陰陽師ですが、AIに仕事も結婚相手も奪われました。式神ってどうやって召喚するんでしたっけ?
@THEABAN
第1話
「……はあー。今月も祓い屋の仕事、ゼロっと……」
畳の上にごろりと寝転び、天井の染みを数える。もう十五日目だ。
霊も祓ってないし、札も打ってないし、式神なんてここ三ヶ月見てない。
見ないどころか、たぶんアイツらもう存在忘れてる。私のこと。
「陰陽師の仕事もAIがやる時代とか……マジ終わってるんだけど……」
スマホをポチポチしても、メールは来ない。通知も来ない。依頼なんて、もちろん来ない。
「
家はボロい。築百年、雨漏りあり、床軋みMAX。
床の間に飾られた掛け軸には、“厄災無用”と墨書きされている。
でも、無用になったのはうちの存在そのものだ。
「ばあちゃんの饅頭食べたいよ〜……」
おばあちゃんは去年、天国に引っ越した。地縛霊になるほど未練があったらしいけど、
あの例の企業のAIとやらがちゃちゃっと“浄化”して送っていった。合理的に。情緒ゼロで。
そのとき、スマホがぶるっと震えた。
「ん?」
通知欄に表示された差出人を見て、思わず声が漏れる。
——送信者:
——件名:【重要】婚姻候補者としてのご来訪について
「……は?」
おばあちゃんを天国に送った例の企業だ!
ポチっと開いて、本文を読む。
《神楽坂 真白》《かぐらざか ましろ》様
貴殿は、
つきましては、三日以内に本社第1応接室までご来訪いただけますようお願い申し上げます。
「……はあああああああああ!?!?!?」
思わずスマホを放り投げる。畳の上でカコンと鳴った。
手のひらに残った熱だけが、現実だと言ってくる。
妖を“科学的に処理”する技術を確立して、陰陽師を絶滅寸前に追いやった超巨大企業。
というかもう絶滅してるかもしれない。
そしてその後継者が。わざわざ私に、結婚しろって言ってきた。
「なにこれ、嫌がらせ?煽り?は!?え!?マジで!?!?」
スマホは黙って、再通知を震わせた。
※ご来訪いただけない場合は、所定の手続きにより政府管轄機関から強制婚姻執行が行われますのでご注意ください。
「うっわ、マジで国ぐるみじゃん。ふっざけんな!!!」
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