偶然

「又吉、お前の叔母さんが経営してる喫茶店って久米島にあるのか?」

 宜野座は団扇を仰ぎながら机に突っ伏している又吉に訊く。

又吉「そうそう。私の実家が久米島にあんのね。ナポリタンがめっちゃ美味しいの!」

調理部は一度だけ久米島に合宿したことがある。

野球部やサッカー部じゃあるまいし。

久米島は味噌の名産地である。

久米島で食べた味噌ラーメンは超絶美味しかった。

「冷やし味噌ラーメンもあるんだよ!『拉麺やっさん』には」

 又吉はスマホで久米島の有名ラーメン屋『拉麺やっさん』の冷やし味噌ラーメンの画像を宜野座に見せる。

「ラーメンの仕込みは大変だからな」

「そうだね。私もラーメン修行したい」

「パティシエにラーメン修行は必要ないだろ」

部室のテーブルにはヴィンテージ物だと思われるヤンバルクイナの置物、小さな観賞用植物、テディベア、サーターアンダギーの写真がプリントされたクッションなどがある。

サーキュレーターで暑さを凌いでいる仲村は合宿って楽しいですよね!と女の先輩である上間と話していた。

「宜野座、上間さんって仲村さんと仲良かったの?」

「さあ…………」

 仲村は沖縄スイーツをこよなく愛している。

 ジーマミー豆腐好きの又吉は揚げ物以外のスイーツを愛している。

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