『実は色々と無理がある?』※本編111話のネタバレ注意!

「命を背負うなら常に全体を見ておけ……この女性は俺たちが面倒を見る、悔しければお前が奪いに来ることだな」


能力【不条理】。

カミュ・シーポスのみが扱える特有のオーラ属性、【虚質】と組み合わせることで本来届くはずのない攻撃を届かせてしまう防御不可能な力。特性や魔法にも応用が利くため、遠中近距離全てに対応できる。


(とりあえず鬼族のような変身はあの子を徹底的に殴って斬って解除できたな…椿さんの報告書、手伝わないとな万が一椿さんの能力を発動させたら俺が殺される…!余計な心労も必要性を感じない憎まれ役も、全てアーサーさんのせいだ!!)


―遡ること数時間前…。

場所はアンスール地下、【ギルド】直属戦闘部隊本部、【学園】の先生と同時に第1部隊隊長のアーサー・アブソリュートさんに呼び出されたカミュは、部屋の扉をノックする。


「…何してるんですか」


「ん?…これはテレビゲームと言って、異世界から転移してきた日本の文化の1つだ、“電波”も“電線”も、日本の皆様と我々能力者の協力で互いの文化を共有し合っている、急速的に発展した文化を、私たちが先陣を切って体験することで皆の安心を―」


「つまり、毎日仕事で娯楽に飢えていると、だから免罪符で仕事中に遊んでいるんですね、早く俺を呼んだ理由を話してくださいよ、自室に帰りますよ?」


わざわざ自腹で購入したテレビとゲームに夢中な上司を放って部屋を出ようとする。

元々アーサーさんは理由もなく部屋に呼んではくだらない話をしてくる、断れば良いのだが、本当に大事な話や任務を命じられるため、断るに断れない。


「今回は大事な任務の話だよ、英雄の村レウスに近頃不可思議な現象が起きている、夜に霧が発生し吸い込んだ者を夢の世界へ誘っている…霧の中心に人影を見たという報告もある、もしかしたら例の人工魔物かもしれない、実力を考えて第10部隊隊長のカミュと第3部隊隊長の椿に現場へ向かってくれ」


それと…とソファから立ち上がったアーサーさんは、机の引き出しから写真を1枚取りだし、カミュに渡す。

誰か聞こうとする前に、アーサーさんが話し始める。


「彼の名前はヒイラギ・ハクト、急成長中の次世代を照らす英雄の光だ、君たちには彼に世界へ挑戦することの厳しさを多少強引でも教えてほしい、頼めるか?」


「…わざわざ憎まれ役する必要性あります?普通に手合わせして負かせばいいのでは?」


「それじゃダメだ、生温い、今の彼に必要なのは挫折と強い願望だ、だから頼んだぞカミュ、たくさん挫折を経験した君だからこそ任せられる」


―そして現在。

ヒイラギ・ハクトを徹底的に負かしたカミュはゼラニムを背負ってその場から去る…。


(…罪悪感がすごい!最後泣きそうな顔でこっち見てたし…というか誰も俺の言葉にツッコまないのかよ!かなり無理あったろ…!クソ!これを報告書にまとめる椿さんが酒飲みながらゲラゲラ笑ってんのが目に浮かぶ!3ヶ月はネタにされる…!別にこの女性を救えるならさせればいいだろ!!)


ハクトから見たカミュは、強く厳しい人物。

しかし、【ギルド】の隊員から見たカミュは、苦労の絶えない可哀想な人として見られている……。










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