14 女子高生も異世界洋服店へ行く

 鳥頭の店長さんと別れて街を歩いてるけど、どうにも今日はすぐに帰れないみたい。

 せっかくの異世界だし店でも見ていこうかな。

 丁度目に入った洋服の描かれた看板が目に入った。ガラス越しに可愛いドレスやマントが飾られてる。そういえばこっちの服って知らない。


 気付いたら扉を開けて中に入ってた。


「いらっしゃいませー♪」


 店内から可愛い女の子の声が聞こえた。視線を向けたらカウンターの方に私と同い年くらいの子がペコリとお辞儀している。


 垂れたウサ耳の付いた丈の長い白いパーカーを羽織って、中にはベージュの服を着てる。黒のロングスカートもとってもお洒落。


 見た目は橙色の長い髪をツインテにしていて目もクリクリしてて可愛い。何より、頭には動物の耳がフードの隙間からちょこんと生えてる。コスプレ道具には見えない。


 店内には私しかいないみたいだから、ゆっくり見させてもらおうかな。瑠璃も顔を出して服に興味を持ってる。食べられないよ?


 近くの服を見てるとよくみかける裏地に模様のあるマントが沢山置いてある。こっちだとマントを羽織るのがお洒落なのかな?


 うろうろ歩いてて見てたけど、何か凄く視線を感じる。入ってからずっと店員の女の子がこっちを見てる。もしかして瑠璃を連れてるのがよくなかった?

 ペット入店禁止のお店とかもあるし、配慮足りなかったなぁ。


「ここって動物入れるのだめでした?」


「え? あ、いえ。服さえ傷付けなかったらだいじょぶ、です」


 なんか歯切れの悪い返事がくる。首を傾げて疑問に思うけど、見たら店員さんの視線が瑠璃じゃなくて私に向いてる気がした。


「えーっと。何か変、でした?」


 学校帰りだからブレザーのまま。おまけにこっちと向こうだと文化も違うから何か問題があったのかもしれない。すると店員さんはモジモジしながら視線を外す。


「あ、えっと。その。あの」


「んー?」


 店員さんの方に歩いて近寄ってみる。やっぱり頭の耳は飾りじゃなさそう。可愛い。

 そんな感想を抱いてると店員さんが意を決したみたいで顔をあげてくる。


「もっと近くで見てもいいですか?」


「うん? いいよ?」


 すると店員さんがパァッて明るくなってカウンターから飛び出して来た。私の真横に立って制服やスカートをマジマジ見てる。


「お姉さん、変わった服着てますね。こんなのこの辺で見かけないです」


 やっぱり異世界だと日本の制服は珍しいのかな。

 店員さんは袖を触ったり、胸元を覗いてくる。ちょっと恥ずかしいからブレザーだけ脱いで店員さんに差し出してみる。


「良かったら貸すよ?」


「いいの!? ゴホンゴホン。いいんですか?」


 店員という立場を一瞬忘れたみたいだけど、すぐに言いなおしてる。


 いいよって言ったら、店員さんはブレザーを受け取ってカウンターに戻って行った。


「せっかくなので自己紹介しておきますね。私はフラウス・クロンケルです。見ての通り狐族の混血です。宜しくお願いします」


「私は野々村野良だよ。よろしくね、フランちゃん」


 するとフランちゃんは目を丸くしてこっちを見てる。あれおかしかったかな。

 フラウスだからフランにしたんだけど。


「あの、ノノムラさんはもしかしてレティと会ってます?」


「レティ?」


 フランちゃんのお友達かな。でも知らないから首を振っておく。


「そう、なんだ。てっきりもう会ってると思った」


「どうして?」


「私をフランって呼ぶのはレティだけだったから」


 そっか。だから驚いてたんだ。偶然の産物だね。


 それからフランちゃんは椅子に座ってブレザーをすごく近づけて見てる。汗の匂いはないと思うけど大丈夫かなぁ。


「ゴツゴツしてるけど生地は薄い。通気性もしっかりしてる」


 見ただけでそんなの分かるんだ。フランちゃん、すごい。


 その間に店内をブラブラと歩いて服を見てよう。


「ノノムラさんはこの辺の人じゃないよね?」


「うん。遠い所から来てるよ」


「そっか。私も色んな服を見てきたけどまだまだだなぁ」


「今流行りの服とか聞いてもいい? 私、そういうの疎くて」


 するとフランちゃんがカウンターから真っ直ぐの所を指差した。

 見た目はシンプルな無地のシャツやコートが並ぶ。


「最近だとリバーシブルの服が人気だよ。冒険に出かける人は着替えもそんなに持ち歩けないから買われてるよ」


 試しにシャツを取ってみる。表は白だけど裏地は黒になってる。裏地を出しても反対に着てる感じもないし、メーカーのラベルも付いてない。


「他には色物のマントも売れてるよ。男の人はダメージマントを買ってるかな」


 模様がお洒落なマントや傷のあるマントもある。


 あ、この水玉模様のマント可愛い。


 他に店内を見てると端の方にキラキラと輝く洋服があった。男性用のスーツみたいのと、女性用のドレスが並んでる。値段はどっちも金貨100枚。多分、すごく高い。


 私が見てたらフランちゃんが気付いて声をかけてくれた。


「ああ、それはお金持ちしか買わないよ。滅多に売れないし」


 生地は薄くて柔らかい。それでいてふわふわ。


「魔法糸っていう特殊な糸から編んでるから傷や色褪せが殆どつかないんだよ。ただ魔法糸を生み出せる月光花が一部の地域でしか採取できなくて高額なの」


「ほえー。フランちゃんは博識だね」


 なんとなく口にするけど返事がなかった。目を向けると少し俯いてる。


「私、賢くないよ。学校にも行ってないし、物心ついた時から糸ばかり触ってたから。友達と呼べるのもレティしかいないし」


 こっちだと学校は義務教育じゃないみたい。フランちゃんに近付いて頭を撫でてあげる。


「私も友達だよ。それと瑠璃も」


「ぴー?」


 瑠璃は急に話題を振られてとぼけた声を出す。うん、そこは元気よく叫んで欲しかった。


「今度私の友達もここに連れて来るね。フランちゃんもきっと仲良くできると思うよ」


「ノノムラさん……」


「また来るね」


 今日はもう遅いから休みの時にじっくり見たい。ブレザーを返してもらおうと思ったけど、フランちゃんが服に覆いかぶさって上目遣いしてくる。


「ま、待って! 1日だけ! いや、半日だけでいいから貸して!」


 困ったなぁ。明日もそれ着ていくからないと学校いけない。


 私が黙っているとフランちゃんが人差し指を立てた。


「じゃ、じゃあ1時間だけでいいから! その間にレティの店を紹介する!」


 見かけに反して結構我が強い子だった。でも本当に興味持ってるみたいだし、それにフランちゃんの友達も気になる。


「ん、分かった。友達のお店ってどこ?」


「丁度向かいの所だよ」


 ガラス越しに指差すとビーカーみたいな絵が描かれた看板が立ってる。まさかお隣さんだとは。


「分かった。じゃあちょっと行ってくるね」


「ありがとう。ゆっくりしていってね」


 手を振ってフランちゃんのお店を後にした。お友達さんはどんな子かな?

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