第14話「ゾンビ・レクイエムと、偽者の逆襲」③

ヒナ:「あなたは……“本物”になれなかった」


 


中央制御塔・最上階。

銀の髪を揺らしながら、ヒナは虚ろな目でレイジを見つめていた。


 


クラリッサはレイジの隣に立ち、レクイエム・ゾンビとして黄金の翼を揺らしている。

その背後には、なぜかテンションが異様に高いゾン美応援団が整列していた。


 


「レ〜イジさまァァァァァ!惚れてまうやろーッ!」


「クラリッサ様もイイ女〜〜〜ッ!推しが並ぶって尊すぎて死ぬ〜〜〜!」


「もう死んでるけどな!」


\ゾンゾンぞーん!/


 


レイジ:「やかましいわ!」


 


ヒナ:「……騒がしいですね。無駄に活気があって、制御不能な世界。

    こんな世界は、私が終わらせるべきなんです」


 


そう言うと、ヒナの背後から黒い霧が噴き上がった。


その中心から現れたのは、巨大なゾンビ兵器――

“Z.A.R.I”(ゾンビ・アンドロイド・レギオン・イミテーション)。


 


レイジ:「うわー、絶対ラスボスじゃん!

    これに勝てって? ていうか名前読みにくっ!」


 


クラリッサ:「Z.A.R.I(ザリ)は……ヒナの設計思想そのもの。

      すべてを“制御”するために生まれた、ゾンビと機械の融合兵器……!」


 


ヒナ:「彼らの“愛”はエラーです。

    私はそれを、全て“上書き”する」


 


その瞬間、Z.A.R.Iが大量のゾンビ信号を発した。

空が濁り、街のゾンビたちが暴走し始めた……かと思いきや、


 


ゾンビA:「……え、指示……うざ……」


ゾンビB:「俺の推しクラリッサなんで、ちょっと無理っすわ」


ゾン美:「レイジさまの笑顔に比べたら、命令とか無意味ですわ!」


 


まさかの拒否反応。


ヒナ:「……信号、弾かれてる?まさか……」


 


クラリッサ:「“感情”で繋がってるゾンビには、

      もう強制信号は届かない。みんな……心で生きてるのよ!」


 


そのとき、Z.A.R.Iが咆哮を上げて暴れ出す。


 


レイジ:「おいクラリッサ! あれどうにかできるのか!?」


クラリッサ:「理論上は、ワタシの《レクイエム・ソング》で制御可能……でも、

      成功する確率は3.14159%、つまり――」


 


レイジ:「パイ!? いや、どっち!? 食べるやつ!? 数学!? どっち!?」


クラリッサ:「3%くらいってこと!」


 


レイジ:「わかりづれぇえええええ!!」


 


その間にもZ.A.R.Iの攻撃が始まった。

高層ビルをなぎ倒し、レーザーを放ち、ゾンビたちを「再制御対象」としてロックオンする。


 


ヒナ:「止められるものなら、止めてみなさい。

    これは“本物の世界”を築く力。あなたたちの“愛”なんて、統計にすら残らない幻想よ」


 


クラリッサ:「じゃあ――幻想が、現実を超える瞬間、見せてあげる!」


 


そう言って、クラリッサは空へ舞い上がり、

《レクイエム・ソング》を奏で始めた。


 


透き通るような歌声が、廃墟となった世界に響く。


 


ゾンビたちの心が、共鳴した。


 


ゾンビA:「……懐かしい……この声……」


ゾンビB:「オレ……生きてた頃……恋してたなぁ……」


ゾン美:「わたし、今も恋してる♡ レイジさまぁ♡♡♡」


 


レイジ:「今のとこ全部お前の話やないか!!」


 


しかし、その歌は確かに――

Z.A.R.Iの動きを、一瞬止めた。


 


ヒナ:「……バカな……解析不能な……音……?」


 


Dr.ミナミ(通信):「ヒナ、これは“愛”よ。あなたは“計算式”で全てを理解しようとした。

           でもね、愛は時々、“想定外”になるの。だから尊いの」


 


ヒナ:「想定外なんて……不要……私はただ、兄貴に認められたかっただけなのに……!」


 


レイジ:「ヒナ……!」


 


レイジはクラリッサの背に乗り、空へと飛び上がる。

Z.A.R.Iに突撃するその姿は、完全にファンタジーRPGのラストバトル。


 


クラリッサ:「レイジ、今、ワタシの中に“愛のエネルギー”が満ちてる!」


レイジ:「俺、そういう話急にされると照れるぞ!?」


クラリッサ:「照れてる暇ない!“あの技”使うわよ!」


レイジ:「あの技!? 今初めて聞いたけど!?」


 


クラリッサ:「レクイエム・ラブ・ブレイクッ!!」


 


黄金の光がZ.A.R.Iを貫いた。


そしてZ.A.R.Iは、静かに動きを止め、爆散した。


 


その爆発は、どこか優しい音だった。


 


 


◆◇◆


 


戦いは終わった。


中央制御塔の最上階、ヒナは崩れ落ちるように座り込んだ。


 


レイジがそっと近づく。


 


レイジ:「なあ、ヒナ。

    “偽物”だからこそ、誰かの“本物”になれることもあるんじゃねぇの?」


 


ヒナ:「……うるさい。

    兄貴のそういうところ、嫌いだった。

    でも……少し、だけ。羨ましかった」


 


レイジ:「なら、これからはその“少し”を大事にしていこうぜ。

    偽物同士、な」


 


ヒナ:「……兄貴も、結構バカですよ」


 


クラリッサ:「バカ同士、似た者兄妹ってことですね♡」


 


ゾン美:「バカ大集合ですね〜♡(尊)」


ゾンビたち:「バカバンザーーーイ!!」


 


\ゾンゾンぞ〜〜〜ん!!!/


 


 


◆◇◆


 


こうして、終末(せかい)は変わり始めた。


ゾンビと人間が共存する、少しバカで、ちょっと優しい世界。


 


誰かの“愛”が、想定外の奇跡を起こす――


そんな物語が、ここに生まれた。

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