第7話 アーサー・ウィリアムズ (2)
僕は心のなかで大号泣した。
1つは彼の人生が壮絶だったからだ。もう1つははぐうだらしていただけの僕の人生が、しょうもないと自覚せざる終えなかったからだ。
第1話を思い出してほしい。僕は高校3年生だというのに夏休み中、将来どうしたいかなんて考えないでひたすらベッドの上でゴロンと漫画を読んでいたり、スマホをいじっていた。
それなのに彼ときたら!彼は幼い子どもの時から修行をつけてもらい「英雄」という名誉を掴み取ったのに信頼していた弟と親友に裏切られたのだった。
僕は俄然と彼を応援したくなった。
(絶対にいい転生先を見つける)
僕は羽ペンを取り、彼を表すキーワードを書き連ねた。
『 正義 英雄 剣 』
僕の書いた文字はやっぱり羊皮紙に染み込むかのように消えていった。代わりにぼんやりと星の形が浮き出てきた。やがてはっきりとした形になり最終的には4つの星が出てきた。下には名前が書いてある
アントゥワスキー星 p.1873星 ツイハク星 オルトライワン星
僕はその星の詳細を調べたかったのでヨル先輩に声をかけようと思ったが、先輩は
離れたところで電話をしていた。ここにも電話があるんだと意外に思ったが声をかけられる状況ではなかった。
試しにその星に丸でも書いて見ようか。アントゥワスキー星に丸を書いてみると
いきなりその星が拡大された。どうやら、これが正解のようだ。次第に星はカラーがつくようになった。まるで地球のような星だった海があって、緑がある。星の周りには文字が躍り出てきた。要約すると以下の通りだ。
アントゥワスキー星は森の精霊と海の精霊がいる。2つの精霊はこの星が生まれたときから支え合ってきた唯一無二の仲間だったが次第にお互いを攻撃し合うようになってしまった。最近はこの争いが苛烈になってきたので収めるために転生者がほしい。
しかし精霊との戦いは魔法では相性が悪いので剣を扱う者がいい。
他の星も同じ要領で調べて見た。結論、僕はツイハク星がいいと思った。
まずp.1873星とオルトライワン星は論外だった。カラーでその星を見たときは酷かった、p.1873星は星全体が真っ赤な砂漠だし、オルトライワン星は真っ黒な霧みたいなものに覆われていた。これでは彼の望むスローライフは到底難しいと判断した。
その点ではアントゥワスキー星とツイハク星は緑がある星だった。
ツイハク星が求めている転生者は正義がある革命者とのことだった。
ツイハク星に転生すればスローライフが送れるかどうかは本人しだいだが、少なくとも剣を握ることはないと判断した。なので彼の書類にツイハク星と書き、ツイハク星の詳細と選んだ理由を書いた。
ヨル先輩に提出した。星を調べている間に電話は終わっていた。
しかし痛烈な言葉が放たれた。
「却下です。一体何を考えているんですか」
無表情で上の言葉を言い放たれた時、僕のHPが0になる音が聞こえた。
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