第11話 ボス戦待ち

 入ったダンジョンは普通の洞窟タイプだった。かなり広いはずなのに人がそこそこいてモンスターとの戦闘にならなずただ歩くだけ。

 地図も貰っているから階段まで一直線だ。


「やっとモンスターがいた……」


 土ゴーレム……土で出来たゴーレム。心臓にあるコアを破壊することで停止する。


 ノシノシと重量感のある動きで私に向かってきている。心臓部分に赤い宝石みたいなのがあるけどあれがコアかな?

 めぐみさんは10階層の赤い宝石って言ってたしあのコアじゃないよね。


「まずは様子見しよっと」


 コアに向かって石を投げてみる。


「ん?」


 投げた石は見事にコアに当たりそのまま土ゴーレムごと貫いた。

 そのままコアを失った土ゴーレムは力無く崩れ落ちる。


「……そんなに力入れてないんだけどなぁ」


 バッタの足がもげるくらい、シロクマだと若干傷つくくらいの力で投げたんだけど土ゴーレムは一撃で倒れた。

 よくよく考えてみたら《危険察知》がモンスターの前にいるにも関わらず反応していなかった。

 もしかして私のいたダンジョン、高難易度ダンジョンだった?


「まあ、良いや。先に進もう」


 土ゴーレムを袋にしまって先へと進む。

 宝箱も見当たらないしつまらないダンジョンだね。なんて思いながら5階層まで到着した。


「……並んでる」


 5階層ごとに強敵が出るのはダンジョン共通らしく大きな扉の前で人が並んでいた。

 これ並ばなきゃいけないのか……。


「失礼、ここが最後尾で良かったかな?」


 しばらく並んでいたら後ろから背の高い女の人が話しかけてきた。


「多分?誰も来てないからここが最後尾だと思う」

「そうか、では並ばせてもらおう」


 そこで話は終わりしばらく沈黙が続いていたのだが……。


「君は1人で挑戦か?」

「まあ、そうだけど」

「その若さで凄いな」

「はぁ、どうも」


 一体何を話したいのか分からないがダンジョン前で私を止めようとしていたお姉さんと違ってこの人はかなり実力がありそうだ。


「……」

「……」


 なんかじっと私のことを見てくる。


「次、順番来たみたいだぞ」

「……あっ!」


 既に前に人はおらず、ボス部屋の扉が空いている状態だった。


「どうも!ボス倒してきますね」

「ああ、君なら余裕だと思うが気をつけるんだぞ」


 若干恥ずかしかったので早歩きでボス部屋へと入っていくのだった。


・・・

・・


 私は清水千歳(しみずちとせ)ギルド"ヴァルキリーに所属している剣士だ。

 Bランク探索者として日々、ダンジョンに潜り稼いでいる。


「いやー!みくは杖を直しに行くの!」

「今日はギルド総会だって言ってるでしょ!後日にしなさい!」


 いつも騒がしいギルドだが今日は一段と騒がしかった。


「どうした」

「千歳!聞いてよ!昨日みくの杖が壊されちゃったじゃん?それを直すのに赤水晶が必要なんだよ!それを取りに行こうとしたらゆかりが止めてきてさ!」

「だからギルド総会だって!ギルマスと副ギルマスは出席しないとダメなんだから!」


 確かに先日、みくの杖がモンスターによって破壊された。それの修理をギルドの鍛治担当がしていたはずだが素材が足りないと。

 それを取りに行こうとしていたのだが今日は月に一度のギルド総会……ここ一体、Bランク以上のギルドが集まる集会がある。余程のことがない限り欠席は出来ないのだ。


「それなら私が赤水晶を取ってこよう」

「本当!さすが千歳!ゆかりと違って話が分かるね!」

「はいはい、話が分からない女ですいませんね!問題が解決したならギルド総会に行きましょうねー」

「行くから!行くから引っ張らないでー痛いー!」


 みくはゆかりに頬を引っ張られながら車へと引きずられていった。

 私は少し準備をして赤水晶を取りにダンジョンへと向かう。


「赤水晶は10階層だったな」


 ダンジョンに到着し、すぐに中へと入る。

 このダンジョンは一度も攻略をしていないので順番に攻略しなければいけない。

 攻略自体はBランクの自分にとって簡単ではあるがボス部屋の混み具合によって時間がかかりそうだ。


「そろそろ5階層か」


 数回ほどモンスターと遭遇したが別に倒す必要も無かったので無視してきたおかげで素早く5階層まで到着できた。

 しかしやはり数人ではあるがボス戦待ちの列が出来ている。


「最後尾は……あの子か」


 並んでいる探索者の中で一際目立つ少女が目に焼き付いた。

 最後尾に並んでいる少女……片腕が見えない、隠している?いや、身体の動き的に欠損しているのか。身につけている装備品はかなり上質で性能も良さそうだ。


「失礼、ここが最後尾で良かったかな?」

「多分?誰も来てないからここが最後尾だと思う」

「そうか、では並ばせてもらおう」


 とても素直そうな良い子だ。しかし警戒心もかなりあるようでリラックスしているように見えてまるで隙がない。

 ここはEランクダンジョンだが実力はD……いやCはありそうだ。ふむ、あまり良くはないが気になる……あれを使うか。

 私は少女が気になり自身のスキルである鑑定を使ってみることにした。


???? Lv??(鑑定失敗)


生命力 ? 魔力 ?

筋力 B 防御 ?

体力 ? 俊敏 C


スキル: 《夜目》《着火》《直感》《投擲》《水魔法Ⅰ》《危険察知》……鑑定失敗


称号:鑑定失敗


 鑑定が上手く出来なかったといことは自分よりもれべが高い、あるいは鑑定を阻害するようなスキルを持っているということ。

 まさか自分よりも強いとは思ってもいなかった。


「君は1人で挑戦か?」

「まあ、そうだけど」

「その若さで凄いな」

「はぁ、どうも」


 これほどの強者にも関わらず少女は今まで見たことなかったがどこかのギルドに所属しているのだろうか。

 もし所属していないのであれば誘いたいが無理だろうな。


「次、順番来たみたいだぞ」

「……あっ!」

「どうも!ボス倒してきますね」

「ああ、君なら余裕だと思うが気をつけるんだぞ」


 もしまた会ったら名前を聞いて鑑定したことを謝ろうと思う。

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