新しい朝が来た、希望の朝だ。

 小鳥の囀りが響きわたる。空は澄み渡る位に気持ちの良い蒼。青々とした草木が靡く、とても気持ちがいい風がゆらりと吹く朝。

 僕、ガンズの新しい朝が始まった。

 昨日はパーティから追い出されちゃったけど、それも僕の新しい人生が始まる事を思えばひとしおというものだ。

 宿屋の窓を開けるとやはり心地よい陽が差し込む。

 うん、気持ちいい。

 やっぱりあんな冒険者パーティよりも、僕が目指すのは誰も追いつけない高みを目指す事だよね。

 僕はパジャマを脱ぎ捨て、冒険者の服に着替える。

 この世界には過去に何回か現代日本から転移してきた人間がいたらしく、ある程度の衣服や魔導具が作られている。

 便利だけど…、僕がそう言うのしたかったと思わないでもない。

 鏡を見ると、緑色のショートヘアに翡翠のような瞳が輝く美少年が映っている。

 この顔のまま現代に行けたら間違いなくモテる顔つきだけどね。

 耳も尖ってエルフみたいだけど、僕はエルフじゃない。

 だって色んなでエルフは「金髪でシュッとしたスタイルで背が高い」って書かれているから、間違いなく僕はエルフではない。

 魔法の適正は「魔導賢者」様のように聖魔術以外の全適性があるのもポイントが高い。

 まあ、魔力量はそこまでないけどね。だからバッファーしてるんだけど。

「魔導賢者」様は非常に美しい藍髪の美女で、スタイルも抜群、この上ないほどに美しいと称されるお方だ。

 モリアのお義母さんだから会った事があるけど、とても40に近いとは思えない。20代前半に見えてしまうほどだ。

 というかモリアのお父さんもすっげえかっこよくてハーレム作ってる御仁だけどね!

 奥さんみんな「魔導賢者」様並に綺麗だったしおっぱいも大きかったよチクショウ!

 ふぅと溜め息をついて、僕は部屋を出る。

 一階に降りると、宿屋のマスター(黒髪50代イケオジ)が朝食を作って待ってくれていた。


「…よう、坊主。今日の朝食はハムトーストとスクランブルエッグだ。…景気、付けていきな。」


「ありがとう!マスター!」


「…マスターはやめろ。小っ恥ずかしいだろうが。せめてゲンジって呼べや。」


「何時もマスターの朝食には感謝してるよ!」


「…よせやい。だからマスターはやめろ。」


 僕はマスターに挨拶して席につく。

 するととことこと、マスターの娘さんが料理を運んできた。

 マスターの娘さんはカナミという名前だ。

 僕と歳も近い美人さんで、身長も160cmほどある。

 黒髪を長く伸ばしてポニーテールにしているのまた可愛いと感じさせる。

 クリクリとした黒眼で、笑顔がとても素敵な美少女。

 スタイルも良くて、目算Dカップ位はあるだろう。


「ガンズさん!おはようございます!」


「カナミちゃん。おはよう。…ん?どうしたの?」


 カナミちゃんが僕の顔をじぃっと覗き込む。

 美しい顔が僕に近付く。

 心音が、ドキンと跳ねた。


「髪、跳ねてますよ?慌てん坊さんですね。」


「え!?嘘!?…ありがとう。」


 カナミちゃんは僕から顔を離し、上品に微笑む。

 僕の心臓はいつまでも高鳴りっぱなしだ。

 アニメの中では、カナミちゃんは盗賊の襲撃にあって、散々な目に遭わされ、最終的に死んでしまう。

 そんなキャラクターだった。

 アニメの中のガンズは丁度その時を助けられなかったけど、知識を知ってる僕なら助けられるはずだ。


「いただきます!」


 僕は目の前に置かれたトーストとスクランブルエッグを食べ始める。

 口の中にとろけるスクランブルエッグの焼き加減は絶妙の一言だ。

 トーストの焼き加減もこれまた僕の好みに合わせてくれている。

 カリッとした食感が気持ちいいの何の。


「ごちそうさま!」


「お粗末さまでした。ふふ、ガンズさん、何か良いことでもありましたか?」


「え?なんで?」


「とても嬉しそうに笑っているからですよ。今日も、依頼から気を付けて帰ってくださいね。」


「うん。ありがとう、カナミちゃん」


 にこやかに微笑むカナミちゃんは、女神のように美しく僕に映った。

 ぜってぇ許さんからな盗賊ぅ!

 朝食を終えた僕は、宿から冒険者連合へと向かう。

 昨日の事もあるし、ちょっと気まずいけどね。


「行ってきまーす!」


「いってらっしゃい、ガンズさん。」


 カナミちゃんの声に見送られ、僕は新しい日常の一歩を踏み出した。


「おはよ。あんた、少しは反省したの?」


 かに思えた矢先、どうして元パーティで幼馴染のモリアに出会うんだろうか。

 モリアは綺麗な橙色をした髪を揺らし、ガーネットの瞳でじとっと僕を見据える。

 モリアの目にうっすらと、僅かに光が灯った。

 そのままモリアは眼を伏せ、ふぅと溜め息をつく。

 幼馴染目線もあるかもしれないけど、その姿は凄くさまになっていて、嫌でも美少女だと思い知らされる。


「あんた…元気そうね。昨日のことで凹んでるかと思ったアタシがバカみたいじゃない。」


 思い出した!

 確かこの後モリアに散々罵られて、主人公が崩れ落ちるんだ!

 良く思い出すと、モリアの髪色が少し違う気もするけど、多分アニメの方の作画ミスだと思う。

 なら…先手必勝だ!


「モリア。僕はもう君たち「夢の翼」からは追い出された。君はもう赤の他人だろ?僕とは関わる必要はないよね。…じゃ、僕はこれで…。」


「待ちなさい。…アタシも、抜けたから。」


「…え!?…何を?」


「だから…アタシも「夢の翼」抜けたから。」


 …ふぅ。

 こんな展開、アニメになかったろうがぁーーー!


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 お読みいただき、ありがとうございます。

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