世界を滅ぼしかねない最悪の厄災リッチキングは出オチするそうです


 マリアンヌが冒険者ギルドに所属してから一カ月が経った。

 ディステリア王国が気に食わないという理由で活動拠点を帝国へと移してソロで活動を続けていた。

 超一流の魔術師であり神器を二つも保有しているマリアンヌはただの一度も依頼を失敗することなく、数多の魔物を屠ってきた。

 冒険者ギルドからは高く評価されてあっとういう間にAランク冒険者にまで上り詰めていた。




―――――――――――――――――


 Sランク魔物・・・それはたった一体で小国すら壊滅させる厄災。

 形は様々なあり、もはや自然現象そのものであり、人間が太刀打ちできる存在ではない。

 そんなSランクの魔物、リッチキングが帝国とディステリア王国の国境沿いに突如出現した。

 リッチキングは国境沿いにて何かを探すように歩みを始めた。まるで何か大切なものがそこにあるかのように。

 リッチキングは闇属性の魔物であり、強制眷属化という恐ろしい能力を保有している。

 リッチキングによって殺された生命体は死者の眷属となり、その死者の眷属によって殺された生命体も死者の眷属となる。

 以下、無限ループである。

 リッチキングを野放しにしたら最後、周辺全てが死者の眷属で埋め尽くされ過去には幾つもの大国が滅ぼされ、大陸全土が滅ぼされかけたことすらある。


 帝国もディステリア王国もリッチキングの出現に頭を大きく抱えて討伐作戦を発表する。

 しかし、Sランクの魔物であるリッチキングの討伐には確実に多くの犠牲が出ることが予想出来、下手に自国の戦力を出兵させて消耗させた場合、現在敵国である帝国・ディステリア王国、両国の戦争において不利な状態に陥ってしまうという懸念から互いに身動きが取れなくなってしまった。

 リッチキングにとって時間は益であった。

 時間が経てばたつほど死者の眷属を増やして戦力を拡大させ討伐を困難にさせてしまう。

 両国は選択を迫られた。


 しかし無意味な言い争いは続き膠着状態は続いてしまう。


 そこにまったをかけたのは冒険者ギルドであった。

 莫大な報酬を両国から引き出し、冒険者ギルドは一人の冒険者を派遣させる。


 かくしてリッチキングの前に現れるのはたった一人の女性。

 つい最近Aランク冒険者に駆けあがった期待の新人であり、本人の知らない所で聖女と呼ばれるマリアンヌ、その人であった。


「神器開放・顕現し私に無限の叡智と魔力を与えよ・グリモワール

 神器解放・全てを呑み込む死の闇よ。全てを喰らう死の力よ。私に最恐にして最強にして最凶の力を寄越しなさい・死霊神の杖

 全てを呑み込め、全てを喰らい尽くせ、全てを消滅させろ。

 惑え、惑え、惑え、歪め、歪め、歪め。狂って狂う果ての空に笑い落ちる天は空。世の理の外の中、破滅に歪めし、虚構に降れ。

 望む、想い、願い、果てへと至れ。

 滲み出すは愉悦の紋章

 不遜なるは狂気の修羅

 湧き上がり・否定し・痺れ・瞬き・永久の眠りへ誘う

 絶えず自壊し永劫の狂気の狭間で狂い死ね

 結合し反発せよ

 禁忌魔術・永劫之闇堕」


 マリアンヌが生み出したらオリジナル魔術であり、全てを闇へと還す禁忌の技。

 リッチキングは闇属性の魔物である。

 その為に並み大抵の闇属性攻撃は無効化される。

 そう、並み大抵である。

 マリアンヌはその並み大抵という枠組みどころか人智すらも超え、神の領域に片足を突っ込んでいた。


 歴史的にみれば数えきれない屍の果てに聖なる力を持った勇者と聖女が相打ち覚悟でようやく討伐がなされる最悪の魔物・リッチキング。

 本来の世界であれば聖女に覚醒したメインヒロインがハーレムメンバーと万の兵士と協力を重ねて、場合によってあの守護者・バルバッセロの犠牲の上でようやく倒せる最強格の力を持った存在。


 それをマリアンヌはたった一発の魔術で滅ぼした。


 圧倒的という言葉に他ならなかった。


 リッチキングの脅威は去った。

 一人の女性の手によってリッチキングの討伐が成功という結果を残して。


 マリアンヌにとってみればただ的のデカい魔物に実験がてら強力な魔術を放っただけである。

 マリアンヌは傲慢であるが故に自分の力を信じて疑わず、リッチキング討伐も自分ならば当然のことであると考えた。


 しかし真の意味でマリアンヌは自覚していなかった。

 リッチキングがどれだけ強力な魔物であり、ギルドがこの件を重大だと認識しているのかマリアンヌは理解していなかった。

 そして、自分が有能であるからこそ無能な為政者の存在を失念していた。

 かくして世界はマリアンヌという聖女を英雄を救世主を知ってしまう。

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