六月は君と思い出に水を足す

今この世界が見えなくなって

今この世界が聴こえなくなった

過去の記憶だけで今を生きれますか?

それなのに雨音に心を弾ませて踊ってるあなた

雫一つでさえもったいない

そんな六月


ねえ、そろそろ気づいてよ

この雨がずっと続くって思ってるの?

ねえ、そろそろわかってよ

いくら雨に打たれても思い出は薄まらないって

水溜まりから映った思い出は何を思い出させますか?

濁った過去

透き通った未来

そんなのどうでもよくて

水溜まりを蹴って駆け出した


思い出を掴んだこの手を離したら

これが夏の向こうに行きそうで

時効の空に泣いた紫陽花はそんな僕を笑った

やっぱり思い出なんて馬鹿だ

そう思った瞬間手を離した自分に気がついた


ねえ、そろそろ教えてよ

どうやったら思い出は忘れられるの?

ねえ、そろそろ叫んでよ

この気持ちが忘れられないんだって

思い出が溜まった水溜まりに言葉は溶けていますか?

痛かった言葉

嬉しかった言葉

そんなのどうでもよくて

言葉を叫んで駆け出した


この口で幸せを望んだら

この人生が幸せじゃないみたいで

世界に溢れる言葉が不必要に僕を書いた

やっぱり言葉なんてただの道具だ

そう思った瞬間言葉に溶けていた思いを見逃した


もっと降って

もっと降って

そしていっそのこと世界を沈めて

そうしたら

思い出も言葉も過去も未来も

全部どうでもよくなるから

でも

君の涙には沈まないよ

雫一つでさえもったいないから

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