第14話 秋、帰り道


放課後の昇降口。

蓮は靴を履き替えながら、横でひながスマホをいじっているのを横目で見ていた。


「なにを見てんの?ひな?」

「んー? もち米を使ったレシピ何かないかな~と思って調べてる」

「…え?まだその話、続いているの?」

「そらそうやろ。あの大量の米を捨てたら、間違いなくバチが当たるって!」


蓮は深いため息をつく。

もち米の話題は、文化祭からもう何度目だろう。

今回のお米騒動のきっかけを作った、であるとはいえ、そろそろもち米の話題から離れたい…

ただ、「お米を捨てる」という行為は、ひなの言う通り、バチが当たるかもしれない。

…が、お米の有効な使い道について、俺は知識が無いので、どうすれば良いのか分からない。

むしろ、そんなことに対して、真剣に取り組もうとするひなの姿が、逆に凄いなと思った。




その日の帰り道、田んぼ沿いの道をひなと一緒に並んで歩く。

山の木々はすっかり赤や黄色に染まり、川面には落ち葉がゆっくり流れていた。


「そういや、れん。もうすぐ期末テストやな…!」

「…あー、そうだった、期末テストなの、すっかり忘れてたわ…」

「ほら、れん、夏休みはあちこち行って遊びすぎてたから、成績とかヤバいんちゃうの?」

「……いや、ひなも普通に成績、危ないと思うけど…?」

「うち?うちは大丈夫や! もち米の炊き方なら満点やで」

「…もち米の炊き方のテストじゃなくて、期末テストの話をしてたんじゃないの!?」


そんなくだらない会話で笑い合いながら、商店街を抜けていく。

八百屋の前には地元で採れた柿が並び、魚屋では秋の味覚である秋刀魚が並び始めていた。

秋から冬へのゆっくりした季節の移り変わりが、ふたりの周りを包み込んでいく。


別れ際に、ひながポツリとつぶやく。

「なぁ、れん?クリスマスってさ、空いて……」

「えっ?」

「…あ、いや、なんでもない。もち米の話や」

「絶対、なんでもなくないだろ?だって、クリスマスが――」

そう言いかけた瞬間、ひなに口を塞がれて、すごい顔で睨まれた。

…たぶん「おい!余計なことを言うな!」ってことだと思う。


そうやって軽い口げんかをしながら、秋の一日がゆっくりと流れていった。

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