第4話 街へ


「この格好、本当に合ってんのか」


 イヴに案内されてきた服は長いローブのようなものだった。


「どうじゃ、それ。魔術師っぽいじゃろ」


 満足そうな顔をするヘルを見ると嫌だ、とは言えない。守りたいこの笑顔だ。


「それで俺らどこに行くんだっけ」

「これから妾とハルキは近くのルフリオ、という国に行くのじゃ」


 唐突にラノベチックな固有名詞が出てきたな。


 内容があまり飲み込めていない俺を察知したのかイヴが補足を入れる。


「少しいったところに城塞国家 ルフリオというものがあります。そこは市場が発展しており、きっと最適な魔術の道具もあるでしょう」


 城塞国家、という響きは俺の心を猛烈にくすぐった。


「城塞都市!!行きたい!」


 俺の言葉にヘルも喜んでいるようだった。


「そうじゃ!行くぞハルキ!」


 そう言った途端、ヘルは俺の方へやってきて、急に抱きついた。小さな胸が腕に当たる。


「捕まっておくんじゃぞ」


 すると、あの子の世界にきた時のように俺たちの周りに光が漂い始めた。


「いってらっしゃいませ、ヘル様」


 その言葉にヘルが小さく頷いた瞬間、視界が真っ白になった。


 *    *      *

「ハルキ、起きるんじゃ!」


 目を覚ますとあたりの景色はヘルの家ではなく、レンガに囲まれた路地裏のようなところだった。


「どこだ、ここ」

「ルフリオじゃ」


 ここが、ルフリオ。路地の先に多くの人が行き来しているのが見え、いつの間にかさまざまな声が聞こえるのに気づく。空気もヘルの家の熱い空気から涼しい爽やかな空気になっていた。

 そうして俺とヘルはルフリオの街へ出て行った。


 路地から出て街へ出るや否や元気な客引きが声をかけてくる。


「いらっしゃい、姉ちゃん兄ちゃん!新鮮な食材だよ!」


 そこで売られていたのは数々の葉っぱ。


「ヘル、これはなんだ」


 葉っぱの一つを持ち上げてヘルに見せるとヘルは優しく解説してくれる。


「ああ、それは薬草じゃ。キズのところにそれを被せておくと治りが早くなるんじゃ。まあ妾のような魔王だとキズくらいなら数秒で治るんじゃが」


 そう言ってハハ、と笑うヘルは楽しそうだった。

 っていうか、数秒で治るってエグすぎんだろ。逆にどうやったら死ぬんだよ。


 そう考えながら並んで歩いているとある店の前に着いた。


「1つ目の目的地はここじゃ」


 そう言ってヘルは看板を指さした。そこには「ルームズ魔術具店」と書かれている。

 なんの躊躇もなくヘルは入っていき、取り残された俺も急いであとを追っていった。

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