第22話 迷宮に向けて出発しました
「ゴメン!」
ロンバウトは慌てて扉を閉めてくんれたけれど、後の祭りだった。
ステファニーのホテル中に響いきわたった悲鳴を聞いて、慌てて警備員やらツアーのお客様やヨハンが飛んで来たのだ。
慌てて服を着て出てきたロンバウトは私達に平謝りに謝っていた。
ロンバウトは、扉があるけれど何の扉だろう?
と不思議に思って開けた所がまさか私の部屋に繋がっているなんて想像もしていなかったとのことだった。
普通はコネクテイングルームでも使わない場合は鍵がかかっているはずなのに、その鍵がかかっていなかった。こちらから扉の鍵を開けてくれとは一言も頼んでいないのだ。完全にホテル側のミスだった。
その点はホテルの支配人がやってきてこちらも平謝りに謝ってくれた。
元々この部屋はファルハーレン伯爵夫人の部屋だった。それを部屋割り変更に夫人が応じてくれたからロンバウトに変更した部屋だ。
このホテルは古いので建て増しや改築も多く、部屋番号だけ見て部屋割りをやり直したから、私の215号室とロンバウトの26号室が、まさか隣の部屋だとは思ってもいなかった。
諸々の条件が重なった結果こうなったんだけど、ホテルの部屋の扉の鍵が閉まっているかどうか私がさっさと確認したら良かった話だった。
それに私一人ならあんな悲鳴を上げなかったのに、そこにいたのがステファニーだったのが運のつきだったのだ。
「せっかく、ロン様がリーゼさんに夜這いをしに行ったのに、ステファニーさんが邪魔するなんて……」
ファルハーレン伯爵夫人がステファニーを非難するし、
「夫人、申し訳ありません。私も気が利きませんでした」
と悪乗りしてステファニーまで謝り出す始末だ。
「若い者は良いですな」
モーリスまで羨ましそうにこちらを見るのは止めてほしかった。
「リーゼは絶対に許さない!」
せっかく仲良くなれたと思ったのにエーディットは私を射殺すような視線で睨み付けてくれるし、もう最悪だった。
「部屋を変わりましょう。こんな危険な奴の隣にリーゼさんをいさす訳にはいきませんから」
ヨハンもいきり立って言いだしてくれるし……
結局この騒ぎが終わって私が寝たのは日付の変わった後だった。
前の日にステファニーの愚痴に付き合って半徹夜、今日は事故にあって疲れ切っていたのに、最後はこれだ。
翌朝早くに目覚ましで起き出した私は、全然寝たりなかった。
でも、そんなことは言ってられない。
今日はこのツアーのメインイベント迷宮散策なのだ。
半分寝ぼけ眼で食堂に降りると食事をしている眠そうなロンバウトがいた。
「おはようございます」
「おはよう。昨日は申し訳なかった」
会うなりロンバウトが謝ってきた。
「いえいえ、こちらこそ、コネクティングルームの鍵がかかているかどうかの確認をしていなくて申し訳ありませんでした」
私は謝った。昨日は本当に時間がなくて、確認しなかったのだ。
でも、時間がなくてもしなかった私のミスでもあった。
二度とこのようなミスはしないようにしようと決意した。まあ、私は次から次に問題を起こすから1つやらなくなると次のミスをするから中々なくならないけれど……
いつかはなくなるはずだ……いつかは……
「まあ、また、添乗員の泥棒猫がロン様を狙っておりますわ。本当に何でしょう。昨日も夜這いをかけようとするし」
そこにエーディットがやってきて、私とロンバウトの間に入って来て私を睨みつけてきた。
「エーディット様。私は夜這いはかけておりません」
「エーディット嬢、昨日悪かったのは私なんだから」
私が否定して、ロンバウトが言い訳してくれたが、
「まあ、ロン様はお優しすぎますわ。コネクティングの部屋の鍵をしなかったのも添乗員の方の仕業じゃありませんの?」
「それはないと思うが」
エーディットの言葉をロンバウトが否定してくれた。
「そうやって騙されてはいけませんわ」
エーディットは全く聞く耳を持たなかった。どうしようかと悩んでいたら、丁度そこにファルハーレン伯爵夫人らが来たので、私はそちらの方の相手をすることにしたのだ。
それからは客が次々に現れてエーディットどころではなくなったのだ。
もう少しエーディット嬢ときちんと話をしておけば良かったと後悔したのは後になってからだった。
朝食を終えると私達は馬車にそれぞれ乗り込んだ。今日はこれから久方ぶりに特別にこのツアー客にのみ公開される迷宮に向かうのだ。皆の顔を見ると期待に満ちていた。
今日は遅刻するものもいずに全員が揃ったと思ったら今度は剣士のヤンがいなかった。
「えっ、どうなっているの?」
そう言えば飲みに行くとか言っていたな……帰ってこなかったんだろうか?
相棒のもう一人の男に聞くと昨夜はヤンが一人で飲みに行ったと言うのだ。
ヨハンがフロントに確認に行ってくれるとヤンは昨夜帰ってこなかったみたいだ。
やむを得まい。
私達は相談してヤンを置いていくことにした。
本当に飲み過ぎないように注意したのに!
私はお冠だった。
そんな私達を乗せて馬車はメイベルの合図で動き出したのだ。
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