの月に一回支給されるお金で生活をすることになっている。卒業後に社会人としての生活で困らないためのことらしい。

 軽く作り置きしていたご飯を食べて、湯船にお湯を張り、お気に入りの入浴剤を入れる。いつもやっている事でも、その日の疲れによって、気持ちよさが変わるのだと実感した。

 今日のお風呂は、すごく気持ちよくて落ち着く。

 「はぁ。決めつけたくはないけど、クラスの誰かが犯人ってことだよね…」

 落ち着くって言っても、やっぱり考えてしまう。あそこまで行ってしまった手前、諦めるわけにもいかない。今日調べたことから、いくつか考えなければならない。

 まず一、被害者本人が無くしたということはありえなくはないが、どこにも忘れ物はなかった。

 「でも、最初からあったっていう証拠はないのか…」

 二、他クラス及びクラス外の人間が侵入し盗んだ。これは、ほとんどありえないだろう。どこにも侵入した痕跡はなかった。

 「合鍵…。でも複製までして盗みたかったのだろうか」

 三、クラスの誰かが犯人。今一番確率が高いのは、これしかないだろう。ただ言えるのは、犯人が男子とは断言言えないってことだろう。女子が盗むことだってあり得る。

 「でも、何が盗まれたんだろう…」

 私の中で疑問になったのは、被害者女子は「私物がなくなった」としか言わなかったことだ。財布なんかの金銭や高価なものや、アクセサリーやリップクリームと言った女子ならではのもの。他に考えられるのは、体操服や水筒と言ったものなら男子を疑うのも仕方がないが、「私物」としか言われていないから、何も進まない。

 もしかしたら、あの取り巻きたちも何が盗まれたかわからないのかもしれない。 

 私の中から出た考えはこれらだったが、憶測だけでは解決に繋がらない。確かめなければならない。

 一週間、それが私たちに与えられた時間。もしクラスの容疑者から探すなら、時間がかかる。急がなければ。

 「はーー。なんで首突っ込んじゃったかなー」

 私は、考えすぎて頭が疲れたのか、お風呂から上がって、髪も乾かさず倒れこむようにベットに入った。

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