004 神への叛逆

 あの「唯一の光」であった彼女は、僕にとって唯一の「神」になっていた彼女は――




 ――僕を裏切った。




 どれほどの夜を泣いて過ごしただろうか。数えきれないほど、死にたいと思った。




 ――けれど、それでも僕は、彼女が元に戻ってくれると、心のどこかで信じていた。




 朝の冷たい風に震えながらも、僕は学校へと足を運んだ。誰かに見られていることも気づかず、ただ、彼女の笑顔が戻ることを願って。




 だけど現実はあまりにも冷酷だった。




 彼女は、最初こそ「気が乗らずに」僕をいじめていたのかもしれない。




 しかし、時が経つにつれ、彼女の振る舞いは明らかに変わった。




 命令でもなく、誰かの強制でもなく――自分の意志で、僕を傷つけるようになっていたのだ。




 教室の隅で、僕の顔をじっと見つめては冷たく笑い、意地悪な言葉を投げつける彼女。




 休み時間になると、誰かと手を組み、僕の荷物を隠したり、悪口を広めたり。




 その変わり果てた彼女の姿に、僕の心は何度も裂かれた。




 僕は、どこかで理解していた。




 これは、もう彼女の中にある感情の問題だと。




 僕への憎しみか、あるいは自分でも抑えられない何かの歪みか。




 でも、僕はそれを認めたくなかった。




 彼女の本当の姿は違うはずだと、何度も自分に言い聞かせた。




 そんな苦しい日々が、気づけば一年も続いていた。




 何度も心は折れ、何度も立ち止まった。




 でも、僕はもう期待することをやめた。




 彼女が元に戻ってくれると信じることも、やめた。




 裏切られ続けた僕は、ここで一つの決意を固めた。




 もう誰も信じない。




 そして、僕は心に誓った。




 この手で──この世界で、僕にとっての「神」を終わらせるのだと。




 そう、自分の運命を背負い、抗うために。




 僕は今、神に逆らう叛逆者になった。




 孤独の淵で、ただ一人、闇の中に立ち向かうために。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る