第4話 第二連隊長は病弱エリートらしい

――その日、俺はミレリアに案内され、“第二連隊”の管轄区域に足を踏み入れた。


俺が第一連隊長と良くはない出会い方をしたが、第二連隊長も気になってミレリアと一緒に行くことになった。




補足だが師団という物は様々な部隊で構成されている。


例えば分隊をまとめた物を小隊、そして小隊をまとめた物を中隊。


そこから大隊になり連隊または旅団となる。


それらをまとめたものが師団というものだ。




そして各国によって師団内容が変わる。


連隊が3つあったり4つあったり、そもそも連隊を廃止して旅団として運営してるのも多い。


その方が柔軟性が高いからだ、簡単にいうとちっちゃい師団だと思えばいいな。




だがこの俺が担当した師団は連隊として2つあるってことらしいな。




近々組織の改革もしなければならないのかと悩んでいると第二連隊長がいる場所までたどり着いた。


第一連隊の荒廃ぶりとは違い、ここの空気には張り詰めた緊張感があった。


砦の壁には異国風の装飾、巡回する兵士は耳が尖った者、獣の尾を揺らす者、そして皮膚の色すら違う者もいる。




「……異種族ばっかりだな」




「ええ。第二連隊は“異種族戦闘集団”よ。元々は傭兵隊だったのを、帝国軍が吸収した形なの。クセもあるけど――実力は本物」




俺が門をくぐると、すっと兵士が道を開ける。だが、俺の存在に対する警戒の色は濃い。




そして、中央の小さな白い建物の扉が開いた。




「――はじめまして、指揮官様」




現れたのは、一人の少女だった。


淡い銀髪、透き通るような肌、そして儚げな雰囲気を纏った、息を呑むほど整った顔立ちの少女。


その体には薄手の軍装をまとい、胸元にはしっかりと第二連隊の紋章が刻まれている。




「私が、第二連隊長のリュミエールです」




「……見た目は、まるで聖女だな」


「よく言われます。病弱な聖女と」




リュミエールは小さく、どこか淋しげに笑った。


だが笑顔は、清らかでどこか悲しげで――でも、不思議と芯の強さがあった。




「私は身体が弱くて、前線には出られません。でも、戦術なら……誰にも負けません」




ミレリアが補足する。




「彼女は、異種族たちから“白の巫女”と呼ばれてるわ。数々の戦術で彼らを勝利に導いた天才よ。異種族が彼女にだけは絶対服従してるのも頷ける」




「すごいな……」


「でも、ひとつだけ忠告しておくわ」


ミレリアが耳打ちするように言う。




「彼女、見た目に反して、セクハラとかには容赦しないわよ。前任の副官、からかって触ろうとした瞬間、壁にめり込んだんだから」




「それは……ご愁傷さまだな」




「……失礼ですが、聞こえてますよ?」


ふわっとした声のまま、リュミエールは微笑んだ。




「私、こう見えても投げ技が得意なんです。骨はよく折りますけど、自分じゃなくて“相手の”ですから」




笑顔が怖い。


「だ、大丈夫だって。俺、紳士だし!」




「本当でしょうか?」


――妙な汗が背中を伝う。




「噂は聞いてますよ、貴方が皇帝の前でパンツを出したと」


「そ、それには理由があるんだ!」


リュミエールの笑顔が本当に怖い。




「ふふ……ご安心ください」


リュミエールはやわらかに微笑む。




「私は指揮官様を、まだ“壁に叩きつけるべき存在”とは判断しておりません」


「お、おう……それは……光栄だ……」


口ではそう言いながらも、俺は一歩後ずさる。


彼女の笑顔には、どこか“信頼”が込められているようだった。

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