絶対に略称を許さない彼女が愛おしすぎる!

まみ。

第1話 エバー・レディー・シャープペンシル

「今日は彼女との初デート。緊張するなぁ。今のうちに、デートプランのメモを確認しておこう。」


「メモランダムを確認してたの?」


「えっ?もしかして僕の独り言が聞こえてたのかな?恥ずかしいなぁ。あ、そのピアス、似合ってるね。」


「ピアスド・イヤリングね。」


「ピアスの正式名称は、ピアスド・イヤリングなんだ?」


「そうだよ。それで今日は、どこに行くの?」


「カラオケはどうかな?」


「いいよ。私も空オーケストラは好き。」


「カラオケもカラオケじゃないんだ?」


「空オーケストラだね。」


「じゃあ早速、か、空オーケストラに行こう。電車とバス、どっちに乗ろう?」


「電動客車とオムニバス、どっちにしよっか?」


「今、何て言ったの?」


「電動客車とオムニバスね。」


「電車とバスって、正式名称じゃなかったんだ?あ、オ、オムライスじゃなかった、オムニバスはエンストしちゃったみたいだ。エンストじゃなくて、エンジンストップかな?」


「エンジンストップは和製英語だね。エンジンストールね。」


「エンジンストールって言うんだ?」


「ストールは、失速や停止って意味ね。」


「そうなんだね。オムニバスはエンジンストールしてるから、えっと、で、電動電車で行こう。」


「電動客車ね。電動貨車や電気列車って言ってもいいけど。」


「よし、カラオケじゃなかった、空オーケストラボックスに着いた。ここにボールペンで名前を書くのか。」


「ボールポイントペンね。」


「ボールポイントペン?あ!これよく見たら、シャーペンだった!」


「エバー・レディー・シャープペンシルだったんだね。」


「エバー?」


「エバー・レディー・シャープは、常に準備されて尖っているって意味だから、エバー・レディー・シャープペンシルね。」


「そんなに長いんだ?すぐに空オーケストラに入れてよかったね。でも部屋が寒いなぁ。エアコンが効きすぎだ。」


「エアコンディショナーね。」


「そっか、エアコンはエアコンディショナーなのかぁ。リモコンはどこだろう?じゃなくて、リモコンディショナーか。」


「リモートコントローラーなら、ここだよ?」


「リモコンはリモートコントローラーなのかぁ。スマホはここに置いておこう。あ、じゃなくて、スマートフォントローラーか。」


「スマートフォンは、スマートフォンでしょ?」


「そ、そうだった。緊張しすぎちゃって。飲み物は何にする?僕はチューハイにしようかな?」


「私も焼酎ハイボールでいいよ。」


「焼酎とハイボール?」


「同じのでいいって意味ね。」


「あー、同じのだね!あれ?マイク、音入ってるかな?」


「マイクロフォンの音は入ってるみたいだよ。」


「マイクロフォン?あ、すごい!演歌も歌えるんだ!」


「演説歌だよ?」


「演説歌?演歌じゃなくて?」


「元々は風刺の歌として生まれたんだよね。」


「そうなんだ?詳しいんだね!ソフトクリームとかも食べる?」


「ソフト・サーブ・アイスクリームね。」


「アイスクリーム?」


「同じのでいいよ。」


「あ、同じのなんだね!今日はたくさん歌ったね。ここは僕が払うよ。」


「私も払うから、半分ずつにしようよ。」


「ワリカンでいいの?」


「割前勘定ね。」


「えっ?あー、わ、ワニマエ勘定ね!」


「割前勘定ね。」


(第2話に続く)

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