外伝・冒険者ギルドは必死に考え抜く
「クソ、あの欲望に溺れた貴族連中が」
「しかし、どうします。ギルドマスター?このままではこの大陸は滅んでしまいますよ」
「それは。分かっておる。分かっておるが。あのリッチキングの討伐だ。そうたやすく出来るものではない」
「そうですね。今代はまだ勇者も聖女も現れていませんからね」
「本当にそうだ・・・ハア、でも勇者も聖女も世界がピンチにならないと出現しないしな」
「あれ?そういえば聖女は噂で聞きますけど、いませんでしたか?」
「ああ、あれは本当の真なる聖女じゃない。善行が讃えられてそう呼ばれてるだけの偽物だ。まあ本人に会ったけど自分が民から聖女と呼ばれてることも知らない。聖女って言葉事態も嫌いな変わり者だったけどな」
「ギルドマスター。彼女に会ったことがあるんですか?」
「ああ。数週間前にな。超一流の魔術師であり神器の保有の噂もある聖女様がいるなんて耳にしたから会いに行ったんだ。
物言いは多少傲慢で貴族っぽいが、それに見合う、いやそれ以上の実力を持った人格者だ。子供好きだしな」
「ギルドマスターも子供好きですもんね。顔が怖いからいつも逃げられてますけど」
「うれせぇ。おい、話が脱線してるぞ。問題はリッチキングだ。本部に連絡したが支給出来る報酬限度額は1億ゴールドだ」
(1ゴールド10円で物価は日本と比べてかなり安い感じです)
「1億ゴールドですか。4人家族が一生楽しく遊んで暮らせるぐたいの金額ですね」
「そうだな。まあ、常人からしてみれば充分な大金だな」
「そうですね。常人にしてみればですね・・・・・・」
リッチキングは大陸を滅ぼし場合によっては世界すら滅ぼしかねない最悪の化け物であり、そもそも論としてリッチキングの生み出す死者の眷属に戦えるラインがBランク冒険者。
リッチキングとの戦いで足を引っ張らない戦力となるのでAランク冒険者。
倒す為にはSランク冒険者の力が必須である。
それぞれ報酬の相場がBランク冒険者パーティーで100万ゴールド
Aランク冒険者パーティーで1000万ゴールド
Sランク冒険者は単独で最低ラインとして1億ゴールドである。
リッチキングと戦うためには死者の眷属のつゆ払いが必要であり、最低でもBランク以上の冒険者が1000人は欲しかった。
まあ、無理である。
その上で討伐の為にSランク冒険者がパーティーレベルで必要である。
余計に無理である。
・・・・・・・・・
嫌な沈黙が走る。
「で?どうします?」
「どうするもこうするも、帝国支部と王国支部の緊急予算を引っ張り出すしかないだろ」
「経理担当です。帝国支部です。あのう、国境沿いの魔物討伐で今年度の予算相当使っているので帝国支部は出せて5億ゴールドです」
「経理担当。王国支部です。あのう、うちはそれに+で盗賊退治にも予算を使っているので、3億ゴールドが限界です」
「しめて、9億ゴールドか・・・。ハア。足りないな」
「そうですね。大雑把に計算してもBランク冒険者がパーティーで100で1億。Aランク冒険者パーティーも10で1億。Sランク冒険者パーティーで最低で10億ゴールド以上。
まあ、あくまで理想論。リッチキングなんて大物と戦うとなったら特別手当も必須ですし、相場通りじゃ誰も動きません。動いたとしても正義感の強い冒険者だけです。
となると相場の3倍は出す必要があります。
そしたら12億ゴールドの3倍、36億ゴールド・・・。文字通り桁が足りませんね」
「どうしたのものか。でもどうにか解決しないと文字通り大陸が終わるな。俺のポケットマネーで出せて1億、これで一応10億か。
10億ゴールドってキリが良いし、野生の最強冒険者がきまぐれで受けてリッチキングを討伐してくれないかな」
「一応、依頼掲示板に出しておきましょうか」
「まあ、ダメもとで出して置くか。死者の眷属をむやみやたらに増やす可能性は否定できないから一応Aランク以上の冒険者しか依頼の受注出来ないようにはしておけ。
Aランク冒険者レベルになれば転移結晶や短距離転移のスクロール。脱出の巻物なんかを用意している場合はほとんどだしこれなら問題はないだろう。
Aランク冒険者レベルになれば十分に引き際も理解しているしな」
「確かにそうですね。ではそうしておきますね。しかし、これはあくまで理想論でありもし達成者がいたらラッキーな運任せです。
出来る限り早く討伐隊を組まなければなりません」
「分かっている。しかし予算もないしな。いや、仮に予算があっても勝てるか。やはり帝国と王国が出兵に協力をしてくれなければ難しいな」
「ですが両国とも片方の国の問題であるから片方の国に対処させろの一点張りでろくな返事が返ってきません」
「ええい。それは理解しておる。あの欲に溺れた為政者共。どうせ戦争に使う兵士が減るのが惜しいだけだろ。そもそも論としてその戦闘だってお前らのくだらない利権と欲望の為の戦争で何一つ民の為にも世界の為にもなってないというのに、腹ただしい」
「戦争程無駄な行為はないですからね。本当ですよ」
その時であった トントントンとノックがなる。
「入れ」
扉が開き、一人のギルド職員がとある男を連れていた。
「お久しぶりです。ギルドマスター、副ギルドマスター。そしてお初にお目にかかります。他部門の皆々様。私は冒険者ギルドSランクであり神器【雷鳴】と【風鳴】の所有者である帝国・第二王子・バルバッセロ・エンペズラーと申します。今回は皆様にとある提案をしにまいりました」
とある理由により、王国から帝国に亡命を果たし、その確かな実力であっという間にSランク冒険者にまで登り詰めと後、現皇帝の祖父との血縁関係が明かされ、皇帝の養子となり第二王子の地位を授かった英雄王子・バルバッセロが礼をする。
「ほう。提案とな」
「はい。提案です。
正直に言ってください。冒険者ギルドはリッチキングの対策を進めれてますか」
「お主ならば我らも正直に言おう。無理じゃ」
「そうだと思ってました。そして、帝国は一切リッチキングの対策をしていません。対策というか王国に押し付けて終わりです。
互いに押し付け合いをしている救いようのない状況です。
しかしこのままでは両国どころか大陸、強いては世界の危機です」
「それは。儂らも理解しておる。しかし冒険者を雇おうにもギルトとしては予算が足りていないのが実情じゃ。ぶっちゃければ王国も帝国も国としてギルドに予算を寄越さぬから常にカツカツなんだ」
冒険者ギルドは世界各地にある組織であり、莫大な数の冒険者支部と職員を持っているが、実は国の支部ごとに予算体形が独立しており、予算もその国の支援がなければカツカツというのが常であった。
冒険者ギルドの創設者である田中マスターの基本理念として世界を平和に人を幸せにというのがある為に帝国と王国に支部を出してはいるが、両国の貴族・王族とも自国民よりも自分達を優先する為に様々な問題が頻出しその対応に予算を使われる他、戦争中な為にそのしわ寄せも冒険者ギルドにきており、更に予算を頻拍させられていた。
であるにも関わらず、王国も帝国も冒険者ギルドに寄付や協力金を渡さず。人を守って当然という顔をする。
田中マスターの理念がなければとっくのとうに冒険者ギルドは撤退しているレベルである。
「ですから。両国ともに予算を出させましょう」
「出させるって。無理だろ」
民がどれだけ危険に晒されようが一切予算を出さずに自分達で解決しろが基本スタンスであり、常に戦争と利権に夢中な両国上層部を知る冒険者職員の面々は重たいため息をこぼす。
「ですからプライドを刺激させましょう。今、冒険者ギルドがリッチキング討伐に使える予算はいくらですか?」
「今は10億ゴールドだ」
「必要な報酬金はいくらですか」
「ざっと36億ゴールドぐらいだな」
「であれば、その10億ゴールドを王国が冒険者ギルドに支払ったリッチキング討伐の報酬金の一部が入ってますと帝国に伝えた上で、王国側は国境沿いのリッチキングを討伐するのだからこの国境沿いの土地は我ら王国側のものだと主張していると伝えましょう。というか私が伝えます」
「おいおい、冒険者ギルド側はあのクソな王国から1ゴールドたりとも貰ってないぞ」
第二王子がポケットから1ゴールドをギルドマスターに向かって投げる。
それをキャッチして眺める。
「で?これがどうしたって、ああ。なるほどそういうことか」
「はい。その1ゴールドは元王国民である私からのプレゼントです。リッチキング報酬金の一部に使ってください」
「これなら真実の宝玉も誤魔化せるし、魔法契約書だってかけるな。そんで土地を寄越せなんて馬鹿な主張してるのを絶賛話題沸騰中のリッチキング出没場所の次期当主だったバルバッセロ君ってことにして、言い回しをかえればいいのか」
「そういうことです。これなら帝国もとい義理父上の性格上、ぶちぎれて11億ゴールドくらい報酬を寄越すと思いますよ。
もちろん、土地は寄越せよっているお話付きでね」
「そうすれば今度はそれを王国に送りつければまた返って来るってことか。お金と一緒に」
「そういうことです。後は充分な報酬が得れるまでこれを繰り返して、適当な所で冒険者ギルドが間に入って折衷案として国境沿いは今のままノータッチないし、より多くの報酬を出した国に一部はそのまま渡す契約書を書かせましょう。
王国も帝国も救いようがない程愚かですが、それでも冒険者ギルドを捨てる選択肢を取る程愚かではないでしょう」
「それは、流石にそうだろうな。よしこれでいくぞ。お前ら準備しろ」
「あ、もちろん私もリッチキング討伐には参加させて貰います」
「おう。ありがとな。バルバッセロ。お前がいれば万人力だぜ」
―――――――――――
お金の価値
銅貨=10ゴールド
半銀貨50ゴールド
銀貨=100ゴールド
半金貨500ゴールド
金貨1000ゴールド
大金貨1万ゴールド
白金貨100万ゴールド
天金貨1億ゴールド
まあ、適当です。
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