五の道 旅は道連れ
「リューマ、しばらく俺達と一緒に行動しないか? すぐには無理だけど、ここを出たら街でリューマが生活できるように協力するから、その前に俺達の目的に付き合ってくれ!」
飯を食った後、ケーシン達が離れた所で相談していた内容を伝えて来た。ぶっちゃけ、コイツらが何を話していたのかは丸々聞こえていた。
普通なら聞こえない距離と声量だった筈だが、若返った俺の耳には普通に届いていた。若くなった事で、老化で抑えられていた反動があったのか、視力も聴覚もずいぶんと鋭くなっているようだ。
まあ聞こえていたお陰で、ケーシン達がいい奴らだって事は良く解った。多少の手伝いくらいなら喜んでするさ、一飯の恩があるからな。
「そりゃ俺も願ったりだ。しばらくの間、よろしく頼む!」
俺が体を起こして胡座をかいた状態で頭を下げると、ケーシン達も慌てたように座り、そろって頭を下げて来た。
…………ほらな? いい奴らだろ?
◇
「オラァッ!」
『『ギャビィッ!!??』』
俺の一蹴りで三匹の小鬼がまとめて吹っ飛んでいった。…………ああ、そういや小鬼じゃなくてゴブリンだったか? どうもここはダンジョンとか言う場所で、ここに巣食っているのがこのゴブリンとか言う生物(?)らしいのだ。
ちなみにあの豚鬼はオーク。鬼ではなくモンスターだと言っていた。ここではあまり見かけない種で、別のダンジョンならアレばっかりいる所もあるとか言っていた。そこに行けば肉には困らなそうだ。
「リューマ! お前は装備も付けてないんだから後ろに居てくれていいんだぞ? 戦いは俺達がやるから!」
どうもケーシンは鎧を身に付けないで暴れている俺が心配らしい。この程度の奴らの動きなんて止まって見えるから間違ってもケガなんざしないが、心配してくれているのは解る。
だが、俺にも『矜持』ってもんがある。任侠の漢として、人が戦ってんのをただ後ろで見てるって訳にもいかねぇのよ。
「そうは言ってもなぁケーシン。子供に護られて後ろにいるってのは格好つかねぇだろ。それに、俺は後ろにいるのは性に合わねぇんだよ」
「子供って…………。俺達は大人だぜ? 大体お前だって俺達とそう変わらねぇじゃねぇか」
「大人? …………おいマルザ、お前幾つだ?」
「十五だよ。成人したばっかだけど、子供じゃねぇ!」
十五と聞いて『子供じゃねーか!』と言いそうになったが、俺は何とか飲み込んだ。マルザの顔立ちを見て、コイツらが日本人じゃない事を思い出したからだ。
まぁ、成人になる年齢ってのは文化の違いで差があるらしいからな。コイツらの国じゃ十五で成人だって事か。
「そうか、そりゃ悪かった。だが俺より年下なのは間違いねぇだろ。ならやっぱり、俺が後ろに下がるのは無しだ」
「あの、リューマは何才なんですか?」
「ん? ……………あぁ、幾つだったかな?」
正直に言うなら『享年八十八』か。だが、この体じゃ説得力がない。だから俺は適当に誤魔化した。
「なんだよ、自分の歳もわからねぇのかよ」
「よせマルザ。リューマは『迷い人』だって話したろ。迷い人は、記憶の混乱があるんだ」
俺の誤魔化しにマルザがつっこみ、ケーシンがフォローをしてくれた。
しかし『迷い人』ね。ここに来て、俺はひとつの疑問を持っている。…………ここ、地獄じゃないのか? という事だ。
俺は死んだ。それは間違いない事だ。刺青に色を入れ直したり遺影用の写真を撮ったりと、死ぬ為の準備だってしたし、実際に死んだという実感もある。
だがそれと同時に、いま俺は生きている。それも実感として確かにあるのだ。
しかしだ。地獄じゃないなら何処だここ? って話になるんだがな。と言うかだ。地獄以外に俺が若返って生きてられる場所なんか思い付かないぞ。ケーシン達が言っている『迷い人』といい、さっぱり状況が解らん。
『ギシャァァッ!!』
「お、新手だな!」
「あっ、おい! だから装備も無しに突っ込むなって…………!」
後ろでケーシンが何か言ってるが、どうせ戦うなら早めに潰したほうが良い。それに、奥にも弓を構えてるのがいるしな!
俺は棒切れを持ったゴブリンに近づくと、相手の攻撃をいなしながら頭を鷲掴みにした。そして飛んで来る矢を掴んだゴブリンを盾にして受けると、体を捻りながらそのゴブリンを振りかぶり、弓を持ったゴブリンに向けて投げつけた!!
『ギャギャギャッ!?』
『『ギャベラッ!!??』』
ズガンッ! と音をたてて俺が投げたゴブリンは命中し、弓を持っていたゴブリンもろともに消えていった。
「…………無茶苦茶かよ。おいケーシン、バケモンだぜアレ」
「…………ゴブリンを投げてゴブリンを倒す人なんて、聞いた事がないよ…………」
「…………この程度のダンジョンだと、リューマに装備はいらないんだな」
何か後ろで好き勝手言ってるのを聞きながら、俺はゴブリン達が消えた所から黒い石を拾った。
なんでもこいつは『魔石』と言うらしく、モンスターが必ず残す物だそうだ。どういう使い道があるのかは知らないが、街に行けば買い取ってくれるらしいので、拾い集めている。
金は大事だからな。生きてくのに必要とまでは言わねぇが、金があれば楽に生きられるのは確かだ。
そして、そこからしばらく歩いた先、平原のど真ん中に唐突に広めの下り階段があった。見上げれば空があるのに、ここはダンジョンってやつの地下三階。俺達が目指しているのは地下五階だそうだ。
「…………本当に階段があるとはな」
「そりゃあるだろ、ダンジョンなんだから」
先の見えない階段の前で立ち止まっていると、軽口を叩きながらマルザが階段を下りていき、ケーシンとネルも躊躇わずに下りていった。
なので俺も、覚悟を決めてこの訳の解らねぇ階段に足を踏み入れた。
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