第6話
薄いシャツが裂け、赤が広がる。布を押さえる手も震えていた。
「……ばか。あんた、ほんっとばか」
「おまえのためにやったわけじゃない」
涼しい顔でそう言う。
言葉も、態度も、いつもと変わらないのに──
……なんだろう。少しだけ、胸が熱い。
その一瞬後。怜司の端末が振動した。空中にホログラムが開く。
《烏丸代表! 本社が──まずいです! 陰陽庁の特別監査部が突然来て……! 部屋の資料、押収されます! 早く戻ってきてください!!》
緊迫した声。背景には社員たちの騒ぐ様子。
真白が顔を上げたとき、怜司もまたホログラムを見ていた。
「行くぞ」
「は? あんた見てよ。血、流れてるじゃん! これ、行ける顔!? 無理無理無理!」
「じゃあ──代わりに、行ってくれるか」
真白は一瞬、絶句した。
でも、すぐに胸を張る。
「……まかせなさいよ。私は、妻だからね」
◇
その大会議室は、異様な空気に包まれていた。
スーツ姿の陰陽庁監査官たちが十数名。
壁際には書類用パイプファイルが山と積まれ、モニターには稼働中の監査ツールが並ぶ。
社員たちは緊張の面持ちで立ち尽くしていた。
「君が代表かね?」
部屋の奥から、ひとりの男が歩み出る。
眼鏡をかけた初老の男。背筋は真っ直ぐ、書類を抱えた手にはためらいがない。
「
真白は一瞬怯んだが、ぐっと背を伸ばす。
「私が……代表代理です。妻ですから」
「そうですか。それでは──
「…………はい?」
「イエス、と受け取りました。押収班、入れ!」
監査官たちが一斉に動く。
社員が持っていた書類が取り上げられ、USBデバイスでPCのデータがコピーされていく。
ただの抜き打ち調査ではない。
これは「監査」──陰陽庁が企業に対し、法律の遵守や霊的業務の適正性を検証するために行う正式な検査だ。
特別監査部が動くとき、それは──企業の根幹を揺さぶる。
真白は、ぐっと拳を握った。
(こわい……けど)
「ちゃんと、守ってやる。あんたの会社。だってこの会社は私が潰すんだから!」
真白はひとつ深呼吸し、泉川のほうを振り向いた。
「じゃ、始めましょうか。
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