第32話 【和香】に乗せて、春を告げる香りとともに祈りを込めたい
エルメンテスニ帰宅した私達は、領民に対し婚約を発表した。
領民は皆喜んでくれたし、ハンナさんは涙を流しながら――。
「良かったねぇ……良かったねぇええ‼」
と、抱きしめて喜んでくれた。
こんなにお祝いされるだなんて初めての経験で、何もかもが新鮮だわ。
何より、私の功績が最も大きかったようで、【
そして、領民をあげての【
「私は
そう言っているのに、皆さん「なんて謙虚な女性なんだ」「素晴らしい人格者だ」と言われて困惑するばかりだったわ。
でも、受け入れてくれたことは何より嬉しかった。
エドワード様との婚約は瞬く間に王都にまで広がり、「〝香りの令嬢〟から、〝香りの辺境伯婦人〟になるらしいぞ」と噂が立った時は――。
「言わせておけばいいじゃないか。事実そうなるのだし」
と、エドワード様は笑顔で噂を喜んでいた。
その間も、彼とは距離をゆっくりと縮めていったし、お互いの速度で愛し合い支え合い、共にいる喜びを分かち合った。
きっと、母が得たかっただろう幸せを、私は謳歌している。
お母様は私にこんな恋愛をして欲しかったのだと思う。
その夢を叶えられることがで来て良かったと思う反面、エドワード様をもっとよく知りたいと思うようになったわ。
お仕事柄、彼は辺境伯だしお忙しい身。
私も彼のお屋敷に一緒に住みつつも、出来るだけ時間をお互いに取り合い情報交換をしている。
無論、部屋は別々だし、現在調香師としての仕事を再開するべく、タウンハウスの建設真っ最中。
新たなタウンハウスが出来たら……また調香師として皆さんのお役に立つの。
そんな希望を胸に毎日を過ごしていたある日、エドワード様からこんな提案をされた。
「え? お祭り……ですか?」
「ああ。街が少しずつ元気を取り戻した今こそ、〝香りの祭り〟をするべきだと思ってね」
「〝香りの祭り〟ですか……。どのようなものでしょう?」
「そうだな。案としては、毒霧の街と言うのを直ぐ払拭できるとは思っていないが、〝新たな香りの街〟を作ってほしいと思っている」
「新たな……香りの街」
「タウンハウスが出来上がる春に合わせて出来たら良いなとは思っているんだ」
季節はもうすぐ春。
タウンハウスももうじき出来上がると言う事で、今建築は急いでして貰っている最中だ。
そんな中での、春から始まる……〝香りの祭り〟
春ならば……【あの香り】が使えるわ。
「そうですね。街の人達が〝自分にとっての香り袋〟を持ち寄り、春を告げるお祭りにしては如何でしょう?」
「春を告げるお祭りか……何とも幻想的だね」
「春には〝春の香〟と言うものがって、【
「春のような安らぎの香りか……」
「ええ。【
「それはいい香りだね。〝平和を愛する香り〟か」
「ええ、〝平和を象徴する香り〟ですわ。春の訪れを告げる時、守りの要である辺境の地から、〝平和を祈る香り〟がしてもいいとおもうの」
「アメリアはやっぱり、優しい女性だ」
言うが早いや、エドワード様は私を抱きしめ、頬に唇を寄せてくる。
まだ慣れない行為だけれど、ドキドキする反面、とても大事にされている気がするわ。
「是非、その案でいこう」
「宜しいので?」
「〝香りの令嬢〟としての、最後のお祭りだよ? 君が香りを作って是非、〝香りの令嬢〟から……〝香りの辺境伯婦人〟になって欲しいな」
「――っ! ど、努力致します!」
「ははは! 是非に!」
どうやら、私の令嬢として〝最後のお仕事〟のようだわ。
これは気合を入れなくてはならないわね。
一応、お屋敷も改造して、私用の〝調香部屋〟は作ってもらっているのだけれど、そこでコツコツと香りを作るのが良さそうだわ。
もっぱら作るのは【
ハンナさんも「ぐっすり眠れるから最高なんだよ!」って言ってたものね。
それに加え、王都から使者を送ってまで、香りを注文してくれる、以前のお客様も復活したわ。……嬉しい限りね。
その期待に応えるためにも、私は〝
まず、【
桜と言っても花や木ではなく、葉っぱのほうだけれど、こちらを乾燥させたりして使うのだけど、数はそれなりに多く用意されていて、これならお祭りに間に合いそうだわ。
あとは、私の〝調香師のスキル〟を使って香りを作っていくだけ。
これまで沢山の調香をしてきた私の腕は、更に上がって安定感が増し、もっと芳醇な香りを作れるようになってきたわ。
「まずはお試しで【
火を着けて香りを確認……ああ、問題なく桜の香りが広がるわ。
【
これなら大量生産が出来るし、街の香炉塔にある香炉に【
「エルメンテスを【
「おや、いい香りがするね……。嗅いだことのない香りだ」
「エドワード様、お仕事はもう宜しいの?」
「ああ、手早く素早く済ませてきたよ。君との時間を作りたいからね」
「ありがとうございます」
「それで、この香りは?」
「この香りは桜の香りで【
「なるほど、上品な香りの正体は【
「いつもは【
「それだと、街全体に広がって良いかも知れないね」
「ええ」
「君の優しさが詰まった香りがする。上品で気高く……そして優しくて」
「そ、それはかいかぶり過ぎです」
「俺にとっての君は、こういう香りだと思っているよ」
婚約が発表されてから、エドワード様の溺愛っぷりが凄いわ!
ついていくのがやっとで、受け入れるのも大変だけれど……甘く優しくて、胸が高鳴るの……。
「君の新しい香りを知れてよかった……。さぁ、ふたりきりなのだし……おいで?」
「しょうがない人……」
「ああ、俺はどうしようもなく、君が好きな……しょうがない人なんだ」
「ふふふ」
彼の膝の上に座り、優しく抱きしめれながら他愛のない会話をする。
この瞬間が、たまらなく好き。
こんなに溺愛してくる人とは思わなかったけれど、お母様……私、幸せですわ。
そっとエドワード様の胸に寄り添い、私は幸せを噛み締めたのだった――。
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