第10話

レイジがトルへのお礼の品を買うために町の出店品物を見て回っていると…

「よお」

出店の屋根に届きそうなくらい高い背のラフな甲冑を着た男がレイジに声をかけた。

「ああ、あんたか、また会ったな」レイジは男を見て、また出店の品物に目線を落とす。

「俺の名前、覚えてる?」男は少し前髪にかかった茶髪を撫であげるように頭をさすった。

「セシオン、だよな?」

「そう!良かった、忘れられたかと思った。」セシオンはにこっと笑う、セシオンは人に好印象を与える爽やかな青年だ。

「この前に会ったのは三ヶ月くらい前だったっけ?王室直属の騎士団にいるんだったか?」

 レイジはアクセサリーやらの品物をきょろきょろ見ながらセシオンと会話する。

「そうそう、隊長になって王様に謁見したけど、なかなか荘厳な顔つきの方だったよ!」

「任務はどうだ?順調か?」

「任務内容は極秘なんだ。」極秘、と言われるとレイジはピクッと耳を動かし、

「なんだよ、別に一介の国民に知れたってどうにもなりはしないだろう。」

アクセサリーから目線を外し、セシオンの方を見る。

「んー?だめだめ」

「いいだろうちょっとくらい。」レイジは両手を腰にかけ少し大げさに首を傾ける。

「うーん…あ、このアクセサリーレイジに似合いそうだ。どう?」

と言ってセシオンは指輪をレイジに見せた。

「話を逸らすな、そんなに極秘なのか?何かあくどいことじゃないのか?」

レイジは質問が止まらない。

「じゃあこの指輪ずっとつけてくれるなら、話してあげてもいいなぁ〜」わざとらしくふんぞりかえって目線だけをチラッとレイジにやる。

「…、私、普段手袋つけてるんだが…」

「でもそれは指あき手袋だし、そんなに厚手でもないだろう?」

「いや、第一これ、デザインが合わせ絵だ、ペアの指輪だぞ、2人でつけないと意味ないんじゃないか?」

指輪を指さしてレイジが言うと

「…………はあ〜ほんと、鈍いねぇ〜」とセシオンが小声で言う

「何か言ったか?」少し睨むようにレイジがセシオンの顔を見る

「いや、その質問癖、俺は好きだよ」

「はあ…」ちょっと呆れたようにレイジが息をつく。

セシオンは少し間を空けて言う。

「この指輪をつけるってことはさ、つまり、将来的には俺のお嫁さんになるってことだよ」


「っ…え?!」セシオンはいつもの笑顔を貼り付けている…

「そ、それは…ど、どういうことだ?!」レイジが思わず後ずさると、まるで逃さんとばかりに長い足で一歩踏み込む。

「俺は自分の発言を取り消さないよ。」

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