第30話 一網打尽作戦
Side:タイセイ
密偵の一網打尽作戦を発動。
作戦はこうだ。
勇者のお宝が発掘された。
国王に献上するために、輸送される。
お宝の効果は戦争になれば敵軍を一瞬で皆殺しに出来る。
お宝はスキルで買った拡声器。
10万円ほどする。
鑑定したら、声が届く範囲なら扇動されてしまうというスキルがある。
耳栓しても無効化できない。
さすがの10万円商品。
反則の性能だ。
敵に奪われたらと考えると思うが、安心して良い。
バッテリーがないと使えない。
バッテリーもだが、充電する設備がないとね。
それにたぶんだが、スキルで買ったバッテリーじゃないと、扇動スキルは発揮されないと思う。
遠くから鑑定するには関係ない。
騙されてくれるはずだ。
使うことになっても、バッテリーは普段は日本で保管するつもり。
それなら、安心だ。
街の領主も快く作戦に同意してくれた。
領主の屋敷の使用人達にお宝の情報を流す。
何日か後、領主が街の人に拡声器をお披露目する。
「これが、勇者神様の聖遺物の武器だ!」
「凄い威力なのかな」
「噂では軍隊が一瞬で皆殺しらしい」
「これは大変だ。本国に……。ぐひっ」
台の上からだと、神官が密偵を捕まえたのが良く分かる。
「領主様が王様に願い出て税が下がらないかな」
「領主様は立派だから問題ない」
「【鑑定】、これは……。こんなのを使われたら……。あがっ」
また捕まった。
馬鹿だな。
そして、お披露目は終り、拡声器を積んだ馬車は街を出て、街道をゆっくりと移動し始めた。
周りを囲むのは、領軍の兵士に化けた勇者教の神官達。
しばらく行った所で。
「助けて下さい!」
ボロボロの服を着た少年少女達が駆け寄ってくる。
おいおい、少年兵の類を使うのか。
密偵組織は容赦がないな。
スマホの地図アプリを起動。
このスマホはスキルで買った。
SIMカードさえあれば、スキルで買ったスマホも日本で動く。
充電は漫画喫茶でやった。
便利な世の中だ。
日本でアプリをダウンロード。
スキル搭載のスマホが使用可能に。
このスマホほ異世界で使ったわけだ。
地図アプリでは、少年少女達は敵のマーカー。
モンスターと同じ色だから、間違いない。
離れた場所にも敵のマーカーがある。
桃を食って日本に飛ぶ。
トランクルームから、バッテリーを取り出して拡声器にセット。
桃を食い異世界に戻り、馬車の中で拡声器のスイッチをオン。
「ガルー国の悪行は知ってるぞ! 君達は捨て駒にされている! ラフート国に寝返れば悪いようにはしない!」
少年少女達の動きが止まった。
武器を置いて降参してる。
離れた場所の密偵も神官達が捕まえた。
俺は桃を食って、日本に転移。
バッテリーをトランクルームに保管した。
拡声器は異世界でこれからも餌として使う。
今回、扇動されてる何人かは、逃がす予定だ。
王都に到着するまでに、たくさん引っ掛かるはず。
捕まった密偵は、勇者教の教会に送られた。
勇者教の信徒に洗脳されるんだろうな。
悪人より変人でも善人の方がまし。
襲撃は何度かあったが、王都に着いた。
バッテリーの入ってない拡声器は王城の宝物庫に収められた。
Side:密偵少年
勇者の遺物を使われて、寝返ってしまった。
逃げだそうにも、勇者教の神官に見張られてる。
教会に着いた。
これから拷問されるのかな。
「食え!」
食べ物?
何これ?
見たことない食べ物。
毒?
自白剤の一種?
効かないと思うけどね。
茶色いのは甘い。
楕円の薄いのはしょっぱくて、油があって、不思議に美味い。
涙が止まらない。
食べ物で感動したのは初めてだ。
「タイセイに感謝しろよ」
「はい」
反抗しようという気持ちが吹き飛んでた。
なぜか笑ってる。
笑ったなんて、いつ以来だろう。
次に食べたのはスープの中に細い黄色の何か。
匂いが美味そう。
破壊的だ。
食べてみると、味も破壊的美味さ。
これは凄すぎる。
こんなの任務で行ったパーティで食べたどの料理より美味しい。
悲しいのは量が少ないことだ。
「食べ足りないって顔だな。次はこれだ」
出されたのは皿に盛りつけられた虫の卵みたいなのに、茶色い何かが掛かった何か。
匂いが暴力。
殴られた感じだ。
虫は食べ慣れている。
森で食料がなければ、虫などを食べて生き延びる。
スプーンで一口。
辛いけど、美味さががつんがつんと殴ってくる。
こんなの反則だよ。
「美味いか? まだまだあるぞ」
駄目だ。
俺はもう、母国のために働けない。
この食べ物のために働くんだ。
勇者教の洗礼を受けた。
教義を叩き込まれて、悪人は切り刻むと決意。
教から俺の名前は1567番から、カレーライスだ。
隣にはチョコモナカ、ピスタチオアイス、ポテチ、ギュウドン、タマゴカケライス、ポテチ、シーフードヌードル、カレーヌードルもいる。
みんな密偵として一緒に訓練を受けたから知っている顔だ。
密偵だった時は、みんなライバルであり、処分の任務が下れば敵。
でも、今日からは仲間だ。
友達だ。
みんな笑顔。
勇者神様と、タイセイに感謝。
タイセイは美味しい食べ物を差し入れてくれたと聞いた。
これらの食べ物は勇者神様が、欲してやまなかった食べ物らしい。
タイセイがスキルで復元したのだとか。
勇者神様の100倍ぐらいタイセイに感謝してるのは秘密。
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